僕の大事な大事な友達
僕が何の変哲もない町で生まれ育った。友達だって普通に居たし、勉強もそこそこ出来る方だ。
今日は仲の良い友達四人で遊ぶ事になった。
友達は小学校、中学校ともにずっとクラスが一緒の大親友で、怒られる時も褒められる時もいつも四人一緒だった。
僕以外の三人は家が近い、僕は少し離れているけれど、それでも何時でだって遊んでいられた。
だって、ずーっと一緒だから、親も仲が良くなったみたいで、いつも四人一緒だった。
いつもの待ち合わせ場所で、僕達四人は揃った。
揃って、いつになく爽やかな笑顔を振りまき、さっぱりとした表情で、三人は遊んだ。
サッカーで遊んだり、公園の遊具を使って無邪気に遊んだ。
帰る頃には、一人になってしまう。
ああ、寂しいなぁ。
もう一度、四人で遊びたいなぁ。サッカーしたり、公園の遊具で遊んだりしたいなぁ。
もう、会えないしな。
三人は今、どうしてるのかな。
僕抜きで、何して遊んでいるのかなぁ。僕も、混ざって良いかな。
いつも通りの朝を迎えた。
何の変哲もない町に僕は生まれ育った。
大好きなお母さん、大好きなお父さん。そして大事な僕の友達。
皆大好きだから、全部、僕の物にしちゃった。
僕はいつも通り、目を覚ました。
ベッドから降りて、目覚まし時計を止めて、リビングへ行き、自分で朝ご飯を用意する。
僕はふと、違和感を覚えた。
何の音も聞こえない。深海のような、音のない世界に来ているみたいだ。
そう思ったけれど、自分じゃあどうしようもする事が出来ない。諦めて、珈琲とパンを持ち、テーブルにつく。
「いただきます。」
合掌し、パンにかぶりつく。また違和感を覚えた。
音がない。
サクッとした、あのいい音が無い。
ーーおかしい。
また一口、また一口と食べ進め、漸くパンを一枚食べ終える。珈琲の入るマグカップに口を付け、啜る。
が、また音が無い。
僕は気味の悪さを感じた。
薄気味悪いーーまさにその状況、一体どういうことなのか。
今日は学校が休みだ。部活にも入っていない、だから、今まさに遊び放題なのだ。
珈琲を飲み終え、自室へと向かい、愛用の携帯を手にリビングへと戻った。
あれ、そう言えばお母さんってどこにいたっけ。そう言えば、お父さんって仕事だったっけ。
あれ、そう言えば、外ってこんなに静かだっけ?
窓の外を見ると、辺り一面が草の生い茂る草原だった。色とりどりの花が咲き誇り、まるで僕を歓迎してくれているようだった。
こんな場所あったっけ?
しかも普通、家の外は住宅地だったはずだ。どうして?
僕は考えを一度中断し、外へ出た。
外へ出て、草を踏み締めればするほどだんだん心が穏やかになってくるのが分かった。
ーーあー、何か気持ちがいいなぁ。
川が見えた。
透き通る、浅い川だ。すると向こう岸から人が手を振ってる。僕のおばあちゃん、おじいちゃんにあたる人だ。
会った事は無い。
「おいで、おいで。こっちだよう」
「さあさあ、来なさい。来なさい。こっちへおいでー」
呼んでる、行かなきゃ。
浅い川を飛び越えて、人の以内場所でハグをした。自分の腕しか、感触はなかった。いや、それよりも何かがおかしい。
そう思い、ばっと後ろを振り向くと・・・・・・。
〈今日未明、✕✕県✕✕市にある✕✕区に住む✕✕さん一家が無惨な状態で発見されました。これは、とてもショッキングな状況でーー〉
誰も居ないはずのリビングで、勝手にテレビが起動した。
起動したと思ったら、そんなニュースが流れていた。
ーー一家惨殺事件。
・・・・・・ああ、可哀想に。僕も付いていくよ、君はとっても大事な友達だからね。お母さんも、勿論お父さんも大切だ。けれど、何よりも大事で大切な人は、僕の、否、僕ら三人の友達のあの子。
今、三人で迎えに行くね。