白蛇も図鑑に加わる
「ウェンディ達を起こしておかなくていいのか?」
「あいつ、ぬーちゃんの尻尾に何回か噛まれてるからヘビにトラウマ持ってんだよ。パニックになって暴風を吹かせたら巻き添え食らうだろ?もう洗濯物太夫になるの嫌なんだよ」
「なんだそりゃ?」
「グリンディルが見てくれているから大丈夫ってことだ」
洗濯物太夫の説明をするのが面倒臭いセイはそう答えた。
クラマとぬーちゃんが上から警戒とサポート。メインはサカキ。俺は後ろにいるウェンディ達の所にヘビをやらない役目だ。
「行くぞ」
セイが合図して狐火であたりを一斉に照らす。
ゲッ、デカいじゃん。
地面を這っていた白蛇は狐火で照らすと鎌首を持ち上げた。図鑑にあった30m級よりデカいかもしれん。
「サカキ、毒吐くかもしれんから注意しろよ」
「おうっ」
サカキが悪鬼にならないところを見るとそこまでの相手ではないのかな?ぬーちゃんもぬーちゃんのままだし。
白蛇がカッと大きく口をあけた。毒に警戒するサカキとセイは口と鼻を押さえた。
ビシャっ
げっ、毒霧じゃなく液体で飛ばして来るのかよ。
慌ててそれを横っ飛びで避けると、地面がシュウシュウと溶けていく。毒というより酸かもしれない。
そこからは矢継ぎ早に酸の液体を飛ばしてくる。
「セイっ、小さいのもおるから気をつけるんじゃっ」
足元にも無数のヘビがいる。
クラマは白蛇の後ろにもいるヘビを吹き飛ばし、ぬーちゃんは前足で押さえて噛みちぎっていく。噛まれてもお構いなしだ。
「サカキ、デカいのよろしくね」
「おい、そいつで切ったら一発だろうが」
「じゃあ小さいやつを数やるか?」
「それも面倒臭ぇな」
「だろ?じゃ、そっちを宜しく」
セイはメラウスの剣で草を刈るように普通サイズのヘビを切っていく。切られたヘビはビタンビタンしてるからどれが生きててどれが死んでるのかわからない。
時折セイの足を蛇が噛むがワイバーン装備は蛇の牙を通さない。小さいのは楽勝だな。
クラマは器用に風で蛇を巻き上げ、空中でスパスパ切っていく。山を守るクラマにとってヘビ退治はお手の物みたいだ。
残るはサカキだ。酸を吐く白蛇にヒットアンドウェイでパンチを打ち込んでいく。白蛇は耐久性が高いのか身体に柔軟性があるからなのかパンチに耐えている。小さいのは討伐完了。死体がそのまま残るから魔物ではないようだ。
そして形勢不利と悟った白蛇は逃げようと方向転換を試みる。
「逃がすか馬鹿野郎」
サカキは巨大な白蛇の尻尾を爪を伸ばした指でガッチリ掴み、
「うらぁっ」
どっしんーん
「うらぁぁっ」
どっしーん
サカキは白蛇を右へ左へと振り回しては地面に叩き付けていく。なんちゅう戦い方をするのだ?
