無料公開された作品と同じような内容で売ろうとするの、おかしくない?
ツイッターを始めてから約半年、それまでもたまに覗いたりしてたのですが、自分のアカウントを取ってから、ツイッター発の情報に触れる機会も多くなった気がします。
まあ、正直に言ってしまえば、ツイッターの情報なんて真偽不明で、正しいかどうかは自分で判断するしか無いのかなと思っていますが。そのあたりは正直、匿名掲示板と似たり寄ったりかな、と。
そのツイッターで「なろう系の作品はブクマが高いからと言って売れる訳ではない」みたいな言葉を目にしまして。まあそうだよね、なんて思ったわけです。
――何せ、お金を出して買わなくても、なろうに来れば無料で読めることが知れ渡っている訳ですから。なかなか売れないだろうな、と。
そのくらい、web小説というのは、ひと昔前と比べて知名度の高いものになったのかなと、そんな風に思うのです。
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実の所、web小説を書籍化したところで、web版と書籍版で内容が完全に一致することはあまり無いと思います。編集の手が入りますし、最低でも校正が入ることにはなるのかなと。
web小説をそのまま出版できない、そう判断されれば、もっと大きく話が変わることもあるでしょう。それ以外でも、小話のような、web版には無かった話を追加したりすることもある。そう考えると、書籍化されたweb小説は、厳密には、元のweb小説とは違うものになることも多いのかな、なんて思います。
だから、アニメとかコミカライズで作品を気に入って原作小説を読もうと思った人が「無料で読みたい」と思ってweb小説の方を読み始めると、実は「原作と微妙に違う」小説、いわば「原作の原作」を読んでいることもあるのでしょう。
――ですが、その人は、自分が読みたかったものとは違う小説を読むことになったのでしょうか?
そんなことはないと思います。例え書籍と差異があっても、その人が読んだ作品は間違いなく、その人が読みたかった「原作小説」なのかな、と。
つまり、原作を知らない人にとっては、「web小説」と「書籍化作品」、どちらも同じ「原作小説」で、同じだけの価値がある作品になるのかなと、そんな風に思うのです。
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書籍化にあたってストーリーに手を加える。そこには、書籍化された作品を無料で公開し続ける訳にはいかない、そんな事情もあるのでしょう。ですが、世界もキャラもほとんど同じまま、伝えたい何かもそのままで、ストーリーだけ手を加えても、そこまで大きな違いにはならないのではないでしょうか。
……と、言うかですね。同じタイトルで出す以上、全く別の物語にすることは出来ないと思います。あくまで同じ作品のまま変化を付ける、その程度の変化にとどまると思いますし、そのことを作者や出版社も意識していると思います。
――世界もキャラも、伝えたいこともそのままで、ストーリーだけ違う。そんなささやかな差は、その作品を知らない人にとって、果たして本当に「意味のある差」なのでしょうか。
お金を払ってもいいほどの大きな差が無ければ、読者はただで読める方を選ぶのが自然だと思います。
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この数年で、多くのなろう作品が書籍化されました。それらの作品は、なろう作品だから売れたのでしょうか。……それは違う、個人的にはそう思います。
なろう作品だから売れたのではありません。その話が今までと違う、どこか面白そうと感じられる作品だから売れたのです。そのくらい、他とは違う雰囲気がなろう作品にはあります。――つまり、なろうのユーザーではなく、本屋に足を運んだ人に売れたのだと、そう思うのです。
読書が好きな人の中には、「これは他と少し違うかも」ぐらいで買ってしまうくらいに好奇心が旺盛な人も多いと思います。そして、そうやって手にした本を通して、なろうの存在を知った人も多いのかなと。
私がなろうに登録したのが二年半ほど前、IDは80万台でした。それが今では、130万を超えるユーザーがなろうに登録しています。たった二年半で、それだけの人がなろうに来て、なろうに登録したのです。登録せずに単に見るだけの人は、さらにいると思います。
それほどまでに、小説家になろうと言うサイト、並びにweb小説は、一般的な知名度を得たのだと思います。
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なろうの書籍化ブームのようなことが起こって、なろうの知名度は上がりました。逆に言えば、「書店でのなろうの知名度が今よりも低い」そんな時に、なろうの書籍化ブームは始まったのかなと、そんな風に思います。
元々、書籍は高いものではありません。試しに買って、読んでみて、なろうにたどり着いた人も多いでしょう。そうやって、書店に行く人を捕まえ、引き寄せた結果が、今のなろうのユーザー数ではないかと思います。
書店に通う人で、なろうのことを知っている人は相当に増えたのではないでしょうか。そんな、なろうのことを知っている人が、棚に並んだなろうの書籍化作品を見て、どう思うでしょうか。
……家に帰って「なろうで」読もうとする、そんな人がこの数年で激増していたとしても、おかしくないのではないでしょうか?
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買うよりもなろうで読んだ方が良いよ、なろう作品を友人とかに勧めるとき、きっと私はそう言います。
もちろん、勧められた人がweb版を気に入って、書籍を購入するかもしれませんし、それを積極的に止めるつもりもありません。ですが、八割がた同じ作品にお金を出させるのって、相当のことだと思います。
少なくとも私は、もう一回読みたいだなんて、そんな二度読みのノリで、なろうの書籍化作品を買うことはできません。……だって、話が変わってしまってるかもしれないんですよ。流し読みする訳にもいかないですし、好きな部分だけ読み返す訳にもいかないですよね。結果、一からしっかりと読まないといけないじゃないですか。
だったら、話の筋が分かっているweb版をもう一回読んだ方が良くないですか? その方が自由に読めますから。
そう考えると、書籍化の価値って何だろうと、そう思う訳です。買っても良いと思えるぐらいに魅力的な作品を無料で公開しておきながら、ほとんど同じ作品を売ろうとする、本当に、そんな商売が成り立つのかなと。
無料で作品を公開したままお金を取る。その売り方はきっと、無料で公開されていることを知らないお客さんが必要なのです。
だから、無料で読めることが知れ渡れば、知名度の高い作品ほど売れなくなるのかなと、そんな風に思います。