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女子中高校生が部活で迷宮に入るだけ。 東京迷宮_2015~  作者: (=`ω´=)
〔二千十五年度、智香子、中等部一年生編〕

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201/358

新年

 年が明け、冬休みが開ける前に、智香子は何度か登校している。

 部活と委員会の用事が半々くらいだったが、実際に登校したのは数えるほどであり、毎日のように登校したわけでもない。

 部活は普通に、これまでの延長で迷宮に入っただけだったが、委員会の仕事は割と多様だった。

 扶桑さんの会社と協働をするにあたって、探索部用のSNSに手を入れることになっているのだが、その作業を担当する外部業者と打ち合わせをしたり、あるいは、例の円盤について、ある企業がもっと大量の実物を欲しいと公社経由で申し入れてきて、委員会が所蔵する円盤を分けたり、公社が用意した探索者を一度〈武器庫〉へと案内したり。

 智香子は〈フラグ〉のスキルを所有しており、迷宮内の一度行ったことがある場所には、一瞬にして移動することができる。

〈武器庫〉に案内した人も〈フラグ〉のスキルを所有していれば、それ以降は案内なしで〈武器庫〉に出入りができるようになるわけで、公社は円盤を回収するためのクエストを公示するつもりのようだった。

 円盤を欲しがっている企業は、原理的な部分の追求には時間がかかると判断して、円盤の実物をそのまま製品に組み込むことを考えているらしい。

 無限の、とはいわないまでも、あの円盤の性質をうまく利用すれば、かなり効率のいい発電機なりなんなりを製造することも可能だそうだ。

 また、こうした特定のアイテムが欲しい場合、公社は探索者に向けてクエストを発注し、優先的に買い取るようにするのが慣例であるらしい。

 そのクエストを受けるかどうかは、各々の探索者自身が判断をするべきことだったが、買い取り値段を高めに設定をすれば目的のアイテムは集めやすくなる。

 中学生の智香子にはあまり関係がない世界であったが、大人たちはそうしてこれまで迷宮とつき合ってきたらしかった。

 もう一方の、SNSに機能を追加する件については、まず先方の企業の人と校内で、顧問の勝呂先生が立ち会いをする中で顔合わせし、それから詳細な打ち合わせがはじまった。

 こちらからはすでに一通りの、必要と思える事項は書面に書き出して提出しているのだが、ユーザーインターフェースの部分などで細かい意見調整は必要であり、場合によっては試作品をまず委員会を中心にした少人数の生徒に使って貰い、そこから意見を貰ってさらに細かい改修を繰り返していくことになる。

 大勢の人間が使用する、それも生徒の個人情報を扱うような機構でもあったため、セキュリティ部分にも最大限の配慮をする必要があった。

 その外部企業の人たちは辛抱強く智香子から要望や意見を引き出して、いくつかの提案をしてくれた。

 そうした智香子の発言は、素人ゆえに曖昧な部分も多かったが、相手もそうした場面に慣れているのか、そうした曖昧な部分を丁寧に訊き返して、細かい部分を決めていく。

 そうした校外の人たちと協働して動く時、智香子一人が立ち会うということはまずなく、黎や佐治さん、香椎さんや、委員会の先輩方の誰かが常に同行してくれた。

 智香子個人のことを心配して、というよりも、一人に任せて間違いを防止するための配慮だったと思うのだが、他の生徒たちが同行してくれることで、智香子自身は安心してそうした大人たちと対面することができた。

 そうして外部の大人たちと交渉をしている時、智香子はときおり、

「自分はなにをしているんだろうか?」

 と不思議に思うことがある。

 入学する前は、まさか在学中に、校外の大人たちとこうした交渉を行うとは夢にも予想していない。

 普通の中学一年生は、こんなことはしない。

 と、思う。

「まあ、巡り合わせなんだろうな」

 智香子はこのことについて、そう思うことにしていた。



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