表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

処刑人の少女と悪魔

今回で大体のこの物語の大切な部分は説明できたと思います。


朝になり、目が覚める。エリスも起きているようだ。

 朝食を作っているのだろうか。湯気が上がっている。

 しかし、昨日の夕食を思い出す。あの紫の物体を。

 また、あんなものが出てきたら俺の胃が持たない。どうにかしないとな。


 「おはよう、エリス」

 食事の件もあるが挨拶はしておかないとな。

 「おはようございます。ソーマ」

 挨拶に気づき、エリスがこちらを振り向き、笑顔で挨拶を返してくれる。かわいい。

 「昨日はよく眠れましたか?」

 「それなりにな」

 これは半分嘘だ。あの変な夢を見たせいで途中から全然眠れないでいた。

 あの声の正体と、最後に言われた言葉…


 『そう答えると思っていたよ!待っていたよ!!スィスィア!!』


 スィスィア…一体どういう意味なんだ。

 あれこれ考えても仕方ないとは思うが、気になってしかたない。

 「エリス、一つ聞いていいか?」

 「何ですか?ソーマ」

 「スィスィアってどういう意味なんだ?」

 エリスに聞いてみた。仕方ない。気になってしまったのだから。

 それに、その言葉が、エリスを救えるカギになっているに違いない。俺はそう思う。

 エリスは、固まていた。

 「その言葉を…っどこで…?」

 声が震えていた。

 もしかしたら、聞いてはいけないことを聞いてしまったのかもしれない。

 「いや、ちょっと…な」

 なんとも歯切れの悪い返事だ。我ながら嘘くさい。

 「その言葉の意味は…」

 そんな俺の胡散臭いのをよそに、声を震わせながらエリスが続けてくれた。

 「スィスィアとは…生贄、傀儡、つまり、魔法を使う際、支払う代償を代わりに背負う。そういう意味です」

 は?生贄?

 つまり、夢の中でできてた声の主は、俺にエリスの代償を背負えってことか?

 「それ、本当なのか?」

 「はい。スィスィアは、処刑人が背負わされる一種の魔法のようなものです。過去にいくつもスィスィアになり、散っていった人がいます。でも、その事例は少なく、10名ほどしかいません」

 エリスの魔法以上にひどいものがあったのか。

 「スィスィアは、その命が尽きるまで罪人が魔法を使う際に支払う代償を代わりに受けなけれななりません。そこに拒否権も人権もない」

 本当に処刑されているようだ。考えるだけでもゾッとする。

 しかし、なんとなくだが理解した。

 エリスは魔法を使うたびに自身の魂を代償にしなければならないという制約がある。その制約を代わりに俺が受けることで、エリスは無傷で魔法が使える。

 なるほどな。確かに、エリスは無事かもな。エリスは。

 「ソーマ?」

 俺は、この子を救いたい。

 生まれただけで罪と言われ、一人でこんなところに住んでいて。もしかしたら、もっと辛いこともあったのかも知れない。

 この子がなぜ生まれた時から罪と言われたのか、それはわからない。

 「ソーマ。ソーマ」

 でも、もういいんじゃないかと俺は思う。十分苦しんだと思う。幸せになってもいいんじゃないかと思う。

 だから、俺は…

 「ソーマ!!!」

 エリスの大きな声が部屋に響いた。

 「ソーマ、どうしたんですか?さっきから険しい顔していますよ?」

 「あああ…ごめん。ちょっと考え事してたんだ」

 どうやら顔に出ていたらしい。ちょっと恥ずかしい。

 「考え事ですか?」 

 「うん。なぁ…エリス」

 「何ですか?」

 俺は意を決してエリスに言う。もう、この子を不幸な目に合わせたくない。

 だから…

 「俺は、エリスのスィスィアになる。それで、君の苦しみを少しでも和らげることが出来るなら」

 とうとう口にした。覚悟はできてる。

 エリスは、驚いたような顔をしている。

 「え?聞いていたのですか?!スィスィアは…」

 「聞いていたよ。聞いた上で理解し、そして、エリスのスィスィアのなろうと思っているんだ」

 確かに、エリスからしていれば、俺は進んで処刑されようとしている風に見えるだろう。

 だが、俺からしたら、エリスを救う唯一の方法。

 「なんで、そこまでしてくれるのですか?出会って間もないのに…」

 「俺は、エリスの過去の話を聞いて、そして、現状をこの目で見てさ、どれだけ苦しんだのか想像しかできな。だけど、俺はそれで君を救いたいと思ったんだ」

 これは、俺の本心だ。

 偽善者?そう言われてもいい。なんと言われても、俺はこの子を救いたい。

 しかし、本心のはずだが、一つ疑問が生まれた。

 (俺って、ここまで人の事を思う人間だったっけ?)