叩きつけられても初めは身体をひねろうと抵抗していた白蛇もだんだんと伸びてされるがままになり、そしてその姿を大きな蛇皮に変えた。肉じゃなくて残念。
「なかなか耐久性のあるやつだったな」
「お疲れ。他の蛇は死体のままだから魔物じゃなさそうだね」
「まだ動いていやがんな。これだからヘビは面倒臭え」
白蛇の皮が何に使えるかわからないけど取っておく。
「セイ、お主は水筒を持っておったな」
「喉乾いたの?」
「いや、こいつをしばらく漬けておいて腹の中を空っぽにさせるんじゃ。その後に酒に漬けるんじゃよ」
「じゃよ。じゃねーよ。そんな事にこの水筒は使わさんっ」
クラマはヘビを一匹生け捕りにしていた。ハブ酒にみたいな物を作るつもりのようだ。
クラマは洗えば済む話じゃろとブツブツ言いながら酒の大きめの徳利を持ってきてそこに蛇を突っ込んだ。初めからそうしてくれ。
「いやー、あんたらの連携は見事だねぇ」
「皆俺が小さい頃から一緒にいたし、稽古を付けてもらってたからね。何も言わなくてもお互いがどう動くとかはだいたいわかるよ」
「それでも見事だよ」
「グリンディル、さっきのヘビはどれか分かる?」
と魔物図鑑のヘビを見ていく。
「こいつかねぇ。私もあんなデカくて白いのは初めて見たよ」
ゲットした皮をよく見ると薄っすらと模様がある。その模様はビッグポイズンスネークとよく似ている。
「これの変異種というかアルビノかもね」
「アルビノってなんだい?」
「色素っていう色の元になるものがあるんだけど、生まれつきそれを持たない物が稀にいるんだよ。魔物にもそれが当てはまるかはわかんないけど」
「へぇ、物知りだねあんた」
「アルビノはどの生き物にもいるからね。美しくて珍しいから神秘的でもあるよ」
これがアルビノでなく固有種かもしれないから記録しておこう。セイが魔物図鑑にイラストと共に描いていると落書きかい?と聞かれてしまった。
「クラマ、筆の九十九神いたよね?呼んで来てくれない」
と筆の妖怪を連れて来てもらって新しい紙に蛇を描いてもらう。いい絵だ。いい絵なんだけど鳥獣戯画風なんだよな。図鑑ではなく巻物とかにしたい感じだ。
「ありがとうね」
と妖力を注いで帰って貰った。
「イラストを描ける九十九神いる?」
どんなのじゃ?とクラマに聞かれてマギョロの絵を見せる。
「筆ではなくペンの方が良いみたいじゃな」
あ、ペンの九十九神もいるんだ。知らなかった。
妖怪の里にはセイが直接誘ったもの以外にクラマ達が誘って住まわせているものもいる。なので知らない妖怪も多いのだ。
そしてペンの九十九神は素晴らしかった。写真?と思うような絵を描くのだ。これほど図鑑向けの九十九神がいるだろうか?
白蛇の皮を見せて絵を描いてもらう。
「お前、これから毎日のように呼ぶから手伝って」
そういうと話せないけどとても喜んでくれているようだ。サービスに妖力を多めに流しておいた。
「セイよ、あまり依怙贔屓するでないぞ」
「なんで?」
「他の奴らがヤキモチを焼くからじゃ。褒美として直接妖力をやるのは構わんが程々にしておくのじゃ」
そういうものなのか。
「そこにはどれくらい仲間が住んでるんだい?」
「俺も知らない奴とか住んでるからね。数はわかんないや」
「へぇ。すごいんだねぇそれ」
「まぁ、違う国への出入り口だと思って」
そして、翌朝起きた一行。ウェンディもヘスティアも早い時間から寝たので珍しくちゃんと起きてきたので朝飯を食う。
「昨日、騒がしかったよな」
「ヘスティアは起きてきたのか?」
「なんとなくな。なんか襲って来たのか?」
「蛇がね」
「へっ、蛇?」
蛇と聞いただけでビクッとするウェンディ。
「全部倒したから大丈夫だよ」
「デカかったのか?」
「あぁ。全長何十メートルあったんだろうね?」
自分より2〜3倍くらいの大きさまではだいたいの大きさはわかるけど、それより大きくなると本当に適当にしかわからない。それに魔物は死ぬと戦利品に姿を変えて計測もできないからな。図鑑の30mとかの記載もあてずっぽうだろう。
「そんなデカいのならちょっと見たかったぜ」
「ウェンディが起きたら蛇を見たらパニックを起こすだろ?また竜巻みたいなのに巻き込まれんぞ」
「そんな事をしないわよっ」
テントとかを片付けながらウェンディとセイはいいやするねとかしないわよっとか言い争いを続けている。
「さ、行こうか」
といった時に無数の蛇の死体をみたウェンディ。
「いやぁーーーーっ」
ゴォゥゥゥゥゥッ
「やるじゃねーかよっぉぉぉぉ・・・」
セイは蛇の死体と共にふっ飛ばされていったのであった。
「この未熟者があっ」
クラマはウェンディにそう怒鳴り、ぬーちゃんが全速力でセイを追いかけていったのであった。
今はぬーちゃんに乗り、セイの後ろでグスグス泣いているウェンディ。セイに死ぬほどチョップされたのだ。
翌日からは降りたところで魔物を見付けては図鑑と照らし合わせて書き込みを続けでいく日々が続く。ワイバーンではないが大きな鳥の魔物や図鑑に載っていない魔物も出てきて図鑑が充実していくのであった。




