記憶と希望
こんにちは
少し、時間が空いてしましました。
前回までのを読みながら矛盾が発生しないように書きました。
ぜひ、楽しんでください。
また、夢の中にいる。
いつもの通り辺りは真っ暗で何も見えない。
そして、いつもの通りあの声が聞こえてくる。
「あの子のスィスィアになってくれて、ありがとうございます」
この声色は、優しい方だな。
「別に礼を言われことはしてないよ」
「それでもです。ありがとうございます」
優しい方が、またしても礼を言ってくる。律儀というか、なんというか。
「あの子が好意を持ってあなたと関係を持ちました。これほどうれしいことはありません」
なんか、お母さんみたいなことを言うなぁ。
「まぁ、お母さんみたいなものですから」
ん?心を読まれている?それとも声に出していた?
「ふふふ。大丈夫ですよ。この空間では、あなたがなにを考えていても、全部筒抜けです」
なるほど。隠し事はできないってことか。
「そうです。この空間でだけ、ですけど」
「その言い方、なんかひっかかるなぁ。俺とあんたはどこかで会ったことがあるのか?」
「さぁ。どうでしょう?」
こっちは筒抜けなのに、向こうは隠せるのか。理不尽だな。
「それが、この世界でのルールみたいなものです」
「まぁ、そういうことにしておくよ」
「ものわかりが早くて助かります」
「それで、今回は荒い方は来てないんだな」
「あなたが前回、一人ずつとおっしゃったので。変わりましょうか?近くで聞いてますから」
「いや、このままでいい」
あっちは、なんとなくめんどくさそうだ。
「あらあら…あの子に失礼ですよ」
笑いながら言ってくる。いちいち心を読まないでほしい。
「だって、面白いもの」
また笑いながら。まぁ、いいか。
「一つ、聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「いいですよ。何が聞きたいのですか?」
許可を得たので、俺はあること考えた。
すると、声の主は焦ったように。
「そ、そそそそんなこと、知りたいのですか?!」
「知りたい」
俺は真顔で答えた。
「…し…白です…」
俺が何を聞いたかは、見ている人に任せるとして。
「とりあえず冗談は置いといて」
「え?冗談だったのですか?」
この主は、ドジっ子なのかな…
「冗談に決まってるだろ?そんなもん知りたくもない」
俺がそう答えると、なぜか不機嫌そうにした…ような気がした。見えないからなんとなくそんな空気になった。
「そうですか…で、本当に聞きたいことってなんですか?」
「まずは、前回も聞いたけど、お前たちって何者なんだ?」
俺は前回と同じ質問えおした。真剣に気になるし。
「前回も言いましたが、私たちはあなたたちを導く者です」
「それを詳しく知りたいが…」
「そこだけは教えることができません」
やはりだめか。追々知っていこう。
「なら、そのことはいい。もう一つ。エリスを救う方法。本当にそれだけなのか?」
「それだけ、というのはスィスィアになるしかないか、ということですか?」
俺はうなずいた。
「あなたの現状を考えると、今はそれだけです」
「今は…ということは、今後の行動次第で救えることができるってことか?」
「えええ…あなたの行動次第です」
なるほどな。これはエリスと話し合う必要があるな。
「聞きたいことはそれだけですか?」
「今のところは」
「わかりました。では、また夢の中で」
そういうと、声の主は消えた。そして、俺は目を覚ました。
日差しが入ってくる。小鳥の声も聞こえる。
その光と声で俺は目覚めた。
エリスは、もう起きてるようだ。しかし、部屋の中にいないので、外に食材を取りに行ったのかな?
丁度一人なので夢のことを覚えているのか整理しておこう。
その行為をする時点で記憶に残っているってことなんだけどな。
とりあえず、現状エリスはこれで死ぬことはない。
しかし、現状のままだと、完全に救うことができない。
完全に救うには、現状無理。しかし、現状だ。どうすれば救えるのか?それをエリスと模索していこうと思う。
しかし、あの夢のことをどう説明したらいいんだろう?
