戦闘訓練してくれるみたいです
遅くなったナリ。許して欲しいナリ。
スリング……『投石器』って呼ばれる紐状の武器だ。
「投石器……それで戦えるんですか?」
「僕の考えだと多分ね」
「……本当にスリングでいいのか?飛び道具なら弓があるのじゃが……」
「それは、弓だともう片方の手が使えないからです」
「……む?」
「僕みたいに紙耐久で接近戦闘ができない人だと、確かに弓を持つ傾向にあります。ですが、ある程度接近戦等ができる人ではないと弓は持ってはいけないんです」
「……ふむ。なぜじゃ?」
「《接近されたら弱いから》です」
「じゃが普通はほかのパーティメンバーが前線を抑えてくれているじゃろう?」
「普通であればそうですが、何事も想定外が起き得るものです。僕はソロですし、一撃で致命傷です。死んでしまうかもしれません。奇襲に弓は対応できません。対応するためには弓を手放す必要があります。それだと自分は戦えなくなってしまいます」
「……想定外を危惧しての武器選択ということか」
「はい。そしてスリングだと弾切れが起きにくいです。どの武器よりも」
「……たしかにの。戦う場所にもよるが弾切れは基本起きんじゃろうて」
「ですがやはり接近されるかもしれません」
「だったらどうするのじゃ?」
「簡単な話です。逃げればいい」
「逃げるって………」
後ろでスィーナの呆れた声が聞こえたが気にしない。
「奇襲はどうしようもないにしろ、接近された紙耐久が逃げない訳は無いです」
そうしないと死んじゃうからね。
「ふむ……わかった。小僧の言う通りにしよう」
ガンヅさんも了承してくれたみたいだ。
「じゃが、念の為ナイフかなにかの接近武器は持っていてくれ。わしの作った武器で死んでもらっては寝覚めが悪いからの」
確かにそれはこっちも嫌だな。
「わかりました」
「お嬢ちゃん達は武器はさっき言ったので充分か?」
「私は大丈夫です!」
「あっあたしも大丈夫!」
「よし、少しだけ待っておれ。なんなら試闘技場を使ってもいいぞ」
「「「試闘技場?」」」
「この家の地下に武器を調整出来るように少しだけ広いペースがあるんじゃ。簡易的な武器もあるから使っていいぞ」
へー……この地下にそんなものが………大丈夫なのか?土地代とか。
「わかりました。ありがとうございます」
「いいんじゃ。〘星砕〙に稽古つけてもらえ(笑)」
「おやっさん……〘俺〙加減わからんよ…」
「ほっほっほ。案内くらいはしてやれるじゃろ。とっとと行ってこんかい」
「はいよ。んじゃ行こうか」
「「「はい!」」」
僕達は左側にある階段を降りていく。
そこは土で塗り固められた広い空間。上にはいくつかランプがついていて明るい。右側にはいくつか武器がぶら下がっていて、左側には救護箱のような箱や椅子、机といった休憩スペースになっているらしい。
「広……」
「すごい…」
「…ガンヅさんどれだけの金注ぎ込んだの?」
思い思いの感想を……ってスィーナ失礼だな!?
師匠が自分達と距離をとると振り返り、
「まずはお前らの小手調べが大事だから適当に選んでかかってこい」
とか言い出した。
「え?師匠が相手するんですか?……いや僕はわかりますけどここの二人は………」
「いいんだよ。〘俺〙がしてやりたいんだ。道連れだ」
いい人だなぁ……師匠……俺?……あっ…
「師匠!素が出てます!」
「やっべ」
「「?」」
慌てて口を塞ぐ師匠……二人が気付いてなくてよかったね。
「……らしいからとりあえず武器持って師匠に攻撃しようか」
「えっと……私達も?」
「そうみたいだよ」
「「……」」
二人はお互いを見つめあってプルプルしてる
だ……大丈夫か?
