ジョンとアシュリー
「ジョーンっ!」
「なんだぁっ?! アシュリー」
二人は真剣な眼差しを互いに向けている。
ダークブラウンの髪に黒い瞳のジョン、ブロンドで青い瞳のアシュリー……。
若い二人の間には、緊迫した空気が流れている。
「ねぇっ! あたしの事、好きって言ったわよね?!」
アシュリーのその言葉に、ジョンは苦しげに顔を歪める。
「あぁっ、言ったとも……」
「じゃぁっ、絶対にあたしを捨てないわよね!?」
アシュリーのヒステリックな叫び声に、ジョンは冷や汗をかきながら……力なく俯く。
「ジョッ……ジョン!」
アシュリーは、血の気の引いた顔でジョンを睨み付ける。
「アシュリー……僕は、もう……たえられない」
ジョンは、ぶるぶる震えながら……目を固くつむる。
「そっそんなぁ! ずっと一緒だって言ったじゃない!?」
アシュリーは涙をこぼしながら、ジョンに訴える。
だがジョンは、何かを諦めるような冷たい瞳で、アシュリーを見るだけだ。
「あなたが捨てたらっ、あたしは死ぬわよ!」
「そんなのわかってる! 頼むから静かにしてくれっ」
ジョンは、アシュリーの手をしっかり握りながら、谷底を見やった。
日中であるにも関わらず、谷の底は真っ暗で見えない。
そうしている間に、アシュリーの靴は、静かに闇へと落ちていった。
ジョンは汗で滑りそうなアシュリーの手をキツく握りしめる……。
もうすぐ、握力の限界だ。