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女子中高校生が部活で迷宮に入るだけ。 東京迷宮_2015~  作者: (=`ω´=)
〔二千十六年度、智香子、中等部二年生編〕

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罠?

 智香子たち六人も、走り出した〈スローター〉氏を追いかけていく。

 ここまでは今までの通りだったが、その途中で智香子は、

「ん?」

 という、疑問の声をあげてしまう。

「なにかあった?」

 隣を走っていた黎が、その小さな呟きを拾って確認してきた。

「おかしい。

 っていうか、多分、今までにないパターンだと思う」

 智香子は、慎重な口ぶりで答える。

「〈スローター〉さん、いつもの調子でエネミーを減らしているんだけど、その勢い以上にエネミーの数が増えている」

〈察知〉スキルで拾える情報を素直に解釈すると、どうもそういうことになるらしいのだ。

「え!」

 佐治さんが、大きな声をあげた。

「じゃあ、急がなくちゃ!

 いくらあの人でも、大勢に包囲されたらたまったもんじゃない!」

「罠にかかったっていうこと?」

 香椎さんが、智香子に訊ねる。

「待ち伏せ、とか?」

「そこまではわからないけど」

 智香子は素直に答えた。

「ただ、途中で、それまでに反応がなかった群れが合流してきて、結果として〈スローター〉さんはエネミーに包囲されている」

「遠く離れた場所にいる仲間と、連絡を取れるようなスキルかアイテム。

 そんなものがあれば、そういうこともできるかな」

 黎が、静かな声で語った。

「群れを二手に分けて、こちらがそのうちのどちらかに引っかかったら、すぐに合流してくるとか」

「知能が高いエネミーというのは、確かに厄介だな」

 佐治さんが、吐き捨てるような口調でいった。

「〈スローター〉さん、押されている感じ?」

「今のところ、余裕はあると思う」

 智香子は答えた。

「エネミーが減る速度は、かなり早い。

 包囲したはいいけど、手が着けられないって感じかな」

「まだなにか、妙な作戦を考えているかも知れない」

 黎がいった。

「どっちにしろ、一刻も早く合流する方がいいね」


 さらに数分後、智香子たちは〈スローター〉氏に合流した。

 その場は、一言でいえば修羅場だった。

 孤軍奮闘といえば聞こえはいいが、包囲されているはずの〈スローター〉氏が一方的に直立ネコ型のエネミーを蹂躙しているように見える。

「ああ」

 佐治さんが、呟いた。

「これは、迂闊に近づけないや」

〈スローター〉氏の様子は、壮絶の一言に尽きた。

 周囲の空気が歪んでいる。

 どうも、〈スローター〉氏の体の周辺が、高熱を発しているらしかった。

 迂闊に近づいたエネミーの毛皮が、あっという間に焼けて発火している。

「あれも、なにかのスキルかな?」

 黎が、疑問の声をあげる。

「〈憤怒の防壁〉ですね」

 世良月が、即座に教えてくれた。

「あのスキルは使用者にもダメージが来るので、滅多に使わないはずですが」

「近づくだけで発火するくらいの高熱だからなあ」

 佐治さんが、いった。

「そりゃ、中の人にもダメージくらいはあるだろう」

 その〈憤怒の防壁〉というスキルを継続的に使用しながら、〈スローター〉氏は例の長大な槍を振り回していた。

 その槍は、周囲に青白い火花を纏っている。

 少し前に説明された、〈いらだちの波及〉とかいうスキルも使用しているらしかった。

 高速で〈スローター〉氏の体の周囲を回っている槍、その周辺をかすめただけでも、近くにいたエネミーに電撃があたって感電させる。

 動かなくなったエネミーは、もちろんすぐに〈スローター〉氏の手によってとどめを刺された。

 異名である〈スローター〉そのままの働きを、〈スローター〉氏はこの場で演じていることになる。

 智香子たちはそんな様子を目の当たりにして、内心で気圧されていた。

 これまで〈スローター〉氏は、それなりに手加減してきたのだな、と、そう悟る。

「とりあえず、攻撃しましょう」

 世良月がそういって、自分の〈アトラトル〉を構える。

「師匠ひとりに任せっきりにしていていいはずがありません」

「ごもっとも」

 佐治さんはそういって、自分の武器を構えた。

「わたしらが手伝う必要はないと思うけど、それとこれとは別だよね」

 さっき分けた、エネミーたちが使っていた槍を構えている。

 どうやらこの機会に、使い心地を確認してみるつもりのようだ。

 智香子も無言のまま、手近なエネミーから連続して〈ライトニング・バレット〉のスキルを叩き込んでいく。

 他の松濤女子の子たちも、そのままエネミーの群れに向けて殺到した。



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