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心配して泣いた

落っこちたサカキとクラマが下で喧嘩しているのがここから見ていても分かる。何やってんだあいつら?ドラゴンが上でタメ作ってんぞ。


ゴォォォぉッとドラゴンブレスをお見舞いされ、それを避けたサカキとクラマが喧嘩を一時中断したあと、また合体してブラックドラゴンと背後の取り合いを始めた。


ブレスが掛かった地面が赤く溶けてるからヘスティアみたいな光熱のブレスなんだな。イフリートもあれぐらい出来るのかな?


あっちで戦っているぬーちゃんとグリンディルは息ピッタリだ。ここに来るまでずっとぬーちゃんに乗ってただけあるな。


魔法使いの杖を振りまわしてファイアドラゴンに水の機関銃を撃ち込むグリンディル。きっとキャーハッハッハと笑いながらやっているに違いない。


水の機関銃が当たるとファイアドラゴンから爆発にも似た蒸気が上がり、数テンポ遅れてドンっドンっドンっと花火のような音が聞こえてくる。


そしてクラマ達も今度はサカキ投下に成功した。


ドラゴンの後ろ乗ったサカキはドラゴンの延髄と思われる頭の後ろを殴っているようだ。それを嫌がる素振りを見せるドラゴンは身をよじったりして暴れている。


「あっ」


サカキは振り落とされてまた落ちた。クラマがやれやれと言っているのが聞こえて来るようだ。落下中のサカキを噛みにいったブラックドラゴンをクラマが羽根うちわでサポート。ブラックドラゴンが風で体制を崩して一緒に落ちた。


サカキは立ち上がろうとしたドラゴンの足を回し蹴りしてこかせ、タメを作っている。


「勝負あったね」


「そうさね」


ボッとサカキの発勁がドラゴンに炸裂してドラゴンの足が吹き飛んだ。


ドガンッ


遅れてやってくる衝撃音、ドラゴンは暴れたくってタメもへったくれもなくブレスを吐きまくる。それが止まった時にもう一発腹にサカキの発勁をくらいブラックドラゴンは絶命した。


そしてその姿を巨大な皮に変える。

残念、外れだ。目的はブラックドラゴンの血なのだ。


一応それを持ってくるクラマ達。


「外れだね。血が出るまで頑張って」


「妖力をくれ。ドラゴンはかなり硬ぇぞ」


燃費悪いなおい。


クラマはまだいいと言ったのでサカキにだけ注入するとまた飛んで行った。


セイはペンの九十九神を呼んでドラゴン達をスケッチさせていく。


グリンディル達はヘスティアのサポートもあり、もうすぐ倒せそうだ。ファイアドラゴンはスタミナがないのかもう動きが鈍い。


「ウェンディは寝ている時はヨシヨシされているのを嬉しそうにしてるんだねぇ」


タマモにそう言われてハッとするセイ。膝に頭を乗せて寝ているウェンディを無意識にヨシヨシしていた。ウェンディの髪の手触りが良くてずっと撫でてたのに初めて自分でも気付いた。


「ぬーちゃんを撫でてるつもりだったよ」


恥ずかしくなってウェンディを避けようと思ったら


「別にいいさね、そのまま撫でてておやり。セイに撫でられてて安心してんだろ。前に比べると大人しくなったしなんか疲れているみたいだしねぇ」


そう言われてみると初めて会った時はもっとガンガンと押してくる元気さがあったな。それが今は寝る時間も長いし幼児化が進んだ気がする。俺達に慣れてワガママが酷くなったのか?とか思ってたけど違うのか?


「タマモ、ヘスティアに妖力を注いだら元気になったんだよね。ウェンディも外界に降りてるからエネルギーが足りてないのかな?」


「どうだろうねぇ。試しに妖力を注いでやりなよ」


そう言われて注いでみる。注入は出来ているみたいだけど、サカキやヘスティアみたいにバンバン入っていく感じがない。細い注射器で注入しているような感じだ。


「入ってはいくけど本当に少量ずつしか無理だね」


「人間と同じような存在になっているからかもしれないね」


「タマモ達は食べても力が回復する?」


「少しはするさ。酒も肉もエネルギーだからね。でもセイの妖力が濃い里にとは比べ物にならないよ。里の妖怪達も満たされているから大人しくしているだろ?」


「まぁね」


「人を食ったり動物を食ったりしていた奴らは食べても食べても満たされないから食い続けた。そういうもんさ。妖力で満たされている今のあたしらにとっちゃ食い物は嗜好品さね」


それがウェンディにも当てはまるとすると普通に食ってるだけでは追いついてない可能性がある。だから寝る時間が長くなったり、死ぬほど食ったりしているのか?



