新世界
「ではそちらの世界では、海という巨大な塩水の水たまりがあってそこに島が浮いているんですか?」
「そうじゃない。海の底から陸地が生えているんだ。だから浮いてるんじゃない。
そもそも水たまりなんて広さじゃない」
「なるほど、巨大な湖に島があって、その島がもっと大きくなったようなものなんですね」
全然違う世界にいる相手に自分の世界のことを説明するのは大変だ。
俺の当り前とアル坊やの当り前は全然違う。
およそ信じられない話だが、この世界で言うところの海は雲海、というか空そのままらしい。
そして陸地はそこに浮いているのだ、と。
大地の神様が世界を作っている途中で力尽きて、その作りかけの大地を風の神様が風で支えた、ということなんだそうだ。
神様だというのにずいぶんいい加減である。
しかし、海なら落ちても泳いでも船に戻れるかもしれないが、ここだと船から海に落ちる=即死亡だ。
まったく恐ろしい世界だ。
フルーツジュースのようなものを飲みながら、ようやくお互いの世界についての説明が終わり相互理解が深まってきた。
地球のことをアル坊やに説明してもしょうがないような気はするが、やはり違う世界がどんなものかは興味津々らしく、根掘り葉掘り聞いてくる。
俺にとってはこの世界がどんなものかは非常に重要だ。
どういう経緯でこの世界に放り出され、しかも女の体の中に入ってしまったのかはさっぱりわからないが、今のところ変える方法がまったく手がかりがない。
高いところから飛び降りたりとかしたら戻れるとかいうのは定番だが、ベランダから見た雲の海を見てやめたほうが賢明だということを悟った。
たぶん死ぬ。普通に死ぬ。
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お互いの世界のことを長々と話し合っているうちに随分と時間がたった気がする。
時計、この世界にも時計はあるようだ、大きな掛け時計だが……を見ると2時過ぎを指していた。
この世界と地球の時間が一致しているかはわからないが、文字盤が12で区切られているところを見ると、1日は12時間か24時間かのどっちかなんだろう。
わかりやすくてありがたい
「アル坊や、酒とかないの?」
「お酒ですか?果実酒くらいならあるでしょう。ウォルターに頼んでみましょうか」
「まだ起きてるのかね?寝てたら悪いな」
しかし寝るといってもベッドは1台しかない。沿い寝はしたくないな。
「僕はソファで寝ますので、ディートさんはベッドで寝てください」
「そういうわけにはいかんだろ、俺のほうが年上だぜ」
「あなたはお客様ですから。ご遠慮なく」
「そうか……じゃあ有難くそうするよ」
譲り合いをしてもしょうがないので、アル坊やの言葉を受け入れた。
ベッドに横になる。おそらく文明レベルは地球よりはるかに低そうだが、布団は柔らかかった。流石最高級の客室だけはある。
キスを迫るのはやめてくれよ……と言おうかと思ったが、軽口ではすまなそうなのでやめておいた。
横になると一瞬で睡魔が襲ってきた。
起きたら元通りチェコのホテルのベッドであればいいんだが……