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最終日 未知の兵装

月刊更新滑り込みセーフ(白目

待っていてくれた方、百万の感謝を!

白の亡霊ヴァイスガイストの肩装甲の上にかぶさっている方が鳥の嘴のように開いた。

灰の亡霊ブラウガイストの兄弟機なら、たぶんこいつも何らかの特殊な装備を持っているだろう。手の内が分からないままに突撃するのは危険だ。


嘴の間、というか装甲の間に白い光の玉が現れた。

機体の左右に光の玉を従えるようにして白の亡霊ヴァイスガイストが飛ぶ。なんだ、あれは。


『まずはその腕、見せてもらうぞ!』


左右の光の玉が輝きを増す。一瞬遅れて光弾が雨のように飛んできた。


「なんだと?」


躱そうとしたが、弾幕が広範囲過ぎてよけきれない。

とっさにシールドで受け止めると、正面から殴られたように真電が後ろに吹っ飛ばされた。

急ブレーキをかけた時のように体が前に飛び出してベルトに食い込む。

シールドが撓んで、コクピット内のシールドの状況を示すコアが赤と白に明滅する。かろうじて止めてくれたが……


「あっぶねぇな、この」


灰の亡霊ブラウガイストのガトリングカノン並みの速射力、しかも左右両方から撃ってきているから、文字通りの弾幕だ。

辛うじてシールドは割れなかったが、右のシールド転換型ブレードの残弾を示すコアがそろそろ赤く染まりつつある。俺も震電も武装も限界が近い。


『どうした!精々逃げたまえ!』


しかも連射が途切れない。

普通のカノンなら連射はできてもかならず息切れがある。灰の亡霊ブラウガイストのガトリングカノンでさえそうだった。だが、それがない。


「くそったれがぁ!」


急上昇して一度大きく距離を取る。なんて火力だ。

灰の亡霊ブラウガイストは隠密タイプだったが。こいつは火力特化タイプか

懐に飛び込んでブレードで切らなきゃいけない震電としてはあまり距離は置きたくないが、そんなことは言ってられない。仕切り直しだ。 


「なんなんだ、それは」


『我が白の亡霊ヴァイスガイスト双手の宝玉ルヴィエル・デル・ヴァイドハンド

貴様らのような凡百の者には思いもつかんだろう』


どうやらあの妙な装備には名前が付いているらしい。 


普段ならシールドを構えて強引に突撃してもいいんだが……あの弾幕相手に特攻するのは余りに無茶だ。


それに、今は左のシールド転換型カノンが壊れていて右のシールド転換型ブレードしかない。

盾一枚での切り込みは不安だってのもあるが、これを割られたら震電は丸腰になってしまう。武装がないんじゃ意味がない。

あの弾幕を一機で切る崩すのはしんどいが……隙を伺うしかないか。


---


近づこうとしては弾幕で追い返される、という展開が何度か続く。

時々火力の高い光弾を撃ってくるところを見ると、あの妙な装備は射出する弾丸の威力とかまで制御できるらしい。

さっきアクーラの甲板を撃ったのもあいつなんだろうが。


『どうした?逃げてばかりとは。噂ほどではないな』


優位を確信したような声が聞こえる。

だが、俺が引きつけている間はアクーラが直接攻撃にさらされることはないのはとりあえず救いだ。

それに、あいつが気付いているか分からないが。この膠着はどちらかというとこっちの味方だ


〈待たせたな!こちら、バートラム隊。これより支援に入る!〉


コミュニケーターから新たな声が聞こえる。ようやく援軍が来たか。

戦闘が始まってそれなりに時間が経っている。コース各所に散っていた騎士団もアクーラの周辺まで戻ってくるはずだと思っていたが。

しかも頼れる奴が来た。


「バートラムか!手を貸してくれ!」


〈ディートちゃん、生きてたか。よくアクーラを守ってくれたな。

ジョルナ!師匠に成長を見せてやれ〉


≪はい、隊長!サー、援護します!≫


バートラム隊の編隊から離れたジョルナのレナスが猛スピードでこっちに飛んでくる。

バートラムが手を貸してくれる方がよかったが。

だが誰であっても、万全の状態じゃない今は援護があるのは本当にありがたい。これで流れを変えられる。


「頼むぜ!」


『……一対一に割り込むとは!卑怯ではないか』


ネルソンが的外れな抗議をしてくるが。


「手前らの方から多勢で攻撃しておいて、何ほざいてんだ」


ジョルナのレナスからカノンの光弾が飛ぶ。

白の亡霊ヴァイスガイストが逃げるように飛びながら、左右に従えた光球から撃ち返した。


「あれは……」


右の光球からは俺への射撃が飛んでくる。

飛び込みのタイミングを図りつつ様子を見るが。改めて白の亡霊ヴァイスガイストの厄介さが見えた。

