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女子中高校生が部活で迷宮に入るだけ。 東京迷宮_2015~  作者: (=`ω´=)
〔二千十六年度、智香子、中等部二年生編〕

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品定め

 迷宮に入ってから六時間を経過した時点で、智香子たちは〈スローター〉氏を休ませることにした。

 その間、智香子の〈察知〉スキルで警戒していれば大きな問題はないように思えたし、それに今回、この場で〈スローター〉氏が果たした役割は大きい。

 その〈スローター〉氏が崩れると、まず間違いなく智香子たち全員の生死にも関わってくる。

 現在、迷宮を出ることができる材料がまるで見当たらないことを考えると、適当なところで休憩して仮眠でも取って貰わないと、現実問題として困るのだった。

 智香子たち六人は小まめに、それこそ二十分から三十分活動したら休憩を取る、くらいの頻度で小休止を取っていたが、〈スローター〉氏はその休憩の間も周囲を警戒していた。

 いくら慣れているとはいっても、そろそろまともに休んで貰わないとこの先が不安になる。

〈スローター〉氏もそのことを理解しているのか、今回は智香子たちの提案を無碍にすることもなかった。

 智香子たちが休憩をするように提案をすると、

「確かにそろそろ頃合いかなあ」

 と短く応じただけでその場に座り込み、持っていたスマホのタイマーをセットしてあっさりと横になる。

「一応、一時間眠ります。

 その前にエネミーが来たら、起こして」

 とだけいい残して、すぐに寝息を立てはじめた。

 ヘルメットも脱がずに寝付いた様子は、なんかシュールにも見えたが。

 まあ、いいか。

 と、智香子は思う。

 わずか一時間だけでも、休んでくれたのならば問題はない。

「チカちゃん」

 そんな智香子に、黎が声をかけてきた。

「この人が休んでいる間、やることがないからさ。

〈察知〉と〈鑑定〉、両方同時に使えるのなら、ドロップしたアイテムの品定めを今のうちにやっておかない?」

「〈察知〉と〈鑑定〉、両方、か」

 智香子は少し考えてから返答する。

「うん。

 多分、問題はないと思う」

〈察知〉と〈鑑定〉。

 どちらも取得している人が多い、基本的なスキルだった。

 特に〈察知〉については、普段から使い慣れていることもあって、特別に集中しなければ使えない、というわけではない。

 多分、両方のスキルを同時に使用しても、問題はないだろう。

 それに。

 と、智香子は考える。

 今は長期戦になりそうな状況だ。

 だとすれば、アイテムを使用して戦力の状況を図れるのならば、それを利用しない手はない。

 これまであまり珍しい、価値がありそうなアイテムは入手していないはずだったが、直立ネコ型エネミーから奪取した武器や道具類の中には、智香子たちにも使える者が混ざっているはずだった。


 六人の中のうち、〈フクロ〉のスキルを持った子たちが智香子の前に収納していたアイテム類を山積みに出して、智香子たちはそれを分類して片っ端から〈鑑定〉していく。

「やっぱ、武器とかから優先的に〈鑑定〉して貰った方がいいかな」

 佐治さんが、そんなことをいいだした。

「カエル型とか直立ネコ型が相手だと、メイスはちょっと重すぎて」

「槍なら、いくつかあるけど」

 いいながら、香椎さんがアイテム類の山の中からいくつかの槍を拾い出す。

「ただ、サイズ的にね。

 ネコ型の体格に合わせているから、リーチ的にはちょっと短めになる」

「今回の場合、それでも十分なような」

 柳瀬さんがそういって、槍のうちの一本を手に取って軽く振ってみる。

「うん。

 軽いし、長さもそこそこ。

 これくらいなら、問題はないかと」

「今回のエネミーを見ると、素早く振り回せる、というのが一番重要かと」

 世良月がそういった。

「あ。

 余った槍があったらこっちにください。

 投げます」

 もともと世良月の持つ〈アトラトル〉は、こうした槍を投げるための武器だった。

 取り回しの関係か、普段はもっと短い、剣だの鉄パイプを使用しているのだが。

「一メートル半くらい、かなあ」

 槍のうちの一本を手に取ってから、黎がそういった。

「ネコ型の身長より、少し短いくらい。

 槍としては短めだけど、槍は使い慣れていないし、これくらいでちょうどいいのか」

「槍といえば、このおにーさんのあのゴツいのは、かなり長いよね」

 佐治さんが横になっている〈スローター〉氏にちらりと視線をくれてから、そういう。

「三メートル、いや、四メートル以上あるんじゃないか、あれ」

「しかも、特殊効果つきなんでしょ、あれ」

 香椎さんが、その後を引き取る。

「どんな効果かは知らないけど」

「攻撃力の追加補正、みたいね」

 智香子が〈鑑定〉スキルで読み取った情報を短く教えた。

「エネミーに向かって進み続ける限り、攻撃力にプラスの補正がかかる、みたいな」

「正面突撃専用の槍かあ」

 黎が、呆れたような口調でそんな感想を述べる。

「微妙に、使い勝手が悪そうだね」

「扱い方見ていると、かなり重そうだしね、あれ」

 佐治さんも、そうつけ加える。

「あのおにーさんでさえあんなに重そうに持っているんだから、おそらくわたしらじゃあ、まともに持つこともできないよ、あれ」

「その上、不意打ちとか絡め手で使うと、補正効果がつかないとか」

 香椎さんは、そう論評する。

「重すぎて、長すぎて、使いどころが限られているって。

 ソロでなければ持て余す武器じゃないかな、あれ」

「乱戦では、あんな長物は気軽に振り回せないよね」

 黎も、そういって頷いた。

「下手するとフレンドリーファイアになっちゃう」



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