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女子中高校生が部活で迷宮に入るだけ。 東京迷宮_2015~  作者: (=`ω´=)
〔二千十五年度、智香子、中等部一年生編〕
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気質

「ピーキー過ぎるんだよね、スペック的に」

 そのメイスについて、黎がいった。

「検索してみたら、過去にも同じメイスがドロップして、だいたいはどこかの研究所に持ち込まれているそうだけど。

 あの大きさであの重さ、って、こちらの物理法則から逸脱している、少なくとも未知の物質であるってことで。

 でも、その手の研究も、あんまり進んでいないみたい」

 構成素材、つまりなにでできているのかわからないアイテムがドロップする。

 その研究を開始しても、何年も、何十年も進展がない。

 どちらも、アイテム・ドロップにはありがちなことだった。

 そうした未知の物質と格闘することで、この国の素材関連の研究は他国よりも数十年先行しているといわれているのだが、智香子たち中学生にはそうした事情はあまり関係がない。

「あのメイスを実戦で使おうとしているのは、ひょっとすると冬馬さんがはじめてなんじゃ?」

 香椎さんも、そんなことをいう。

「当たった時の攻撃力はともかく、実用にするには癖が強すぎるし」

「でも、冬馬さんなら使いこなせるんじゃないかなあ」

 佐治さんがいった。

「そのうち、誰も思いつかないような使い方をするような気もするし」

「するね、多分」

 香椎さんが、即座にその意見に賛同する。

「きっと、そのうち」

「そうかなあ」

 智香子は首を傾げる。

「そんなに変なことは、していないつもりだけど」

「智香子の場合」

 黎が指摘をした。

「とことん理屈で考えて、その結果、誰も思いつかなかったようなことを平然とやっちゃう傾向があるから。

 この間の〈バッタの間〉とかさ」

「既成概念を無視して、理屈詰めで考えて、あさっての方向に着地するというか」

 香椎さんが、黎の意見に賛同した。

「冬馬さん、自分で自覚しているよりもずっと理屈っぽいし」

「そ、そう?」

 三人の反応に、智香子の方が及び腰になってしまう。

「そんなことも、ないと思うけど」

「いやいや、冬馬さんはそれでいいんだよ」

 佐治さんが、そういって智香子の肩を軽く叩く。

「そのおかげで、誰も思いつかないようなことをしでかしているわけだし」

 さてそれは、素直に褒め言葉として受け取っていいものかどうか。

 智香子はかなり微妙な気分になった。

「むしろ、そういう誰も思いつかないことを考えて実行する人のが、探索者には向いていると思うなあ」

 四人の会話をそばで聞いていた羽鳥さんが、口を挟んでくる。

「探索者って基本、保守的な方向に行きがちだから。

 先に成功例があるんなら、それに倣う方が安全だし、結局みんな同じような手順を繰り返しているだけになりがち、っていうか。

 ただそれだと、新しいスキルの習得条件とか、永遠にわからないままなんだよね」

「みんな命懸けで迷宮に入っているんだから、前例を参考にするのはむしろ当然なのでは?」

 智香子は、そう返す。

「安全にできる方法が前もってわかっているんなら、みんなそれを真似すると思いますけど」

「でもチカちゃん、それ、してないでしょ」

 黎が即座にそう、指摘をする。

「扶桑さんの会社に渡りをつけたこととか、委員会の件なんかもそう。

 おかしいって疑問に感じたことは、すぐに改善案を自分で考えて試そうとする。

 それは別に、悪い傾向ではないと思う」

「リスキーな部分も否定できないんだけどね」

 香椎さんが、そう補足をした。

「なにぶん、誰もやったことがないことを自分の手でやるわけだから」

「だけどまあ、そういうのはわたしらでもフォローできるわけだから」

 佐治さんが、そういった。

「あくまで、できる範囲は限られているにせよ」

 自分はかなり仲間に恵まれているのではないか。

 この時の智香子は、そう実感した。


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