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女子中高校生が部活で迷宮に入るだけ。 東京迷宮_2015~  作者: (=`ω´=)
〔二千十五年度、智香子、中等部一年生編〕
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 結論からいうと、なんとかなった。

 昨日の半分、十名くらいの人数で、バッタの間を全滅することができたのである。

 しかも、昨日の半分以下の時間で。

「全員がちょっとずつ強くなっているって、実感できたでしょ」

 智香子たちをバッタの間まで連れて行ってくれた引率役の先輩は、ドロップ・アイテムの回収までが終わってから、そんな風に声をかけてくれる。

「一度休憩して、午後からまた同じことをやるから。

 その間にお昼とか済ませておくように」

 ゲートを潜ってロビー出てから、引率役の先輩は智香子たち一年生にそう告げる。

 しかし、一年生はなにも答えなかった。

 ほとんどの一年生は疲労困憊で、返答をする余裕すらなかったのである。

 ほんの少し、昨日よりは余裕があるかな。

 そう思っていた智香子自身でさえ、肩で息をしていた。

 大勢の一年生が、ロビーの床に身を投げ出してへたっている。

 肉体的な疲労もさることながら、全周囲を自分に敵意を持った存在に取り囲まれる、という経験は、精神的にかなりきつい。

 エネミーとはその名の通り、例外なく人間を敵視するところからついた名だった。

 迷宮内で動く人間以外のものは、すべてこのエネミーということになる。

 あの巨大バッタとて、例外ではなかった。

 彼らの敵意をなくす方法は、彼ら自身を倒すしかない。

 あのバッタの間の中に入れば、いやでもそのことが実感できた。

 つまり、バッタを全滅させるまで、智香子たちは気が抜けないわけだ。

 たとえ単体ではたいした攻撃力も持たないバッタといえども、その数が数であるから、そりゃあもう盛大に疲れる。

 あー。

 休憩かあ。

 と、智香子は思った。

 お昼、食べなければなあ。

 そう思って母親から持たされたスマホを取り出して、時刻を確認する。

 まだ、午前十時前だった。

 本当に、短い時間で倒すことができるようになっているんだな。

 ここではじめて、智香子は先ほど先輩がいっていた内容を実感する。

 あともう一度、午後にさっきと同じことをやることになっていた。

 その前に、どこかで休まないと。

 のろのろとそう考え、智香子は校舎の方向に歩き出す。

「やあ」

 すると、別のグループとして迷宮に入っていた黎が、智香子に声をかけてきた。

「いっしょにお昼食べない」

「いいけど」

 智香子は、疲れた声で返す。

「でも、正直、食欲はないかな。

 それよりも、どこかで横になりたい」

 他の一年生のように、その場で床にへたってこそいなかったが、智香子もかなり疲れている。

 自分の体が、ひどく重い。

「では、少し寝てから食べようか。

 集合時間まで、まだ全然余裕あるし」

 黎は、智香子に合わせてくれたのか、そんなことをいってくれる。

「校内に入って、どこか空いている教室で仮眠しよう」

 できた子だなあ、と、智香子は黎について、そう思った。



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