僕の武器が決まったようです
side リュート
普通この街にある有名な武器屋は二つ……
大通りに面してる皆良く使ってる武器屋と
知らない人も多いちょっとコアな武器を取り扱ってる武器屋の二つ。
僕は基本この二つを使ってたみたいだがバーミュラーさん……師匠は違う武器屋を使うみたいだ。
薄暗い路地裏を進んでいく師匠………
こんなところに武器屋なんてあるのか……?
ある程度進んだ後、一つの井戸が見える小さめの広場に出た。
「こ……この街にこんな所が………」
スィーナさん達がすごく驚いている。
「あれ?二人もこの場所知らないの?」
「路地裏に日常的に入ってる子供の方がおかしいでしょ」
「私はお父様に入るなと……」
スィーナの言ってることはごもっともだし、リリアンは少し厳しい家の出かもしれない。
リリアン・ヴァーン………聞いたことあるけど何処だっけなぁ………
そんなことを悩んでいると、
「ここだ」
師匠が手招きをしている。
なんか木造の小汚い家だなぁ……こんな所が本当に武器屋なのか?
躊躇いなく入っていく師匠に自分達も慌てて後に続く。
「おやっさん。いるかい?」
中は本当に何も無い家みたいな感じだ……カウンターがあるだけの。
本当に武器を売ってるのか?ていうか一般民家じゃないのかここ……
するとカウンターの下からのそのそと小さなおじさんが顔を出す。
「……なんじゃ…〘星砕〙か………久しぶりだな」
師匠のことを知ってるみたいなおじさんは、長い髭を生やした厳つい顔の……ドワーフってやつなのかな?耳がとんがってて鼻が大きくて………
「……そこの坊主はドワーフを見るのは初めてかい?」
「あっはい!ジロジロ見てすみません」
「いいんじゃ。〘星砕〙の知り合いなら悪いやつはおらんでな」
だいぶ信用されてるんだなぁ師匠………
「んで……今日はどうした」
「おやっさんにこの子達の適正武器を見てほしくてな」
「適正武器……そりゃ値が張るぞ?」
「師匠……僕たちそんなにお金持ってないですよ………」
「いいよ。おじさんが出すよ。必要投資ってやつだね」
「あ………ありがとうございます……」
……なんかいいのかなほんとに。
「奥のお嬢ちゃん達は?」
「うん。この子達にも適正武器を」
「………お嬢ちゃんたち名前は?」
「はっはい!スィーナ・ニマです!」
「私はリリアン・バーンです」
「………ふむ」
武器屋さんがじっと二人を見つめている………
「……えっと……」
そりゃそういう反応になる。
「お嬢ちゃん達はなんでその武器を持ってるんだ?」
「え?……いや……あたしは魔法使いだし……」
「私は僧侶なので……」
「ふむ。じゃぁ二人とも職業が合ってないのか」
「「え?」」
……どういうことだ?
武器が合ってないじゃなくて職業が合ってない?
「そこの黒いお嬢ちゃんは魔法使いより、物理面にステータスが偏ってるから弓を使うレンジャーや、色々な魔術属性適性も持っているから魔法剣士とかがいいじゃろうな」
「………え?なんでそんな事が……」
「スキルに〘怪力EX〙があるから武闘家や武術家とかも面白いかもしれん」
「なっ……ななななななんで私が隠してる事まで!!!!」
「ふぉっふぉっふぉ」
え?この子〘怪力EX〙とかいうあたりスキル持ってるくせして魔法使いやってるの?
「そちらの白いお嬢ちゃんは……早さがあまり高くないから戦場で駆け回る僧侶はあまり向いとらんのかもしれん。守りと防御が高いし、回復魔法に適性があるのならいっそパラディンのようなタンクになってみるのもいいのかもな」
「……そうなんですか?」
……この人すごいな……そんなことも一気に分かっちゃうのか……なら僕のことも………
「……そこの坊主は………すごいな…」
「……え?」
「本当に早さだけ抜きん出て他がゴミクズじゃな」
「…………」
やっぱりか……いやわかってたけども。
「……適正武器を見つけるのは難しいかもしれん」
「…………………」
やっぱり才能ないのかなぁ………
「あ………あの……」
おずおずとした声、振り返るとリリアンが僕に声をかけていた。
「た……多分大丈夫ですよ!」
「え?」
「だってリュートさんは私たちのために命を張って助けてくれたんです。それだけじゃなくて色々なことで冒険者ギルドに貢献してるのも聞きました。そんなリュートさんに適正武器が無いなんてこと……許されないです!神様を恨んでやりますよ!」
リリアンは両手を握って、力いっぱい話してくれた。
「リリアン………」
「…ま……まぁ?あんたが私たちを助けてくれたことは感謝してるし?あんたに使える武器がないのは可愛そうかなって思うし?えーっと……その………あれよあれ!大丈夫よ!」
なんか顔真っ赤にしながら話してくるスィーナ……唐突なデレはやめてください僕に効く。
「耳まで真っ赤だぞ」
「!!!」
ビクッと反応したスィーナから殴られそうになったから全力で躱しておいた。
「お前〘怪力EX〙なんて持ってるやつに殴られたら死んじゃうだろ!!!」
「ふぐっ!!恥ずかしいところそんな大声で言わないでよ!!デリカシー無さ男め!!!」
「……進めていいかの?」
武器屋さんの声で冷静になった。
「誰もお前に適正武器が無いとは言うておらん。じゃが………」
「?」
「使えるものがだいぶ使いづらいものなんじゃ」
「……例えば?」
「一般には〘暗器〙と呼ばれるものじゃな」
「〘暗器〙……暗殺者の武器か」
「軽くて力を必要とせず殺傷能力も高い。じゃが扱いが難しい上魔物相手じゃ一撃で仕留めきれない可能性がある。しかも……坊主の場合じゃと遠距離攻撃になるからもっと数は限られる」
「………それ以外は?」
「……絶望的じゃな」
重い空気が流れる。武器屋さんが切り出す。
「やはり適正武器じゃなくて普通n」
「それでいいです」
「え?」
「それしか無いんだったらそれを極めればいい」
「ま…待て〘暗器〙で冒険者をやってるものなど聞いたことがないぞ!?」
「いいじゃないですか。オンリーワン。僕は好きですよ」
「………」
かっこいいじゃないか。誰も使ってない武器で冒険者最強になるって。それしか適性が無いんだ。それしか使えないならそれを使って最強になるしかない!
