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05 仲間(4)

 本題に戻り、お城の秘密を探る。


 オークの死体、ゴブリンの死体を近くの割れた窓から外へ放り投げ、外で待機していたカイルとイースに近くの砂場に埋めてもらった。素材として売れれば多少の価値となるものを身ぐるみをはぎとり、一部の生肉や食料などを得る。


 オークやゴブリンは人間とは違う種族。肌の色も輪郭も体付きも全く異なる。言葉も通じないし、一方的な攻撃を仕掛ける野蛮人でもある。そんな部族を価値観を見出している人も少なからずいる。


 それが錬金術や占いなどといった職業だ。彼らは地道で素材など入手できない。買うか人から物を要求・交換するしか得られない。その人たちのために冒険者たちは素材を得て、その人たちに売るのだ。


 売った分、きちんとお金にしてくれる。約束事を守ってくれる。少なくからず自分たちがあってきた人たちはそうだった。なかには、殺してでも奪うものや無理な請求や要求してくる連中もいる。クラスメイトにも被害があったパーティがいた。


 ギルドも注意喚起しているけれど、人相も名前も不明のままなのが現状だ。


「イース、そろそろいいか?」


 イースに尋ねる。

 砂場に埋めた亡骸に手を合わせる良心深いイースがすんともこないからだ。街に待っているカイルたちにこれ以上の迷惑を掛けられない。イースに少し不憫な面もあるが、ここは先に探索することが優先だということを自分に言いつける。


「うん、ごめん」


 イースが立ち上がり、割れた窓から入り、自分たちの後を追う。


 ゴブリンとオークの乱戦の後なのかカイルとシエルが少し疲労しているようにも見える。けどそこを指摘することができない。頼みのポーションはパーティ合わせても数えるほどの数はないし、魔力を回復するポーションも手持ちしかない。


 二人ともつかれている。けれどポーションもマナポーション(魔力を回復する薬品)どちらも高く自分たちのようなまだ新人ではギルドから支給される数だけせいっぱいだ。


 それもあって、二人とも「ポーションくれ」と言えないのだ。自分も言おうとしたが二人が固くなりに断ることもあって、これ以上言えないこともあった。そのためか、今回も言えなかった。


 「ポーションいる」っていえばいいのに。


「ついたぞ」


 シエルの言葉で自分は足を止める。目の前に大きな扉がある。大人一人は入れる大きさの扉だ。子供なら余裕の高さ。その扉は見てきたものの中でも立派に見えた。


 通ってきた扉には蜘蛛の巣があったり壊れてしまっていたり開かないものもあった。中には強引にこじ開けられたものからスプレーのようなもので落書きされていたものまであった。


 けど、この扉だけは違う。他の扉よりも綺麗だった。


 つい最近まで誰かが拭いたような埃ひとつついていない。しかも扉には誰かが使った形跡があった。シエルが言ったのだ。


「――埃が積もっていない」


 床に指をさす。


 埃で床一面積もっている床。オークやゴブリンの侵入、自分たちと似たパーティの侵入の足跡。白い綿上のものが床を埋めているのだが、この扉の前だけないのだ。埃という白い綿上の道がなにひとつもないのだ。


「これって…誰かが使った?」


「いや、つい最近まで使っていたんだろう ほら」


 扉をゆっくりと開く。シエルが取っ手に手をかけゆっくりと開けたその先には蝋燭が幾多もつけ、外とはまるで違う別世界を映していた。


 煉瓦上の壁があなぐらのように囲む部屋。窓はひとつもなく。代わりに蝋燭の灯りが無数についている。しかも天井も床も壁にも。手に触れない歩けないほどに埋め尽くされていた。


「な、なんだよこれ」


 思わず唾を飲み込む。


 歩きまわれないほどに埋め尽くされた蝋燭のなか、ここの主はいったいなにを求めてこう作ったのか自分はここの気持ちをどう受け止めるのか。


「やれやれ見られてしまったかな」


 不意に誰かの声が背後からした。


 後ろを振り返ると男がたっていた。男という身なりではないのだが男のような声だ。姿は人間ではない。別の生き物だった。


「うひゃぁ」


 イースが小さな悲鳴を上げる。


 蝋燭の光で姿が見えていくなり、自分たちはもう一回唾を飲み込んだ。


 見ていくその姿は――首がない甲冑を着た生物だった。肝心の声を出している部分はその甲冑が片手で持っている首が目を開け喋っていた。


「…デュラ…ハン?」


 シエルが言った。


 デュラハン。首無し騎士。元は女騎士が由来だとか。どういう状況でそうなったのかは自分たちの頭の範囲では理解できないが、どういう状況でそうなったのかも聞けなかった。


「いまは私をそう呼ぶのか?」


 デュラ・ハンと聞かれたのか?


「いえ、一般的な名称からそう言っただけです。勝手ながら城に侵入してしまったことを詫びますが、貴方はここの主なのでしょうか?」


 冷静ながらシエルが仕切るかのように(自分が言いたいことよりも先に)尋ねる。


「左様。そうか、おぬし等が侵入したのか…本来なら、地下牢か身ぐるみ剥いでれて行ってもらうか――」


 再度つばを飲み込んだ。城の主がいたとは正直驚いたが、このまま帰してくれるわけじゃないのはわかっていた。ここは戦った方がいいか…シエルやカイルたちに目を配る。


「――しかし、こうして話ができるのは久しぶりかもしれん」


 デュラハンが何か迷っている様子。顎に手を当てながらなにかを考えているようだ。


「お前たち時間はあるのか?」


「はい、あります」


 シエルが先に答えた。


「なら、少しだけでいい。わしの話を聞いていってもらえるかな?」


 まさかの提案に乗った。このまま帰りますと言ったら、どうなるのかわからない。デュラハンに対しての対策がまだ自分たちにはない。このまま戦っても相手が手負いならまだましも…いや、どのみち死ぬ可能性が高い相手だ。


 話しを聞いてくれるかと言われるのなら、まだ得策ともいえる。話しを聞くだけ聞いて、この場を収めればいい。自分たちの任務はこの城の秘密を暴くことだけだ。財宝も財産も土地も興味がない。話だけで済むのなら、何時間だって聞いてやれる。


 自分はシエルたちを見つめ、頷く。


「わかりました。俺達で良ければ話しを聞きます」


「左様か。では、わしの部屋でお話しをしようか」


 デュラハンの後追って、一言も話さず目的地へ向かった。


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