「おや、あたし達だけに戦わせておいていい身分ね」


ウェンディに膝枕をしているセイに向かってそう言ったグリンディル。


ぬーちゃんは赤いドラゴンの皮を咥えて来た。


「討伐おめでとう」


「これで帰ったらあたしもドラゴンスレイヤーとしてマモンに自慢してやれるわ」


「ドラゴンスレイヤー?」


「そう。強い魔物を討伐したらそういう称号をもらえるのよ」


少し腹の引っ込んだグリンディルは口調が変わっている。アレだけぶっ放してもそれだとやっぱり・・・


ぎぬろっ


ごめんなさい。それは魔力過多であって肉ではありません。


グリンディルは防具の紐を調整し直してまた行くらしい。


ぬーちゃんに妖力を注いだらペアになって飛んでった。


「ウェンディだけズルいぞっ。何やってんだよお前らっ」


膝枕で幸せそうに寝るウェンディを見てヘスティアがズルいと言う。何がずるいのがさっぱりわからない。


「ほら、グリンディルがまたファイアドラゴンを狩りに行ったぞ。サポートしてやってくれ」


「チェッ、なんだよそれ」


「お前の服の為に皆で頑張ってるんだから早くサポートに行ってやれ。ブラックの血が出るまでやらなきゃならないんだから」


「タマモも来いよ。俺もグリンディルみたいに乗ってたい」


「しょうが無い娘だね。ほら行くよっ」


ペアで戦うのが羨ましいのか、ヘスティアはタマモに乗せろと言ってサポートしに向かったのであった。



それからも肉、皮とかを持ち帰ってくるサカキ達とぬーちゃん。なかなか血が出ない。


これ、邪魔だからしまっておくか。


と、重そうなブラックドラゴンの皮をぐっと持ち上げる。


グキッ


ドラゴンの皮は見た目はあんなに重そうなのにめちゃくちゃ軽くて腰を痛めたセイ。


「痛たたた」


これ、やっちまったかも。


重いものを持ってぎっくり腰になるのはわかるけど、軽いものを持ってなるとか情けな過ぎる。


ウェンディが寝ている横にうつ伏せになって痛たたたたするセイ。


パチっ


その時にウェンディが目を開けてセイと目があった。


「なっ、なに人が寝てる時にこそっとチューしようとしてんのよっ」


ドスッ


キュウ〜


悶絶しそうなぐらい痛い腰にウェンディの飛び上がってからのニーを食らったセイは気絶した。


「なっ、なによっ。大げさに痛がっちゃって。自業自得でしょっ。女神にこそっとチューしようとするなんてっ」


気絶して反応がないセイ。


「またなんか騙そうとしてるんでしょっ」


シーン


「さっ、さっと起き上がりなさいよねっ。お腹空いたんだからっ」


シーン


「お腹空いたって言ってんのっ」


シーン


「もうっ、さっさと寝たふりやめなさいよっ」


何をしても怒鳴っても反応しないセイ。


「ちょっと、ねぇっ、ちょっとってばっ」


シーン


「そ、そんなに痛かったの?」


シーン


「そりゃあ、ちょっとやり過ぎたかなとかは思うけど・・・。ごめん・・なさい」


シーン


「ねぇ、変事してよっ。ねぇってば、起きてよっ。ごめんってばっ。謝るから起きてっ」


何をしても言っても反応しないセイ。


ボロボロと泣き出すウェンディ。


「起きてよぉぉ」


それで起きないセイにウェンディは大声で泣いて抱きついた。


「みっ、耳元で泣く泣くな。う うるさい」


顔にウェンディから流れた雫が落ちて目が覚めたセイ。


「なっ、なによ。起きてるならさっさと返事しなさいよっ」


「痛たたたたた。揺らすな。痛くてたまらん」


「ど、どうしたのよっ?」


「腰を痛めた所にお前が飛んで来たんだろうが」


「えっ?」


「悪いけど治癒してくれ。このままだと動けん」


「怪我してんの?」


「いいから早く」


ウェンディはセイが本当に痛いのだと理解して耳に近付いてふぅーっとした。


「うっひゃゃゃゃっ。やめろぉっ!」


「なっ、なによっ。セイがふぅーしてくれって言ったんじゃないっ」


「治癒してくれと言ったんだっ」


「同じじゃない」


「あーっ、もうっ」


でも腰の痛みが嘘のように無くなり動けるようになったセイ。


「まぁ、助かったよ。それより腹減ったぐらいで泣くな」


「誰が腹減って泣くのよっ」


「お前泣いてただろうがっ。いまから何か作ってやるから」


セイはウェンディが本気で心配して泣いた事を知らなかった。


まったく腹減ったぐらいで泣くなよなとかブツブツ言いながらみんなも腹減らして帰ってくるだろうと豚汁の用意を始めた。


温かいものが飲みたいとウェンディが言っていたからとは言わないけど。


下級妖怪を呼び出して材料を持ってこさせて雑な豚汁を作っていくセイ。


なんか外が暗くなったなとか思いながらグツグツしていると、


「セっ、セイ・・・」


「そんなにすぐに出来るか。もうちょっと待て」


フシューーーーっと強めの風がくる。


「待てないからってそんな真似をすんな・・・よ?」


あれ、ウェンディが横にいる。いま後ろから風が来たよな?


ガタガタガタガタ


震えながら青い顔をしてセイにしがみつくウェンディ。


「なに震えてんだお前?」


「う、うし、うし、後ろ」


「牛にしよ?ダメだよ豚汁なんだから」


なおぎゅうっとしがみついてくるウェンディ。


「そんなことされたら作れないだろうが」


ウェンディは必死に後ろを指差した。


ん?


「ンギャァーーーーーッオ」


「うわーーーっ」


セイが目にしたものはドラゴンがトンネル内部を覗いている顔だった。



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