「「ほ」」
「ほ?」
「「〘星砕〙さんに修行して貰えるの!?!?」」
二人とも歓喜の表情ではしゃぎながら武器を選びに行った………
「……女の子わかんないや」
女の子難しい。
なんやかんやあってスリングを見つけた僕は一足早く武器を装備し終わってる二人に近付く。
「終わったみたいだね」
「はい!もう楽しみで楽しみで……うずうずしてますよ!」
リリアンが滅茶苦茶はしゃいでる……可愛い。
「あの伝説の〘星砕〙さんの胸を貸してもらえるなんて……はっ…何よ!にゃんか用!?」
スィーナも感動と動揺が混じって噛んでるよ……ドジ入りまーす。
「準備できたみたいだな。じゃあリュートからこーい」
「あっ!はい!!」
確かに冒険者一位の実力を見るにはいい機会かもしれない。……最弱の僕が何言ってんだ。
「師匠……武器は?」
「無くても実力はわかる」
「さいですか」
深呼吸……。どこまで行けるかわかんないけど。
僕は石を拾ってスリングに篭める。
「いきます!!!」
「いつでも」
「とぁっ!」
石を投擲。飛んだ石はまっすぐ起動を変えずに………………奥の壁にぶつかった。
ドシュッ
「あっ……あれ?」
思った以上にスピードが出た。
躱されはしたけど……力がないのになんでだ?
「……いいスピードが出るな」
この薄暗い中で師匠を狙うのは若干難しいができないことじゃない。
「次行きます!!ほいっ!とおっ!」
次々と石を投擲していく。
師匠にはかすりもしない。
確かに寸分狂わず投げれてる僕も僕だけど、こんな所で結構な速さで飛んでくる石を目視で躱し続ける師匠鬼だな………。
「おーい。足が止まってるぞ〜」
……そうだ。足を止めたら確かに命中精度は上がるけどその分狙われやすくなる…動かないと。
僕は少しづつ加速しながら走り出す。
投擲しながら……石を拾いながら。
「ほっ…ふっ……ていっ……」
…………。
おかしくない?
移動しながら投石してるのに全くエイムがブレない………それどころか少し投擲スピードが上がってる気がする。
これも《五色の眼》の力?
「わかんないけど…なんかいいな……なかなか」
でもこのままやってても一切当たらないし……
もうちょっとだけスピードをあげる方法は無いかな………
「そうか!走りながらだ!」
走るスピードと投げるスピードを合わせたらそれはとんでもない投石が出来るのでは!?
よーしやってみよう!!
「師匠!見ててください!!」
「おう!いいぞ!!」
充分距離を取って……走り出す。最高速突入と同時に……このままだと投げづらいから…ジャンプ!スピードを殺さずに……
「ここだっ!!!」
ちょうどいいタイミングで全身を使った投石。
「何っ!?」
その石がさっきとは比べ物にならないスピードで師匠の金色のフルフェイス兜を……顔面を捉えた。
バギャッ!
絶対に石じゃ鳴らないような音と共に砂煙が巻き起こる。
「「……え?」」
「…………は?」
何が出来たんだ……何が出来てしまったんだ……
これは投石器の世界を変える何かが………
いやちょっと待て師匠だ師匠!顔面ぶち抜いてしまった!!
「師匠!大丈夫d……」
「あぶねぇなぁ」
「!!!」
後ろから……真後ろから師匠の声が聞こえる。
肩を叩かれる……
「いやぁ油断した油断した。いいなそれ」
振り向くと兜が無い師匠がいた。怪我は………無い……無い!?さっきの食らって!?
それよりも兜!!兜抜いじゃってる!!
「あれ?あれが〘星砕〙さん……?」
「えっ……ええええええっ!!素顔!?〘星砕〙の素顔!?!?」
まずい!!どうするんだ師匠!!
「……どうしよ」
ご愁傷さまです。
???『世界神!もう!あなたのせいで前回何も出来なかったじゃない!!』
???『それはあんたが仕事放置してたからでしょ!!私ばっかりに面倒事押し付けないで!!』
???『大丈夫だよ〜だ愛情神にも押し付けてるから』
???『そういうことじゃないでしょうがあああああ!!!!』




