涙の雫
今、私は仰向けになって天井を見ている。
目の両側からは涙が流れて、髪を濡らし耳の窪みにたまって、また流れる。
三ヶ月に一回はこんな日が来る。
依然、彼に言われた事を思い出し、また傷ついて少し嫌いになりかけたのに嫌いになれなくて、自分が大嫌いになる。
こんな時だからこそ、私は自分に問い掛ける。
彼は、今まで私に何をしてくれた?
最後まで、黙って私の話を聞いてくれた?
落ち込んでる時、慰めてくれた?
優しい言葉を掛けてくれた?
良いアドバイスをしてくれた?
私が泣いてしまった時、抱き締めてくれた?
誕生日に「おめでとう」って言ってくれた?
将来を約束してくれた?
「愛してる」って言ってくれた?
ないよね?
一度だってないよね?
言ってほしいことは言わないで、聞きたくないことばかりを言っていたよね?
あんな彼のどこが良いの?
どこが好きなの?
何もしてくれなくても好きなの?
愛してくれなくても愛しているの?
いつまでそうしてるの?
分からない。
自分のことなのに分からない。
私は、どうすれば良いのか分からない。
ただ、言うべきことだけは分かってる。
いつか、言わなければいけない言葉は分かってる。
分かってるけど、言えないだけ。
私は自分勝手で臆病だからね。
私の中で、彼の存在が消えたことを想像するだけで、悲しくて、辛くて、虚しくて、喉が痛くなって、胸が苦しくなる。
言いたいことは山ほどあるのに、いつも心の中で呟くだけ。
例えば、
お宅の使い古しのソファーなんて、私が要るわけないでしょう!
給料減ったら、また小遣い減らされたって言われても、借金はチャラに出来ないよ!
十数年、朝食は前日に作った具の無いおにぎり二個って知っているけど、私には何も出来ないよ!
五月に「今月って誕生日だっけ?」って聞かれて、「誰の?」としか言えなかったよ!
思い出したら、何だか悲しさを通り越して、段々腹が立ってきた。
いい加減、私の誕生日くらい覚えろ!
いくら覚えてないからって、その日の予定を嬉しそうに報告しないでよ!
そして、今年こそはメールしてよ。
ちゃんと私の誕生日にね。
「おめでとう」だけでいいからさ。
そしたら、今までの冷たい態度、全部許してあげる。
また、楽しい話で笑わせてあげる。
そして、望み通りにしてあげる。
いつまでも、離れたままで居てあげる。
約束するよ。
この涙の雫に賭けて……。