火力が高いってだけじゃない。


騎士は人型であるがゆえに関節の可動域に限界がある。だから機動戦では攻撃範囲が制約を受ける。

それゆえに、相手の射撃の死角や、決して広いとは言えないキャノピーの視界の死角をどうとるかがとても大事だ。

背後や武器が届かない位置を占有できれば一方的に攻撃できる。


この辺はレースにも通じるものがある。パワーがあってストレートが早ければ勝てるわけじゃない。

ミラーの死角に入るとか、ブロックできないラインから抜くとか、よりよいポジションをどう取るか、そして取らせないか。

それこそがドライバー、そして騎士の乗り手の技術だ。


だが、白の亡霊ヴァイスガイストのあの武器……というか武器と言っていいのか、装備というべきかわからないが。

あれなら視界の制約はどうにもならないにしても、あれなら腕が曲がらないところでも射撃ができる。


しかし、灰の亡霊ブラウガイストのステルスにしてもそうだが。あの妙な装備は一体何なんだ。フローレンスの工業ギルド、レストレイア工房、どこでもあんな装備のことは聞いたことがない。


ただ……当たり前だがあの白の亡霊ヴァイスガイストは左右の光球から広範囲に攻撃できるとしても、乗り手の視線は一つの方向にしか向けることはできない。

本当の意味で乗りこなせばとんでもない性能なんだろうが……最新のレースカーと違ってコンピューターが乗り手をサポートしてくれる世界じゃないし、戦闘機のように射撃管制システムがあるわけでもない。

マニュアル射撃の騎士では持て余す性能だな。


そして、ジョルナは位置取りがなかなかうまい。

二対一で戦うときは、当たり前だが敵を挟むように連携するのがセオリーだがそれを上手く実践している。この辺は集団戦をメインにする騎士団の薫陶の賜物だな。

俺への攻撃は明らかに雑になっている。とりあえず牽制程度に撃ってくる光弾をかわしつつ隙を伺う。


ジョルナが気をひいてくれているうちに、一気に加速して一度薄い雲に隠れた。

ロックオンシステムなんてない世界だ。一瞬でも相手の視界から完全に消えればもう一度捕捉されるまで時間が稼げる。ましてや二対一の状況ならば。

雲を抜けると狙い通りに白の亡霊ヴァイスガイストの背後が見える。後ろを取った。


「もらったぜ!」


『甘いぞ!』


勝利を確信してアクセルを踏んだ瞬間。左の光弾が一瞬光った。

レーサーのカンが本能的な危険を叫ぶ。このコーナーに突っ込むと死ぬ。

とっさに震電を右によけさせる。間一髪、直進ラインをショットガンのような光弾のつぶてが貫いた。

あのまま突っ込んでいたら直撃だった、というか、こいつ後ろにも撃てるのか。


『後ろを取りに来ると思っていたよ』


後ろに回られるのも想定していたのか。

視界の範囲は普通のカノンのように射撃をして、死角にはショットガンとかの広範囲の攻撃で強引に当てに行くってわけか。

アクーラへの砲撃、ガトリング並みの速射、そして近接戦のショットガン。いろいろできるのは便利な武装だな。


『二対一ではさすがに我が白の亡霊ヴァイスガイストでも部が悪いか』


とりあえず長引かせて、こいつをこっちに引き付けておくのもそれはそれで悪くはない。

アクーラを防衛する騎士の数はそろいつつあるのが見える。数ではまだ負けているが、練度は騎士団の方が上だ。

アクーラの周りを囲む海賊の騎士も攻めあぐねている。


こいつに砲撃さえさせなければアクーラにはしばらく攻撃は届かない。さすがに俺たち二人を相手にして片手間に砲撃はできないだろうし。

落とせれば一番だが、足止めだけでも悪くはない。


『……これ以上足止めされるわけにはいかんな、ディートレア』


流石に現状が分からないほどの間抜けじゃないようだが。まだなにか奥の手があるのか?

右の光球に光が収束する。


『これで終わらせてやろう!』


仕掛けてくるな。震電を射撃をかわすときのように、螺旋を描くように飛ばす。

右の光球がフラッシュを焚いた時のように強く光り、真っ白い光がほとばしった。極太のレーザーのような光がまっすぐのびる。

光弾なんてレベルじゃない。震電を棒のように伸びた光がかすめる。


『もらった!』


躱したと思った瞬間。

蛇の胴体のように光の帯が波打ってうねるように曲がった。放射したままで曲げられるのか、鞭のように。

キャノピー越しに蛇のように波打つ光の束が迫ってくる。


……かわし切れない。



ちょっと長くなったので分けます。明日にでも続きをアップします。

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