それよりも、あの夢の助言を頼っていいのだろうか?
俺にはわからない。わからないが、今のところあの助言以外ヒントがないから頼るしかないのだが。
そんなことを考えていると、扉が開き、エリスが帰ってきた。
「お、お目覚めになられたのですね。おはようございます」
少し照れたようにエリス挨拶してくる。
「おはよう。なんだ?顔赤いぞ?」
「…」
エリスの顔が一層赤くなり、唇をおさえる。
「あ…」
俺は思い出した。そして、右手を見る。
そう、昨日、俺とエリスはキスをした。しかも、エリスは初めてだったそうだ。
「その…なんかすまんな…」
俺はなんとなく謝った。
「い、いえ、大丈夫です…気にしないでください」
なんか、すごいやり取りだな…と思った。
でも、このやり取りいいなぁ。なんか、新婚初々しさがあって…。
しばし、無言が続いた。その間、俺は、この空間を楽しんでいた。
「…ちょ、朝食にしましょうか…」
低い声でエリスが切り出した。もう少し、あのなんとも言えない空気を楽しんでいたいが、仕方ない。
「そうだね。お願いしてもいい?」
「わかりました。少し時間かかりますのでお待ちください」
「わかった」
そう答えると、エリスは流し台へ向かい食事の準備を始める。
俺は外に出ることにした。
そういえば、何日かぶりの外だ。ここに来て一回も外に出てなかったからな。
外に出ると日差しが差してくる。ここって、こんなに日差しが差すんだな。
ここにきた当初は慌てていたからあまり見れてなかったが、こんなに自然なだったんだ。
空気もおいしいし、気持ちがいい。
周りを見渡すと、木しかない。人工物がない。
どこ見ても木しかなく、自然豊かといえば聞こえがいいが、なんというか、寂しい。
「こんなところに一人で長年過ごしてきたのか…」
そう呟きながら、自分に置き換えてみた。
もし、俺がエリスの立場だったら?俺は耐えれるだろうか?
その答えはわかっている。無理だ。考えたくもない。
その考えたくもない状態にエリスがなっている。あんなか弱い少女が。
望まない罪をかぶり、こんなところで一人で過ごし、誰にも救われてこなかった少女。
それがエリス。
しかも、自らの力で、自分の体を蝕む。
その力を悪用され、処刑人のレッテルを張られてしまい、余計に迫害を受けている。
この少女を、俺は救いたい。
本当に彼女を救う方法とは?そのために俺ができることって…
しかし、俺って、本当にこんなに情熱的になる人間だったっけ?
この謎も残っている。俺はこの世界に来る前の記憶が一部ない。それも、重要な、俺がどういう生活をしていたのか。どういう性格の人間だったのか。
それが抜けている。俺は、本当はどういう人間だったのか。
本当は、俺も罪人だったのかも。
…まぁ俺のことは追々にしておくか。俺の記憶に関してはヒントも何もないし。
「ご飯の準備ができましたよ」
色々考えていたら、エリスが食事の準備ができたようで呼んでいる。
「今行くよ」
俺は、そう返事すると、中に入る。
「どう?彼の様子は?」
「今のところは大丈夫そうね」
「いつかはバレるかもね」
「その可能性はあるかも」
「あはは。楽しんでるね!」
「あなたこそ」
「そりゃぁ…ね。久しぶりに世界がおかしくなりそうだもん」
「ふふふ…本当におかしくなるかしら」
「なるよ。絶対に…」
「じゃぁなるようにしないとね」
「僕たちは何もしたらダメだよ。あくまでも、あの子たちがおかしくするようにしないと」
「そうね…私たちが‘導かないと‘」
「あははは…楽しくなりそうだね」
「ふふふ…」
少女たちは笑う。その不敵な笑みは何を意味しているのか…
見ていただきありがとうございました。
今回で、一旦エピローグ終了ですね。
次回からはどうしようかは一切考えてないのでどうなるかは私にもわかりませんが、次回もお楽しみに。