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これは無理だ

「セイ様、ドラゴンスポットは間もなくでございます」


「明日には着きそう?」


「はい」


「ようやくだねぇ」


アネモスを出発してから20日で近くでここまでこれた。アネモスーボッケーノよりスピードも出てたしな。


「イフリートもドラゴン狩りに参加する?」


「ドラゴン相手ですと炎は少々相性がよくないのです」


「あ、そうか。炎の耐性が高いんだったね」


「ノーマルなドラゴンだと大丈夫なのですが。それとヘスティア様の前で何かやらかしたらと思うと・・・」


そうブルッと震えるイフリート。


「わかったわかった。俺達でやるよ。でも本当に俺達で狩れる相手なんだろうな?」


「はい。ドラゴンの最大の武器はブレスです」


「ブレスって息を吐く攻撃であってる?」


「はい。その威力は非常に高いのですが攻撃の前にタメが入りますからセイ様に達であれば回避は可能です。それにブレス攻撃の後は一瞬動きが止まりますので、ブレス前後が攻撃のチャンスとなります」


「わかった。情報ありがとうね」


「ハイ。ご武運をお祈りしております」


ヘスティアが寝た後に毎日の様にイフリートを呼び出すセイ。進路方向の確認と飯を食わす為だ。イフリートも別に食べなくて良いそうだが、食事は嗜好品みたいなものなのだろう。いつも喜んでんで食べてるからな。


さて、明日はドラゴンと対峙か。早めに寝るとしよう。


サカキ達にもそう伝えて早めに休む様に促した。


おいっ


いつもはグリンディルと二人ウェンディとヘスティアを同じテントで寝かせている。セイはぬーちゃんと。サカキとクラマはひょうたんだ。


なぜお前(ウェンディ)がこちらで寝ているのだ?


向こうへ連れて行こうにもグリンディルも早めに寝に行ったからそこへ入るのもな・・・。


マットレスは2つあるけど一つは向こうだ。これに慣れると地面に寝るのは嫌だな。


仕方がないので同じマットレスに寝るしかない。ウェンディはぬーちゃんにくっついているから反対側で寝るか。


なんかウェンディはフニャフニャ言ってるけど気にせずに寝ることに。


そして毛布をかけ直してやり寝転んだセイはふとイフリートの言葉が脳裏を横切った。


『ノーマルなドラゴンなら大丈夫です』


確かノーマルなドラゴンって言ったよな?もしかしてアブノーマルなドラゴンっているのか?


自分で想像してアブノーマルなドラゴンってなんだと変に思うけど、ノーマルの対義語はアブノーマルしか思い浮かばない。


ワイバーンの防具に使ったのはブラックドラゴンの血と言ってた。ドラゴン=ブラックドラゴンと思ってたけど、もしかしたら違うのかもしれない。


気になって魔物図鑑を調べてもドラゴンのイラストは乗っているけど情報は乗っていない。


ヘスティアはブラックドラゴンの血の事を知っていたから明日出発する前に聞いてみるか。オークと同じ考えならドラゴンにも種類がいてブラックが一番強いのかもしれん。ピンクドラゴンとかいるならちょっと見てみたいけど。


イラストでは恐竜に翼が生えたような魔物だ。デカさも相当なものだろう。


考えても無駄だなと目を閉じるとゴロンゴロンとウェンディが転がって来て足を乗せて来やがった。何回ぬーちゃんの方へゴロンとさせても戻ってくる。寝ながらにして起き上がりこぼしのようだ。起きてんのか?と頭をヨシヨシしても嫌がらないので本当に寝ているのだろう。


仕方がないのでぬーちゃんの方へ移動するとゴロンと転がって足を乗せてくる。


もうこのままでいいわ。


セイは諦めて足を乗せられたまま寝ることにした。



うーん、うーん


夜明けよりずっと早くに目が覚めたセイ。また重いのだ。


なぜお前は俺の上で寝る?腹の上で上向いて寝てるとか幽体離脱ギャグでもしたいのか?


ペッとウェンディを横に投げて起きるセイ。


「はぁー、寒いとはいえ朝方にキンキン冷えるのも随分とマシになったものだ」


季節は3月下旬。あ、そういえばひな祭りとかしてやらなかったな。ちょうど出発時期と重なってたから忘れてたわ。この世界の人はそんなの知らないから忘れててもどうでもいいけど。自分もひな祭りなんてテレビでしか見たことがないからな。やり方もわからん。


