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戦線復帰

ご無沙汰してます。死んではいません。

今回は2連投の予定。二話目は近日中にアップします。

アクセルを踏むと震電が加速した。左右に機体を振ったが違和感はない。

飛行感覚は前と全く変わらない。細工をするようなタイプではないとは思っていたが、ここまできちんと直してくれるとは。

待たされただけはあるのか。いずれにせよ、これならいける。


そして、遠目にも戦闘が起きているのが見えてきた。

黒く立ち上る煙は被弾した飛行船だろうか。飛行船の搭載砲らしき大砲の砲煙が断続的に閃く。白く光るのはカノンだな。

飛行船が砲撃戦に参加している時点で距離を詰められている。戦況は不利っぽい。


アクセルをそのまま強く踏んで震電のスピードを上げる。

いつもの風切り音がコクピットに聞こえてきて、キャノピー越しに見える戦場が一機に近くなってくる。

飛び回る銀色のレナスとフレイヤ、そしてエストリンの射手ストリエロークとステルス機。


一機がこっちに気付いた、がもう遅い。

ラインを交差させてブレードで切りつける。グリップに手ごたえが伝わってきた。


「ディートレアと震電、助太刀する!」


といっても返事が返ってこなかった。コミュニケーターはつながっていないのか、よく考えればそりゃ当たり前か。

こっちに気付いていない一機の背を追う。震電の方が優速だ。射手ストリエロークの背中が一気に近づいてきた。


「背中が甘いぜ!」


追い抜きながらブレード一閃。ウイングが真っ二つになった。射手ストリエロークがバランスを崩して失速するのを視界の端で見届けて震電を急上昇させる。

上空で宙返りして戦場の空域を見下ろした。

サラのヴァナルカンドの姿が見えた。どうやら無事に逃げ切れたらしいな。


ただ、戦況は不利なのは一目瞭然だった。

防衛ラインとして使っていただあろう飛行船の半数は煙を気嚢から吹き上げている。

あの白の亡霊ヴァイスガイストの兄弟機、宝玉の騎士ドラゴツェン・シャーリークとやらの姿は見えないが、ステルス機は何機も見える。


急降下して、すれ違いざまに一騎にブレードをたたきつけた。

コミュニケーターが通じなくても俺と震電のことは知ってるやつも多いはず。

レナスやフレイアの動きが変わった。射手ストリエロークの側の動きも。多分、バートラムかサラが俺のことを教えたんだろう、コミュニケーターからは聞こえないが。


これで形勢は少しは変わるといいが……

そう思っているところで、一騎がこっちの軌道に絡むように飛んできた。


---


近づいてくるそれは、遠目に見ても明らかに他の騎士とは違っていた。

少し小柄でずんぐりした左右の腕の装甲の、手首と言うか手の甲あたりから爪のようにブレードが伸びている。なんというか、カニを思わせる形だ。

この世界だとオーソドックスな人型の騎士が普通だが、異形のデザインだ。


何より目立つのは、黒で黄色のまだら文様のように塗られた独特の装甲板。後ろには尻尾のような飾り布をはためかせている

明らかに正規軍のものじゃない。


不意に耳元から甲高い金属音がした、前も聞いた。コミュニケーターへの割り込み音。


「うるせぇ!」


『賞金首じゃないかぁ!首置いてきなよ』


声と同時にそいつが一気に距離を詰めて来た。キャノピー越しに見える機影が一気に大きくなる。

とっさに振り上げたエーテルブレードとそいつのブレードが交錯して光を放つ。


「邪魔だ、この野郎!」


『遊んできなよ、ディートレア』


「何モンだ、エストリンの連中じゃないな。名乗れ!」


返事代わりと言わんばかりに位置を入れ替えてブレードを振るが、一瞬でそいつが離れた。ブレードが空を切る。

速い。加速性能なら震電より上か?


