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彼女たちの方法
「いいかよく聞け新入生」
引率役の上級生が告げた。
「これから迷宮第七階層、目の前にある通称〈バッタの間〉に入るわけだが、やることはただひとつ。
手足武器、とにかく使える物はすべてぶん回して片っ端から中にいるバッタを倒せ。
倒せば倒しただけそれは、お前たちの力に、経験値になる」
毎春松濤女子学園で初めて迷宮に入る者たちが経験する、一種の通過儀礼だった。
そういわれる側は、ようやく迷宮に入ることが許される十二歳を超えたばかりの少女たち。
ついこの間まで小学生でしかなかった彼女たちは、戸惑った様子で顔を見合わせる。
「あの」
おずおず、といった感じで、新入生の一人が片手をあげて発言した。
「コツと注意事項とか、そういうのは……」
「ない」
引率役の上級生は、その新入生に最後までいわせずにそう言い切った。
「あったとしても、教えない。
知識よりも先に経験してみろというのが、松濤のやり方だからだ。
その方が手っ取り早い」
松濤女子学園の方法論。
それは、理論よりも実践、いや、実戦優先の、かなりスパルタな物だった。