友達
昔から思ってた。
『友達』って、便利な言葉だなぁって。
だって、本当はお互いにどう思っているか分からない相手でも、
「友達になってくれる?」
と言われると、自分を気に入ってくれたと分かるし、
「勿論、いいよ。」
なんて返事をされると、少なくとも嫌われてないんだって分かる。
友達って言葉を使っただけで、急に近くなって仲良くもなれる。
でも、異性だと逆になったりする。
急に少しだけ、確実に遠くなる気がするんだ。
「友達になってくれる?」
敢えて言葉にして、それ以上はならないよね?という確認をしてみて、
「勿論、いいよ。」
それ以上なんてあるわけ無いよ!という答え。
そんな裏の会話が成り立っている。
『友達』という二文字だけで恋愛の扉は塞がれる。
それに比べて『尊敬』はちょっと違う。
女性の『尊敬』は恋の一歩手前だから。
まるで、恋の池の崖っぷちに立っているようなもの。
ここから落ちると深みに填まるんだ。
初恋がまさにそうだった。
同級生なのに、その優しさと大人のような強さに尊敬してしまった。
この『尊敬』の魔法には十年以上掛けられたっけ。
臆病な私は、そっと恋池の中を覗くだけで、すぐ後退りした。
そして『友達』という命綱を体中に括り付けて同じ教室に隠れた。
例え、同じ教室に彼女ができても、隣の教室に彼女が出来ても、常に4〜5メートルの所で見ていられた。
それが『友達』の特権。
私は今、なぜかその時の心境を思い出す。
手の届かない人を『尊敬』し、『友達』という看板をぶら下げて、少し離れたところから静かに見守りたい。
その人の成功を……。