テントから出て屈伸していたらグリンディルも起きてきた。


「ウェンディはそっちで寝てたのかい?」


「なんか先に寝てたんだよ。避けても避けてもゴロンゴロン転がって足を乗せてくるし、気がついたら俺の上で寝てるし。本当に迷惑なやつだよ」


「あたしらと寝てる時はおとなしく寝ているけどねぇ」


「ヘスティアも一緒に寝てたらいつの間にか俺の上に乗ってるんだよ。グリンディルが一緒に来てくれてたから毎晩熟睡出来てたのに」


「二人共くっついてたいんじゃないかい?」


「まさか。マット代わりにされてるだけだよ」


マット代わりなら自分の方が向いてるんじゃないかと思ったグリンディルは少し自己嫌悪に陥る。


「さ、今日は暴れてボン・キュッ・ボンになるよっ」


ここに来るまでに結構魔法をぶっ放してたグリンディル。オーガ島の時はあんなにすぐに痩せたのに今回は全く変わってない。アレだけ飲んで食ってしてるからなぁ。


それ、肉が詰まって・・・


ぎぬろっ


うん、ギルマスはボン・キュッ・ボンでなくても良いと出発前に行ってたからな。気にしないでおこう。


朝飯を食いながら、ドラゴンに付いて聞いてみる。


「あぁ、ドラゴンの上位種がブラックドラゴンだ。他にもファイアドラゴンとかもいるぜ。アイスドラゴンはここにはいねぇだろうけどよ」


「ドラゴンってサラマンダーとかより強いのか?」


「まぁ、そうかもな」


「ならなんで眷属にしないんだ?」


「ドラゴンは言うことを聞かねぇワガママな奴らなんだよ。眷属にしたサラマンダーはドラゴンほど強くねぇ中からドラゴン並み強くなったやつだ。ドラゴンは生まれた時から皆強ぇから世の中を舐めてんだよ。俺様最強ってな。だから死ぬまで自分が一番強いと勘違いしてやがる。言うことを聞かそうとしても屈服する前に死ぬんだよ」


なるほどなぁ。きっとヘスティアはドラゴンを眷属にしようとしたことがあるんだろうな。



さて、腹ごなしも済んだしブラックドラゴンの血を貰いにいきますかね。


そして段々と高くなる山を越えたらドラゴンスポットだ。そのスポットはこの高い山に囲まれているところにあるらしい。イフリートによるとこの山を越えられるドラゴンがいないため、ここにはドラゴンが溜まっているらしい。しかしドラゴンが越えられないような山を俺達が越えられるのか?


とりあえずぬーちゃんに上へ上へと上がってもらう。


「ストーップ。無理、ぬーちゃん降りて」


めちゃくちゃ寒いし酸素が薄すぎて頭が痛い。まだ頂上も見えないしこりゃ無理だ。


「なんだよ行かねーのかよ。寒いなら熱出してやんぜ」


「それだけじゃないよ。とりあえずぬーちゃんもっと下に降りて、あそこの平らなところに」


セイとウェンディ、グリンディルもカタカタと震えていた。


平らなところに降りたセイ達はテントを出してヘスティアストーブで暖まる事に。


「これ、無理だよ」


「えーっ。せっかくここまで来たのに俺様の服はどうしてくれんだよぉ」


「寒さはヘスティアがなんとかしてくれるとしても、あれ以上登ったら息が出来なくなるんだよっ」


「マジかよ?」


「おう。マジだ。ウェンディはわからんが、俺とグリンディルは確実に死ぬ。それに死ぬ前に幻覚を見たりしておかしくなるぞ」


「せっかくここまで来たのになんとかならねぇのかよ?」


「イフリートが人類未踏の地と言った訳がわかったよ。遠いだけじゃなくて人間が行ける場所じゃないからだ。帰ろう。無理無理」


「イフリートっ」


めちゃくちゃ怒ってるヘスティアはイフリートを呼んだ。


空気を察知して寒くないはずなのにカタカタと震えながら現れたイフリート。


「どうしてくれんだ?セイ達はこの山を超えられねぇみたいじゃねーかよ?」


「いや、セイ様達なら可能かと」


ドゴンっ


ヘスティアの回し蹴りがイフリートの腹に決まる。浮きながら蹴ってもあんな威力が出るんだ。


「ヘスティア、雪崩が起きるからやめてくれ」


ここは雪が積もってる。大きな衝撃はヤバイのだ。


「セイ様・・・」


いや、お前を庇った訳ではない。本当に雪崩がやばいのだ。そんなすがるような目で俺を見るな。


「これ、どう落とし前付けてくれんだよ?」


ヘスティアは笑顔だ。ヤバいなこれ。もう止めても止まらんかもしれん。


「ここはヘスティアの力に頼るしかないかなぁ」


「はぁっ?俺様でも息を出来るようにはしてやれねぇからなっ」


ダメだ怒りの方向がこっちに向きそうだ。


「ヘスティアは怒った顔も美人だけど、いつもみたいな笑顔の方が俺は好きだな」


セイは歯が浮きそうなのを必死で我慢する。


「な、なんだよっ。こんな時にそんな事言い出すなよっ」


「上に登るのは無理だけど、ヘスティアなら山を溶かしてトンネルとか作れるんじゃないかな?ほら、ダンジョンの部屋を作ったみたいに」


「そ、そんなのやってみねぇとわかんねぇよ」


「ヘスティアの凄い力ならやれると思うんだけどなぁ」


「ま、まぁ、やってみるけどよぉ」


「よっ、さすが火の神様!」


「や、やめろよぉ」


チョロい・・・


もうヘスティアは照れて熱を発しだしたから大丈夫そうだ。


「イフリートもヘスティアを手伝ってやってくれよな」 


「は、はいっ。喜んでっ」


居酒屋みたいな返事をしたイフリートはヘスティアに連れられてトンネル工事にむかったのであった。もう俺たちに出来ることはないので飯を作ることにした。



「ウェンディ、お前はなに引きつった笑顔をしてんだ?腹でも痛いのか?」


「フンッ」


それからもウェンディは変な笑顔を何回もセイに見せに来たのであった。





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