赤い糸
私の小指に繋がれた赤い糸
もし自分の目で見えるなら
そっとそっと手繰り寄せて
誰に繋がってるか確かめてみたい
「この指とこの指は繋がっていると思う?」
貴方の掌に私の掌を重ねながら言ってみた
「俺の小指の赤い糸は…
とっくに千切れて無くなってるよ」
思いもよらない貴方の返事に
私は戸惑い言葉を失った
だってあんまりだよ
月末になるたび借金の依頼をするくせに
借りたお金でビールを買っていたくせに
私を喜ばせる事さえ言えないなんて
何度がっかりさせれば気が済むの
貴方の言ったことが本当ならば
千切れた糸は誰に繋がっていたのかな
かつて貴方が傷つくほど愛した人を
思い出して言っているのかな
裏切られても許してしまう程愛した人を
運命の人と信じていたのかな
もしかして
今でもそう思っているのかな
もしそうならば
これから私はどうしよう
どこまで貴方に付き合おう
どこまで貴方を甘やかそう
この前お財布を覗いたら
千円札が三枚になっていて
仕方ないから三千円だけ寄付してあげた
だって
「暑くて毎日ビールを飲んだからね
いざとなったら昼食抜くから大丈夫」
笑いながらそんな事を言うんだもん
「ビールくらいは買ってもらいなよ」
そう言いながらも
何だか可愛そうになっちゃったんだよね
その代わり
貴方の気持ちをメールしてって言ったの
面倒なら五文字だけでもいいんだよ
そう付け加えてね
送信されてきたのは
「ありがとう」
でもさ……
そんな言葉を待ってる筈ないじゃない
分かってるくせに言ってくれないのは
私の小指の赤い糸が
貴方に繋がっていないから
私の小指の赤い糸も
千切れて無くなっていないかな
せめて……
千切れて無くなっていればいいのにね