手作りケーキ
私は今
昨夜の貴方を思い出してる
少し遅れた私の顔と
15分過ぎた時計を交互に見て
不満げに溜息をつき
「これからの待ち合わせは、君だけ30分早く設定しようか」
『何よー、いきなりケーキなんかリクエストしてくるからじゃない!』
お互い自分も悪いと気付いているから
攻め合うのはここで終わり
それよりも
『あっ、ケーキ横にしちゃった!』
「ウソだろ?」
こっちの方が重大ミス
『本当……ショック』
「まぁ、腹に入れば一緒だし」
『折角キレイに飾り付けしてきたのになぁ……』
「その為に遅刻したのになぁ?」
私にとって不利な状況
そんな時は
さり気なく話題を変える
「今日は蒸し暑かったよね?」
「あれ?話をすり替えてきたね?」
『雨も降らなきゃ困るけど、やっぱり晴天が一番だよね?』
「いや、雲も必要だろう…なーんてわざと話に乗ってやるよ」
そんな言葉を無視しながら
崩れてない部分を取り分けて
『どうぞ〜』
フォークと愛想笑いを付けて差し出す
美味い美味いと言わんばかりに
頷きながら食べる姿は
ちょっとだけ母性本能を擽る
この笑顔を作り出したくて
私は手作りケーキに拘る
でも
ちょっと待って!
いくらカロリー控えめでも
そんなに食べたら……
「さぁて、カロリー消費に運動するか!」
やっぱりね
『手作りケーキのお礼ですか?』
貴方は黙って笑い
そっと口づけをした
「甘くない?」
『今日のはお砂糖入れ過ぎた?』
貴方は僅かに首を横に振り
耳元で囁いた
「入れ過ぎた物は違うだろ?」
私は返事の代わりに
貴方の首に腕をまわした