おお!
「おお!」
バッタの間に突入した新入生たち、そのうちの一人が小声で呟いた。
「なんか変なのが見えるようになったし!」
視界の隅に、なにやら文字やら数字やらが浮かんでいる。
「ええっと」
じっとその部分に目を凝らすと、ちゃんと読み取ることができた。
三嗣黎/スキルなし
最初にバッタの間に突入した同級生、その頭の少し上に、そんな文字が浮かんでいる。
「これもスキルってやつなのかな」
と、その新入生は思った。
とはいえ、その新入生はあまり深く考える性質ではなかったので、そのことについても深く考えないままに、バッタへの攻撃を続行していたが。
スキルというものは、エネミーを倒すことによって発現しやすくなる。
その程度の基礎知識は、その新入生であってもこれまでの探索者研修などで学んでいた。
初日からこうして、目に見える形でスキルの恩恵を受けられるというのならば、ますますやる気になるではないか。
そう思ったその新入生は、以前にもまして勢いよく手にしていた棒を振り回し、当たるを幸いにバッタを叩き落としていく。
その新入生の名は、冬馬智香子。
その年度の、松濤女子学園新入生の中で、一番早くスキルを身につけた者となった。
ちなみに、その時に冬馬智香子が生やしたスキルは、かなりポピュラーな〈鑑定〉であった。