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幕間・システィーナが語るこの世界の話 騎士、実験機(画像あり)

やることがあるとかえって他のことをしたくなる設定マニア、それが私、なようです。書いとる場合かぁぁーッ‼

やあ初めまして。私はシスティーナ・ファレイ。海賊団クリムゾンのリーダーです。

その海賊が、なぜこんなところに居るのかって聞きたいのですか?

今回話す相手がどうもディートの同郷の者であると聞いたからですよ。私にとっては興味深い。だから来たのです。

取って食ったり切り捨てたりはしませんから安心なさい。


ところで、あの、肉を切らせて骨を断つ、ですか?あれは実にいい言葉ですね。

あの言葉が意味するのは、つまり、大きな成果を得ようとするときは犠牲を払うことは避けられない、という意味でしょう?確かに戦において無傷では勝とうなどまったく烏滸がましい話です。

犠牲をいとわず勝利を奪い取ろうとする心意気。実に潔い。気に入りましたよ。


…………ちがうのですか?なら今度本当の意味を教えなさい。

まあいいでしょう。では始めますか。



まずこれです


挿絵(By みてみん)


これも騎士の量産化が始まって極めて初期の機体です。私はいろんな騎士を見て戦ってきましたが、この系統はさすがに見覚えがありません。

分厚い装甲と重く大型の武器を持っており、その代償として機動性には欠けるタイプですね。向かってくる敵を迎撃する戦法を取りました。


カノンが普及するまでは騎士は剣や斧などで切り合いを行っていました。つまり攻撃してくる相手を重装甲で身を固めて迎え撃つ、という戦い方が通用する時期があったのです。

騎士団の初期の国境を守る役割を担った騎士や、護衛騎士に採用されることが多かったタイプですね。



今このタイプの騎士が存在しない理由は賢明な貴方たちならわかるでしょう。

エーテルブレードなどの武装による機体の軽量化と高速戦闘化、そしてカノンによる遠距離戦が主流になれば機動性が欠けるタイプの騎士は的にしかなりません。


かつてのように足を止めての切り合いや、突撃して離脱を繰り返すような単純な戦いしかなかった時代ならともかく、いまの空戦においては機動力と位置取りが生命線です。

鈍重な機体が生きる場所はあっというまに失われました。


護衛騎士としてのニーズが下がったのは、単純に重かった、というのもあります。

重い騎士はそれだけで船足を遅くしますからね。貨物の積載量にも影響します。

かわいそうな話ですが、こういう重装甲低機動タイプの騎士が生まれることはもうないでしょう。騎士による空戦の黎明期の徒花あだばなです。



次はこれです。


挿絵(By みてみん)


工業ギルドが一時期開発していたらしい、大型機ですね。

見ての通り、通常の騎士の倍近くの大きさがあります。


コアを二つ使用して、機体を大型にし、高火力、高機動、重装甲を実現させたといいます。

もともとは機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナに近いものを作りたかったようですね。

エーテルジャベリン、三連装のカノン、機体を完全に包み込むエンジェルウイング。噂では爪をワイヤで飛ばして敵の騎士を捕獲することもできたそうです。

機動力もサイズの小さいレナスに匹敵したとか。


とまあこんな具合で製造されたこの機体は、極めて高性能であったと言われていますが、いくつかの欠点により量産には至りませんでした。


一つは、コアの調達が難しかったこと。サイズが近いコアでないと稼働しなかったあのだそうです。コアは鉱山で採掘されるものです。ちょうどよくペアになるようなコアがそう何組もとれるわけはありませんからね。


二つ目は、単純に大きすぎたこと。サイズと重量のせいで飛行船で運ぶのは困難を極めたそうです。

いま騎士団が使っているダンテやターラントなら運べるでしょうが。作られたのは50年ほど前と聞いています。その当時においては大きすぎました。


三つ目は、大型機を1機作るより通常の騎士を2機作る方が戦力の向上になるから、という結論に至ったからだといいます。まあ戦いはエース一人の活躍より数で決まることが多いものです。

海賊の騎士の乗り手は程度の差はあれど、騎士団にまさるとも劣らないものは数多くいます。

しかし、それでも討伐されるのは、騎士団と比べて数が少ないという要素は大きいですね。我々海賊が協力するのは難しいものです。皆が勝手にやってますからね。


一応この機体は稼働状態で騎士団が補修しているそうです。

万が一フローレンス本土を攻撃されたときには使うかもしれませんね。まあ隣国が侵略でもしない限りはなさそうですが。

……なぜ私がこんな騎士団の情報を事を知っているかって?それは言えませんよ。秘密です。



さて、参考になりましたか?なら結構です。

ところで、気が向いたらあなたも騎士に乗って私の相手をしなさい。

なに、ディートと同郷なのでしょう?きっといい乗り手になりますよ。待っていますからね。




イラストは筆者友人のU-G.Kintoki氏に頂きました。著作権は彼に帰属しますのでご配慮頂ければと思います。

もし転載等されたりしたいと思われた方がおられましたらご一報ください。

絵についての感想を頂けるととてもうれしいです。


この世界ではこういう風に大型機を作るより、数で勝負になったわけですが、やっぱり実戦のロボット空戦(なんてものは実際にはないけど)でも、戦いは数だよ、アニキってなるんですかね。

それとも突出したエース機がいた方がいいもんなのかな。

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