新入生たち
通常バッタの間、その入り口部分は大きく開いているのだが、その部屋の中にひしめいているバッタたちはなぜかその中から外へは出てこない。
その新入生は、手にしたモップの柄を振り回しながら、バッタがひしめくその空間へと入っていく。
引率役の上級生の言葉に偽りはなかったらしく、その新入生がびゅんびゅんとモップの柄を振り回すたびに、その柄が命中したバッタがぼとぼとと地面に落ちる。
そうして落ちたバッタの中には、その場でなんらかのアイテムに姿を変える物もあった。
「ドロップしたアイテムの回収は、すべてのバッタを倒してからにしろよ!」
引率役の上級生が、大きな声でそういった。
「今回に限らず、アイテムの回収は完全に安全が確認できてから!
これが迷宮での鉄則だ!
ドロップしたアイテムは、逃げやしない!」
最初に突入した新入生に異常がないことを確認してから、一人、また一人と他の新入生たちもバッタの間へと入っていく。
怖いけど、いつまでもこうしていても事態に進展がないし、ないより、迷宮に入ることを選んで資格まで取ったのは自分たちなのだ。
これが松濤女子の毎年の行事だというのならば、それなりに効果的なメソッドなのだろう。
そう、信じるしかない。
二十人あまりの新入生たちすべてがバッタの間に消えると、引率役の上級生は、
「バッタを全滅させる。
この人数でそこまでやれば、初日でもかなり強くなるぞ!」
と、声をかける。