『黒歯車結社の賞金稼ぎ、宵猫アーヴェント・ミーツェとミオちゃんだよ!』


「黒歯車結社?」


「おっとォ、これは言っちゃだめだったかにゃ。でもここで死ぬからいいよねぇ」


わずかな間をおいて、姿勢を入れ替えたそいつがまた一瞬で距離を詰めて来た。左手のブレードを振りかぶってくる。

こっちのブレードで受け止めようとしたが……予想していたエーテルのぶつかり合う手ごたえが来なかった。

代わりに耳を劈く音がして震電がグラりと傾ぐ。


「なんだ?」


目の前に金属片が飛ぶ……震電の腕の装甲の一部か。なぜ止まらなかった?


『浅かったかにゃ!でもまだまだぁ!』


目の前に宵猫アーヴェント・ミーツェとやらは見えない。切り抜けられたか。左右のペダルを操作して震電をスピンターンさせる。

こっちを向いている宵猫アーヴェント・ミーツェを視界にとらえた。本来なら掌がある場所に砲口のような空洞が開いている。

やばい。


『死んじゃえぇ!!』


とっさに左足をひねる。

空気を震わす鈍い音と白い砲煙。震電が何かに弾かれたようにバランスを崩した。絶叫マシンのように機体が回って天地が入れ替わる。


「くそったれが!」


4回転したところで震電が制御を取り戻した。ウイングに損傷はない。助かった。

宵猫アーヴェント・ミーツェがこっちに突っ込んでくるが。


「あっちに行きやがれ!」


右手のショットガントリガーを引く。白いエーテルの散弾が飛び、同時に宵猫アーヴェント・ミーツェが右に消えた。

やはり早い。短距離の瞬間加速性能に特化したタイプか。


一度距離をとって被害を確認する。左手が掌の真ん中から切断されていて指が無くなっている。これは最初の一撃のやつか。

そして、タックルに備えて強化した左の肩装甲も引き裂いたような傷だらけになっていた。骨組みと内部構造が覗いていて、機体内を循環しているエーテル伝導体の滴が飛び散っている。


