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女子中高校生が部活で迷宮に入るだけ。 東京迷宮_2015~  作者: (=`ω´=)
〔二千十五年度、智香子、中等部一年生編〕
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黎の家柄

 従姉妹同士だった、とうことらしい。

 その藤代葵さんという女性と、黎が、ということだが。

「ええっと……」

 智香子は新鮮な情報を必死に頭の中で咀嚼する。

「つまり、黎は、理事長のお孫さん?」

 ひ孫だったかな。

 ともかく、前に聞いた先輩方の話しが本当だとしたら、そういうことになる。

「親戚ではあるけど、うちは別に直系ってわけでもないからなあ」

 黎はいった。

「経営にも参加していないし、ほとんど関係ないよ」

 親類筋であることは、確からしい。

 何度か会話に出てきた、「探索者をしているお姉さん」とは、あの葵御前のことで間違いがないようだ。

 黎から「お姉さん」と呼ばれるような年齢で探索者をやっているような知り合いが別にいるとすれば、その人の可能性もあるのだが。

 でも、可能性からいえば、そんな都合のいい知り合いがホイホイと出てくるとも思えない。

「そうかそうか」

「妙に筋がいいと思ってたら」

 なぜか、青島先輩と松風先輩が黎の肩に腕を回した。

「黎ちゃんはあれか」

「葵御前の従妹ちゃんなのかあ」

 二人に挟まれている黎は、非常に居心地が悪そうだった。

「こりゃあもう、今まで以上に可愛がってやらねばならんなあ」

「そうだねえ。

 懇切丁寧に」

 台詞だけ聞いているとどっかのチンピラがいちゃもんをつけているようにしか聞こえない。

「二人とも、戯れるのはその辺で」

「はっ」

「はっ」

 葵御前がそういうと、青島先輩と松風先輩はしゅっと背筋を伸ばして返答した。

 ……なんか、力関係が歴然としすぎているかな、と、智香子は思う。

「攻略の準備を手伝う必要があるので、ここで失礼をしますが」

 葵御前は戦合い二人に向かって、そういった。

「これからも黎のことをお願いしますね」

「はっ」

「はっ」

 青島先輩と松風先輩は、また声を揃える。

 葵御前が去ってからも、二人はしばらく直立不動の姿勢を保っていた。

「そんなに凄い人なんですか?」

 智香子が、素朴な疑問を投げかける。

「凄いっていうか」

「なあ」

 先輩二人は顔を見合わせてから、そういった。

「あの人は、別格。

 誰よりも早く、先陣を切ってエネミーに向かっていくし」

「背中に目がついているんじゃないかってくらいに、勘がいいし」

 対エネミー戦において、あの葵御前は群を抜いた撃墜数を誇っていたらしい。

 幼少時から薙刀を習っていたそうだが、入学時から六年間、その手習いをそのまま実戦に応用し、中等部一年生の時からばったばったとエネミーを倒し続けたという。

「葵姉さんの薙刀は、刀自の仕込みだから」

 黎が、そう呟いた。

「とじ?」

 智香子は、耳慣れない単語を反芻する。

「女性の当主のこと。

 一般的には、ってことだけど」

 黎は、詳しく説明してくれる。

「具体的には、今でも松濤女子の理事長をしている怪物みたいなお婆さんのことだよ」

 怪物みたいな、という形容詞はともかく、松濤女子の理事長がかなり高齢の女性であることは、智香子もどこかで聞いたおぼえがあった。

 名前や顔は、まるで思い浮かばなかったが。

 智香子としては、

「そういう人も、いるんだろうな」

 程度の認識であり、遠い外国の首相とかと同じく、まったく身近ではない存在なのである。

 しかしその、身近ではない理事長と黎とが、親類関係にあるとは。

 ついさっき知った葵御前とかいう人のことはともかく、智香子にしてみればそっちの方が衝撃が大きかった。

「黎ちゃんが、ねえ」

 しみじみとした口調で、智香子が呟く。

「そういう反応をされるから、あまりいいたくなかったんだよ」

 黎は、拗ねたようにそういって、口を尖らせた。



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