 思い出せない。よく考えたら、俺は自分の名前と年齢と趣味は覚えている。

 しかし、現実ではどんな生活を送っていたのか、自分の性格までもが完全に思い出せない。

 まぁ今は俺のことはどうでもいいや。エリスのことが重要だ。

 エリスは泣いていた。

 「エリス?」

 「私は、人にここまで優しくしてもらったことが…なくて…ごめんなさい…」

 俺は、どうしたよいのかわからず、立ち尽くしていた。

 少し時間が過ぎ、エリスも落ち着いたのか、もう泣きやんでいた。

 「エリス、大丈夫か…?」

 「はい。すいません。みっともないところをお見せしてしまい…」

 それだけこの子は人の優しさを知らないんだ。仕方ないだろう。

 「あの…ソーマ…」

 「何だ?」

 「私、スィスィアの意味とか知ってますが、なり方とか知りませんよ?王都の一部の人間しか知りません。悪用されないようにするためだと思います」

 「あああ…それなら当てがあるよ」

 そう、俺にはなんとなくだが、当てがあるんだ。

 「え?それって…」

 「聞いてんだろ?出てきたらどうだ?」

 「え?」

 エリスは、そんな俺の、誰に対して言っているのかわからない言葉に疑問になっただろう。

 でも、俺には確信があった。

 そして、俺の問いかけに応えたのか、エリスの後ろで何か光の粒子みたいなものが集まっている。

 「あれれ?気づいてたんだ?いつから?」

 光の中からそんな陽気な声が聞こえる。しかし、夢の中のあの声ではない。

 「なんとなくだが、なんかいるだろうと思っただけだ。本当にいるとは思ってなかったよ」

 「なるほどね。君、勘がいいんだね!」

 そして、大きくなった光の粒子は次第に形を変え、人型へと変換していった。

 「それで、あんたは、何者?」

 俺は光の塊に向かって、問いかけた。

 「僕かい?僕は人間たちでいうところの、悪魔だよ」

 とうとう光が消え、中から出てきたのは、

 「子供?」

 とても幼い女の子が出てきた。

 女の子と言っても人間ではない。頭に禍々しい角が生えており、尻尾もある。肌も不健康そうな薄紫色している。

 きっと翼もあるんだろうなとオタク的なことも考えた。

 「子供じゃない!!悪魔だ!!!」

 目の前の悪魔が地団駄を踏みながら言ってくる。子供かっ。

 「僕の名前はアモン。暗黒界でも恐れられている七大悪魔の一人さ」

 と、目の前の悪魔は名乗った。

 どうやら相当高位な悪魔らしい。らしいのだが、一つ疑問が出てきた。

 「なぁ、一ついいか?」

 「なにかな。僕の神々しさにおそれたのか…」

 「悪魔って数え方って、にんなんだな」

 「今そこどうでもよくない?!」

 「いや大切だろ?今後も悪魔を数えるときとかあるかもだしな」

 「もうちょっと悪魔なんだから驚こうよ…」

 「悪魔って言われてもな…こんなかわいいんだからな…」

 「くそ…何なんだよ…お前…」

 「俺?俺は藤井壮馬って言うんだ。よろしく」

 「あ、よろしく…って違うよ!?」

 なんともノリのいい悪魔だ。見た目通りの子供なのかもしれない。

 「とりあえず、そんな茶番は置いといて。早速なんだがアモン、いいかな?」

 「言わなくてもいいよ。全部聞いていたからね」

 「話が早くて助かるよ。で、俺はどうしたらいいんだ?」

 「スィスィアだよね?簡単だよ?契りを結べばいいんだよ」

 「契り?」

 「人間にわかりやすく言えば、結婚かな」

 すごくわかりやすい。わかりやすいが、

 「それって、俺とエリスに結婚しろってことか?」

 「そうだよ」

 悪魔が笑いながら、さも当然のように言ってくる。

 「スィスィアって生贄って言えば聞こえは悪いけど、要は魔法の共有だからね。結婚に似てるでしょ?」

 確かに、そういうことならそうかもしれな…

 「さも当然のように言わないで!!!!!」

 エリスが叫んだ。

 「どうしたんだエリス」

 「ごめんなさい…ソーマ。さっき私は、嘘をつきました」

 「は?」

 「本当は知っていたんです。スィスィアのなり方」

 エリスが震えながら言ってくる。 

 「私は何度もスィスィアの人を見てきました。私の…スィスィアになるところを…」

 「エリスの?」

 エリスがうなずく。

 「よかったじゃないかエリス!今回は望んで君の犠牲になろうとしているんだから!!」

 アモンは笑いながら言ってくる。

 つまり、エリスはアモンを知っている。悪魔と契約して魔法を使えるようになっているのだから当然といえば当然だが。

 「いやなんです…もう…私のせいで死んでいく人を見るのは…」

 エリスは泣きながら、小さな声で震えながらそう言った。

 「私の魔法は説明したよね?私の代償を代わりに受けるということは、命を失うのと同等なんです。私は、処刑人なんです…」

 「エリス…」

 俺は、そんな彼女になんて声をかけたらよいのかわからず、立ち尽くしていた。こんな時、気の利いた言葉でもかけれたら良いんだが…

 「で…どうするの?スィスィアになるの?」

 アモンが聞いてくる。早くしてよと言わんばかりに。

 「ソーマ…断って…お願い…」

 エリスは小さい声で言ってくる。

 この子は、自分の事よりも、他人の事を第一に考えている。

 「エリス…」

 俺は助けたい。この小さな優しい子を…

 「アモン…」

 「ん?何だい?決まった?」

 俺の答えは一つだ。


 「俺を、エリスのスィスィアにしてくれ」

悪魔の名前検索かけて調べてながら書いてます。

そこまで詳しくないんです。

なのでこの悪魔違うよ等のコメントは控えてほしいです。


次回もなるべく早く投稿しますのでお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