「テメェ、なんてことしやがる!」


修理したてなのに早速傷モノにしやがって。

わずかに残った装甲の表面に楔の様な刃物が突き刺さっていた。単発の実態弾じゃなく、ナイフのような刃物を散弾銃のように撃ってきたのか

また妙な武装を搭載した騎士だ。一体だれが作ってるんだ。


『おとなしく死んじゃってよぉ!』


距離を詰めて来た宵猫アーヴェント・ミーツェがまた加速する。

絶対的なスピードなら震電の方が速そうだが、瞬間的な加速性能はあっちが上だ。やるな。

だが


「なめんじゃねぇぞ、この野郎」


それならそれでやりようはある。

トリガーを引くと、操作に応えてチャージウイングが展開した。実態弾相手には盾としては使えないが、加速の補助をしてくれるだけで今は十分。


この妙な機体は恐らく震電以上の完全な近接用だ。なら一度距離をとる。

視界が白い光に包まれる。アクセルを床まで踏み込んだ。

押しつぶされるようなGが掛かって震電がもう一段階加速する。雲海から薄雲の層を突き抜けて震電が急上昇した。


『まだ速くなるぅ?』


スピードに乗ったまま震電を宙返りさせる。

白いエーテルの羽根越しに宵猫アーヴェント・ミーツェが小さく見える。十分に距離がとれた。


「避けてみな!」


震電を真下に向けてアクセルを踏む。

瞬間加速性能で負けてるなら、一撃離脱で勝負する。相手の土俵には乗らないのは勝負の鉄則。

左右に切り返しつつ、スピードを落とさずに突っ込む。 


『ぶつける気ィ?」


「お前と心中なんてするか!」


チャージウイングのトリガーを戻す。視界が空の青さに戻った。

宵猫アーヴェント・ミーツェが近づいてキャノピー越しの姿が一気に大きくなる。


迎え撃つかのようにブレードを構える宵猫アーヴェント・ミーツェを避けるように、スピードに乗せたまま震電を左にスライドさせた。

このスピードだとブレードでの斬撃は厳しい。すれ違いざま、黒と黄色の装甲板に擦りつけるように左右のショットガンのトリガーを引く。

至近距離で着弾した光がフラッシュのように閃いて視界を白く染めた。


『ぎゃぁ!』


アクセルを緩めないまま雲海間近まで一気に駆け下りてブレーキを踏んだ。

制動が掛かってシートから飛び出しそうになった体にベルトが食い込む。放出されたエーテルがうねるような凹凸を浮かべる雲海の雲を高く吹き上げた。


見上げると、錐もみのように飛んだ黒い機影がバランスを取り戻していた。

あわよくば戦闘不能、と思ったが。さすがにあのスピードで交錯するときに正確に狙い撃ちは難しい。死んではいないか。

だが腕やウイング、胴から煙が上がっているのが見える。それなりにダメージはあるな。


---


『すぐに反撃してくるなんて、やるじゃないかぁ……さすが賞金高いだけあるにゃ」


大人しくくたばってくれていればいいものを。

コミュニケーターから聞こえてくる声にはまだ闘志が感じられる。面倒なことだが。

左手の武装は切られたダメージがあるのか挙動が少し怪しいし、右はショットガンの撃ち過ぎであと何度撃てるか不安を感じる。長期戦は避けたい。


「まだやる気か?」


『もっちろんだよぉ。アンタを落とせば賞金ザクザク。しかもこの状況ならきっと特別なご褒美もつくよぉ」


周りを見ると、フローレンスの騎士団はどうにか押し返しつつあるが、数で負けていることには変わりはない。

確かに自分で言うのもなんだが、この状況で俺が落とされれば戦況は一瞬で反転するだろう。


『じゃあ続きをやろうか、ディートレア、アタシの宵猫アーヴェント・ミーツェの強さはこんなもんじゃ』


やるしかないかと思ったが、不意に宵猫アーヴェント・ミーツェの動きが乱れた。

突っ込んでくる動作が止まってくるりと円を描くように旋回する。


『えー、なんでだよぉ、これからが楽しい皆殺しタイムじゃんかぁ』


何が起きたのかと思ったが、不意に脈絡のない言葉が飛び込んできた。

何を独り言を言ってるのかと思ったが、エストリンの指揮官と話しているのか。誰と話しているのか分からんが。

あいつがは話している相手にはコミュニケーターがつながっていないから分からない


『わかった、わかった、わかったよ。もう、つまんないなぁ。ディートレア、次はその首置いてってね』


その黒い騎士とエストリンの射手たちが方向転換して空の向こうに飛んで行った。退却か。


追うべきかと思ったが。

サラのヴァナルカンドが並走して軽く手を上げると、くるりと機種を巡らして戻って行った。

追う必要はない、と言うか、こちらも撤退ってことだな。




今回登場のミオもサラと同じく、楽しんでます様のアイディアをアレンジした騎士の乗り手です。

引き続き、敵味方の騎士の乗り手やそれ以外のキャラのアイディア募集中です。

お時間ある方は是非どうぞ。お待ちしています


---


募集要項再掲。


今後のストーリーの展開上、敵味方に騎士の乗り手が登場します。その乗り手のキャラ設定を募集したいと思います。

……キャラ設定を考えるのが面倒、というわけではありません、ええ。

ただ、自分一人で考えたキャラはある程度幅が狭まってしまいますし、もともとTRPG畑出身なのでこういうのをしてみたかったというのもあったり。


ということで、参加してくれる方は、キャラの名前、性別、戦闘スタイル、容姿、性格、あと、ディートの味方側に立つのか(騎士団員、フローレンスの自由騎士)敵側に立つのか、騎士の武装や見た目その他の設定あたりを書いてメッセージをください。


ただし、展開に合わせてある程度のアレンジは掛けると思います。それはご了承ください。

ディートのような転移者はNGとします。あと、余りにもすっ飛んだ設定だと話に組み込めないのでほどほどに。


よろしくお願いします。

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