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ダンジョン?

答えを保留して屋敷に帰るとサカキ達が砂婆の料理で酒盛りをやっていた。


「セイ、あんたどこで油売ってきたのよ?」


ご機嫌で日本酒を飲んでいるウェンディにそう言われて軽くチョップした。


「なんでチョップすんのよっ」


「うるさいっ」


もうーっとぶーたれるウェンディ。


てか、サカキ達はいつひょうたんから出てたんだ?まさか他にも出入口ないよね?


「セイ、お前も飲めよ」


「いいよお茶で」


「こっちじゃ飲める歳なんだろうがよっ」


「別に飲みたいとか思わないからいいんだよ。それより砂婆の飯をくれ」


「今日は落ち鮎の塩焼きじゃぞい」


「おっ、やったね」


セイは年寄りと妖怪に育てられたので歳の割には落ち着きもあるし、味覚も渋かった。


「ババア、骨酒にしてくれ」


「サカキ、お前さん骨まで食ったじゃろうが」


「セイが今から喰うやつがあるだろ。セイ早く食え」


全くコイツラは・・・


グジグジと身をほぐして骨を抜く。


「あんた今何をやったのよ?」


フォークとスプーンで飯を食うウェンディは鮎に苦戦していた。


「鮎はこうやれば骨が抜けるんだよ。ほらサカキ骨だ」


「お、サンキュ。ババア早くしてくれ」


ウェンディは真似をして骨を抜こうとするが頭がちぎれて上手くいかない。


「キィーーーっ」


お前何匹やるんだ?全部食えよ。

と思ってると鮎がどんどん消えていく。


「マダラ、お前いつひょうたんから出たんだ?」


「アハハハハ、バレた?」


机の下からひょいひょいと鮎を盗んで食べてたのは猫又のマダラだ。


「砂婆が鮎捕ってたからこっそり付いてきたんだぁ」


「別にいいけどさ。里で自分で捕れるだろ?」


「最近みんないなくなるし何してんのかなぁと思って。ここどこ?」


「違う世界だ。こっちの人はみんなお前達が見えるみたいだから気を付けろよ」


「そうなんだ。盗み食い出来ないね」


「そうそう。あと油とか舐めんなよ」


「そんな事しないよ〜。今の油不味いもん」


マダラは人型に化けても猫耳と尻尾はそのままだ。昔々は行灯の油を舐めると言われていたがそれは行灯に魚の油を使っていたかららしい。


「これ獣人族?」


「違うぞ。猫の妖怪だ」


「獣人族とそっくりね」


ウェンディはマダラを見て獣人族かと聞いた。見た目はそっくりのようだ。


「セイ、これだれ?」


「風の貧乏神様だ」


「誰が貧乏神様なのよっ」


「ふーん。ま、いいや。それ食べないら頂戴」


と頭の千切れた鮎をウマウマと食うマダラ。


「セイ、ギルドに行ってたんだろ?何かいい仕事あったのかい?」


クイッと酒を粋に飲んでるタマモがそう聞いて来たのでダンジョンの事を話す。


「おっ、行こうぜ」


サカキはノリノリだ。


「未知のダンジョンって危ないみたいなんだよね」


「ワシらがおれば大丈夫じゃろ」


クラマも乗り気だ。


「私はパスよ。穴蔵に入るんでしょう?」


タマモは嫌みたいだな。


「ウェンディ、お前も留守番してるか?」


「行くわよっ。宝石があるかもしんないんでしょっ」


「まだあるかどうかわからんぞ」


「あるに決まってるじゃなーい」


ノーテンキだなこいつ。


「あれ?ぬーちゃんは?」


「先にたらふく食って寝ておるぞ」


ぬーちゃんも鮎好きだからな。


多分ぬーちゃんも付いてくるだろうし、タマモが抜けるだけか。


「セイ、あたしゃちょいと街を調べておくさね」


「なんか気になることあんの?」


「なに、観光がてらだよ。式を5匹くらい貸しておくれでないかい」


式神を使うのか。なんか調べるつもりなんだな。


「人型の方がいいか?」


「いや、そのままにしておいておくれ」


「じゃ、明日出る時にだすよ」


「はいよ」



メシを食い終わった後、サカキとクラマが風呂で飲むぞと言うので露天風呂はパスした。一緒に入ると無理矢理飲まされそうだからな。


「ウェンディ、お前も内風呂に入るだろ?先に入れよ」


「覗かないでよね」


「誰が覗くかっ。自意識過剰かお前は」


「誰が自意識過剰なのよっ」


「お前だお前。いいからさっさと入れ」



ウェンディを先に風呂にいかせて砂婆に入れて貰ったお茶を飲む。


「砂婆、飯旨かったよ」


「お前はいくつになっても可愛いのぅ」


曾祖父ちゃんも曾祖母ちゃんも術を教えるのに厳しかったが砂婆は昔から俺を甘やかしてくれた。それは今でも続いている。


「砂婆、宝石とか欲しい?」


「あんなもん腹の足しにもならん。どうせなら食えるもんがええの」


「じゃ、今度肉を手に入れてくるよ。なんの肉かよく知らないけどこっちの肉は結構旨いんだよね」


「そうかい、そうかい。ならそれを使ってなんか作ってやるでの」


そんな話をしていると


「キャァァァァ」

 

