第1話 Steampunk and Broaches of Southern Cross②
それから、ポラリスはアクルックスと何度か会ってみた。彼の不思議な人間性に興味が湧いたのである。
ポラリスは、前から気になっている事を聞く事にした。
「なぁ、アクルックス。」
「?」
「お前は自分の事を“俺”と言ったり、“私”と言ったりしているが、男と女どっちなんだ?」
アクルックスは、その容姿や言葉使いが少女のようでも、少年のようでもある。服装も、どこか剣士の青年のようであり、しかしながら男性の体躯と言うより、華奢な女性のボディラインと似ている。ポラリスは、アクルックスがどちらなのか気になった。
また、蒸気機関技術の普及で様々な事が出来るようになった現在、自分の表現として、性別に対し複雑な感情や思いを抱く人も多い。ポラリスは、アクルックスもそう言った1人なのではないかと、少し考えた。
アクルックスは答える。
「難しい所だな。性別はご想像にお任せするとしよう!」
「なんだよそれ。」
その時
「おい、ノロノロやってんじゃねえぞこのクソ野郎が!!」
大きな怒号が聞こえた。
見ると、近くのオープンレストランで、店員の女性が恰幅の良い男性に謝っている。
「俺の食べモンに汚ぇ息をかけるんじゃねえよ。早く別の奴出して良い奴持ってこいってんだろ。」
客の男性は、人工人間の女性が飲食を持ってきたという事が、癪に触ったようである。
「申し訳ありませんでした。」
「…ったくよ。こんなんだから人工人間は嫌なんだよ。うぉ気持ち悪、クソ汚ぇし、トレぇしうぜってぇし。死ね。」
なんだか、空気が重く悪くなったのを感じ、ポラリスは言う
「…次なんだっけ。えっと、行くか。」
「…ああ。行くか。」
そう言って歩くアクルックス。彼は無言だったが、どこかショックを受けているように見えた。
ぽつりと、アクルックスは喋りだす。
「……君は、人工人間について、どう思っているんだい?」
「?」
「想像してくれないかな。もし、君の隣にいる奴が、嫌で、気持ち悪くて、トロいやつだったら、それがそいつを糾弾する、もしくはそいつに死んでもらう、そいつをバカにする全うな理由に当てはまるのかどうか。」
アクルックスはどこかに目を向けて、まるで遠くへ語るように話した。
「もしかしたら、世の中にはそんな気持ち悪い自分が嫌で、嫌で、毛嫌いして、今現在この瞬間も努力してる奴がいるかもしれないんだ。」
「その事をポラリス、君には少し、知っておいて欲しいんだ。」