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女子中高校生が部活で迷宮に入るだけ。 東京迷宮_2015~  作者: (=`ω´=)
〔二千十五年度、智香子、中等部一年生編〕
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スキルの意味

 基本的に、松濤女子の生徒たちは「部活動」として迷宮に入っている。

 だから、「安全第一」を常に心がけ、目的を明確に定め、できるだけ短時間で迷宮から出るように心がけている。

 そのため、他の探索者たちの活動と比較すると、どうしても戦闘を重視しがちであり、

「とにかく、目の前のエネミーを可能な限り短時間で沈黙させること」

 を第一義に考えるのも、その流れからだろう。

 黎は智香子に対して、そう説明をした。

「不安要素であるエネミーを一刻も早く黙らせる。

 リスク管理として見ると、その方針は決して間違ってはいなんだけど」

 ちょっと、それに偏りすぎてはいないだろうか。

 というのは、数日先輩たちに同行してみた黎の、素直な感想ということになる。

「弱いよりも強い方が迷宮内では有利で、それだけ安全になる。

 そのこと自体は、決して間違ってはいないんだけど」

 そもそも、現在の松濤女子の方針は、戦後から現在まで、七十年をかけて試行錯誤を繰り返し、定着してきた物だ。

 大きく間違った方針が、これまで放置をされているはずがない。

 大本の原則としては、そんなに間違ってはいないはずなのだが。


「でもそれだけでは、なにか足りないんじゃないかな?」

 黎は、そう思ってしまったのだ。

「たとえば、チカちゃんのようなスキル構成は、どこへいっても歓迎されると思う」

「パーティに一人でもいれば便利だからね」

 智香子はそういってあっさりと頷いた。

「回復役兼荷物持ちとして」

 智香子自身が戦闘の場で役立たずであったと仮定しても、パーティに対する貢献度はそれなりに期待できるから、である。

 でも、それでは。

「パーティの一員というよりも、生きる道具として重宝されているだけでしょ」

 黎は、端的にそういってのける。

「黎ちゃん、要求している基準が、厳しいんじゃないかな」

 智香子拝見を述べた。

「実際問題として、先輩たちがどんなつもりであったとしても、迷宮内に同行さえして貰えれば累積効果も増えるし、別のスキルが生えてくる可能性も大きくなるし」

 智香子としては、先輩方が、他のパーティメンバーがどのような思惑で智香子を扱うとしても、特に気にするつもりもなかった。

 利用し利用されているのはお互い様であったし、それで扱い的に差別をされたり虐待されたりすれば話は違ってくるのだが、そうでもなければ取り立てて気にする必要もない。

 というのが、智香子自身のスタンスである。

「他人が考えていることなんて気にするだけ無駄」

 という、ある意味でかなり実際的な態度であった。

 そんな智香子からしてみると、黎の心配は大げさというか、杞憂に近い物に感じてしまう。

 これまでその方針で大きな問題がなかったのだから、それでいいじゃないか。

 と、そう思ってしまうのだった。

「だいたいは、それでも大きな問題はないはずなんだけど」

 しかし黎は、なおも反駁する。

「ただ、迷宮というのは。

 基本的に常識が通用しない、なにが起こるのか予想できない場所だから」

 戦闘に使う以外の、もっと多種多様なスキルが存在し発現するのか。

 その意味を、普段からもっと真剣に考えるべきなのではないか。

 黎はどうやら、智香子が漠然と考えるよりも深く、「わざわざ迷宮に入る」という行為の意味を見つめようとしているようだった。


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