ウェンディの叫び声が聞こえてきた。全く常に騒々しいなあいつは。


「どうした?」


ドアノブカバー外から声をかけるとバンっと風呂場のドアが開いてウェンディがバスタオル1枚で出て来やがった。


「魔物がっ、魔物が風呂場にいるっ。風でも倒れないのっ」


言われて風呂場を見ると垢舐めが伸びていた。


風呂場も風でめちゃくちゃになってんじゃねーかよ。ここ、石造りで良かったわ。


「おい、垢舐め。大丈夫か?」


伸びている垢舐めに妖力を注いでやる。


「ヌ、ヌシ様。何者かにやられました・・・」


「ありゃ貧乏神だ。災難だったな。次から昼間とか誰もいない時に綺麗にしてくれるか?」


「わ、わかりました」


ひゅっとひょうたんに戻った垢舐め。いつの間に出てきてたんだろ?


「な、何よあいつ?知り合い?」


「風呂場を綺麗にしてくれる妖怪だよ。お前、風呂場を片付けてから出てこいよ」


「わ、わかったわよ」


「あと、バスタオル巻いてるとはいえ裸で出てくんな」


「えっ?あっ、キャァァァァっ。みっ見ないでよっ」


「誰が見るか。それに背中見られたぐらいでギャアギャアわめくな」


バッチィィン


「こっちは胸よっ」


「セイよ、今のはお前が悪いぞい」


砂婆にそう言われたセイのほっぺたにはまだ初秋なのに綺麗に紅葉が浮かび上がっていた。



風呂からプリプリ怒りながら出てきたウェンディはセイをキッと睨んで部屋に寝に行った。



翌日、式神を出してタマモに託すとどこかに消えて行った。


セイはギルドでギルマスと話す。


「昨日の話は調査済のダンジョンに行ってみてから決めるよ。一度見ておかないと想像もつかないからね」


「そうか、ならどっちにする?」


調査済でギルドの管理下にあるダンジョンは2つ。一つは軽めで10階層からなるもの。そこは5階にギルドの出張所があり、5階を拠点に活躍している冒険者達が多いようだ。もう一つは何階まであるか不明。現在17階までは調査済だ。5階と10階に出張所があり、10階に行くには最低Cランクは必要。ほぼBランクとAランク冒険者が占める。


「お宝はどんなのが出るの?」


「軽めの方はほとんど取り尽くされてでねぇな。もう一つは15階より上が狙い目だ」


「お宝が出ないダンジョンになんで行くのさ?」


「軽めの方はコカトリス、オーク、ミノタウロスが居てな、肉が取れるんだ」


「コカトリス?オーク?ミノタウロス?」


「動物で言えば鷄、豚、牛だ。コカトリスは1種類、オークは3種類、ミノタウロスは2種類だな。他の魔物も出るが目的は肉だ」


「旨いの?」


「お前ここで食ってただろ。あれがオークだ」


豚肉みたいだと思ってたあれか。


「種類は見分はつく?」


「普通のオークは茶色、上位種はピンク、最上位種は黒だ。ミノタウロスは角有りが上位種でな、強い方が旨い。そこに行くならブラックオークを多めに狩って来てくれ」


高ランク冒険者はお宝の出る方に行くらしく、軽めの方には行かないので上位種の肉は手に入りにくいらしい。


「わかった。手始めに軽い方に行ってみるよ」


「なら許可証をここで出してやるから入口でみせろ。出張所で買い取りしてもいいがこっちまで持ってきた方が手数料安いからな」




「なんでぃ、お宝の方へ行かねぇのか?」


「まずは様子見だ。それに砂婆に食えるもんが欲しいと言われたからな。旨い肉を海岸でバーベキューとかいいとか思わないか?」


「お、焼肉か。よしっ、肉を大量に狩るか」


ぬーちゃんに乗ってダンジョンへ移動。歩くとそこそこ遠いので街からダンジョン行きの馬車も出ているらしい。


ダンジョン街道と呼ばれる道に沿って空を駆けていくとあっという間に到着だ。


空からぬーちゃんが降り立つと冒険者達から攻撃されかけるセイ。


「何すんのよっ」


ゴオゥゥゥ


「フンギャァぁっ」


攻撃を仕掛けた冒険者達をウェンディが吹き飛ばした。


「お前、そんな事をするから恨まれんだぞ」


「だってあっちが先に攻撃してきたんじゃないっ」


「そりゃそうだけどさ」


冒険者達を吹き飛ばした俺達を皆が遠巻きに見ている中、ダンジョン入口で許可証を見せる。


「パーティ名、ウェンディーズだな。中へ入れ」


大きな声でパーティ名を言われたので冒険者達を暴風で吹き飛ばした野蛮パーティ名として有名になっていくセイであった。




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