「後悔はないな?」
「当たり前です」
「ふむ。聞き届けた」
武器屋さんは少し微笑みながら
「わしの名前はガンヅじゃ。坊主の肝の座り方……気に入ったぞ」
「僕の名前はリュート・ハルブラッドです。ガンヅさん」
「リュートか。覚えておく」
ガンヅさんとの握手は力強く、暖かかった。
「……それで三人の武器なんじゃが、黒い嬢ちゃん「スィーナです」……スィーナは一番は槍じゃろうな」
「……槍……」
「槍は近距離攻撃も行えるし魔石を埋め込めば魔法も使える。スィーナに合ってると思うんじゃ」
ガンヅさんはリリアンの方を向く。
「白いお嬢ちゃん……いや、リリアンは大盾とメイスが良さそうじゃな。この子はパラディンの才能があるぞ」
「………」
二人とも黙ってる。
そりゃそうだ、急に「転職した方が強くなるぞ」なんて信じられないよな。
にしてもこのガンヅさん……とんでもない〘観察眼〙を持ってるのかな?すごい情報収集力だ。
「まぁ急いで決めろとは言わん。じっくり考えt」
「「お願いします」」
二人とも速攻で決断した。
「私はリリアンとは違って半年鉄等級で冒険者をしています。昔〘怪力EX〙のことで色々あってから隠すようになりました……でもこんな所で実力を隠してたら前に進めないってことは痛いほどよくわかりました」
スィーナにも色々あったんだな……なんか〘怪力〙の事言ってしまってごめんなさい。
「今回……リュートがいないとリリアンは死んでいたし、リュートも死にかけてた。私が〘怪力EX〙を使っていればどうにかなった……そういう後悔はしたくないので」
スィーナの覚悟が伝わってくる。みんなのことを考えれるいい子じゃないか。
「ふむ。……そちらの……リリアンは?いいのか?」
「私は回復魔術適正があるってだけで少し驕っていたところがあったかもしれません」
回復魔術適正ってすごい珍しいんだよな。実は。
「みんなが倒してくれるから遠くで回復するだけの僧侶をしていたのかもしれません。今回リュートさんが助けてくれなかったら確実に死んでましたし、〘星砕〙さんがいなかったらその恩人さえ死なせかねませんでした」
「……リリアン」
「私は力不足を痛感しました。ですがそれとは別に、もっと皆の役に立ちたいって思いました。私が強かったらもっとみんなが楽をできる!信頼を築ける!その信頼が次の力になる!!」
リリアンは続ける。力強く。己の覚悟を形にするように。
「〘信頼は最高の武具である。信頼を築けぬ者には明日はない。〙……お父様の言葉です。私はスィーナと…皆と強くなりたいです。」
「…………」
二人の真っ直ぐな目。揺るがぬ、逸れぬ、意志を突き通す目。
「わかった。坊主も来い、お前達の武器をわしが作ってやる」
「「「いいんですか!?」」」
「おう。当たり前よ。お前達の覚悟、心に染みた!久しぶりに身体が滾ってきたところよ」
「「「ありがとうございます!!」」」
ガンヅさんもすごく嬉しそうだ
「して、坊主の武器だが……」
「実はもう決めてあります」
「ほう……その武器とは何だ?」
僕は考えていた。力を必要とせず、でも早さを生かせる〘暗器〙とはなんだ。遠距離武器で弾が切れずにほぼ永久的に攻撃し続けられるものは何だ。
答えは見つかった。
これしかない。
これからの僕の相棒だ。
「スリングです」
「「スリング?」」
「スリングじゃと!?」
師匠が少しだけ微笑んでるような気がした。
【???さんは退室しました】