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幕間・パーシヴァル公が語るこの世界の話 騎士、フローレンス国境線(画像あり)

諸君、よく来た。私はパーシヴァル・アシュフォード。騎士団の副団長、飛行船団の指揮官を務めている。

これから君らに騎士やその他の設備についての講義を行う。


君たちは騎士の乗り手ではないのかもしれないが、軍事に関する知識を有しておくことは意義がある。

というのは、平和は決して無償で与えられるものではないからだ。

跋扈する海賊、国境を脅かす隣国、平穏を脅かす輩は存在する。それらへの備えは常に必要だ。

我々フローレンス騎士団はフローレンスを守る盾であり、外敵を切り裂く剣でもある。


また飛行船の航路の平和の維持には護衛騎士の働きも欠かせない。

恥知らずにも土壇場で逃走する輩もいるのだが、この点は騎士団に比べれば質は下がる民間人であり、過分な期待はできないのは致し方ない。

だが騎士団で空路のすべてをカバーできない以上、彼らの働きには非常に大きな意味がある。彼らと我々騎士団によって空路の安全は確保されている。


いいか。我々は剣は常に腰に差していなくてはならない。

剣を持っていても抜かないことと、最初から持っていないことは、同じように剣を使わないという結果であっても大きな差があるのだ。


では始めよう。



まずこの機体だ。


挿絵(By みてみん)


騎士が量産化されてからかなり初期に建造されたタイプの騎士だ。

カノンやエーテルブレード、エーテルシールドが開発されるまでは、このように物理的な剣や盾を携えて闘っていた。


この剣は騎兵剣ランサーブレードと呼ばれる初期の騎士が好んで使用した武器だ。

非常に頑丈なつくりで、厚刃で重量を活かして叩き切るための武器である以外に、中距離から突撃して刺突するという使用にも耐える。騎兵槍ランスと剣を掛け合わせたタイプの武器だ。

スピードに乗せて突き刺せば装甲はおろかシールドさえ貫通するほどの威力があったといわれている。

これらの物理的な装備は重量が大きく機動を妨げたため、エーテル系の武装の開発が進むと淘汰されていった。


そういえば、ディートレアが、やっぱりびーむさーべるの方が強いのか、とか言っていたな。「びーむ」とは聞きなれぬ言葉であるので、それは何だ?と聞いてみたところ、そういえば俺もあにめで見ただけだから分かんねぇ、などと言っていた。自分で言っておきながら分からないとはいったいどういう了見だ。理解できん。

まあいい、話を戻そう。この騎士自体は設計のバランスがよい傑作機だった。武装を変更したり改良を加えられつつ長く使用されたといわれている。


ちなみに、エーテル系の攻撃は物理的な盾では防げない。

カノンやエーテルブレードはエーテルシールドより先行されて実用化された。よって、一時期は盾で攻撃を止めることができないという時期が発生したわけだ。

無論それに対応するための装備も開発されている。一つの例が盾に文様を入れることにより、エーテル系の攻撃を吸収しある程度無力化する楯だ。しかし、これは物理的な盾自体が戦場から駆逐されていったうえに、エーテルシールドが実用化されたことで完全に消滅した。


エーテルシールドでカノンを受け止めた場合、エーテル同士の相殺により騎士の速度が鈍る。

これの対策として、このエーテル吸収型シールドの技術は有効だと考えられているのだが、不可解なことにこの製法は完全に失われ記録も残っていない。非常に残念な損失だ。




次にこの機体だ。


挿絵(By みてみん)


カノンとブレードを装備した中距離、近距離に対応した汎用機だ。

わが騎士団のレナス、フレイヤも同様の思想で作られている。


従来、海賊や護衛騎士の機体は大きな損傷を避けるため、距離をとってカノンを撃ち合うのが通常の戦術であった。しかしディートレアの震電がそのセオリーを破壊してしまった。

つまり、遠距離用の装備しか有さない騎士では、盾と高機動を生かして突進する騎士を止めることは難しい、ということが実戦において明らかとなったわけだ。

おそらく今後は護衛騎士、海賊、いずれの騎士も変容を迫られるだろう。


いうまでもなく、近距離、遠距離のいずれにも対応できるほうが騎士としては優れている。騎士団の騎士がすべて汎用型なのもそれが理由だ。

しかし、だからと言って海賊や護衛騎士がその方向に進むとは限らない。


騎士団と異なり、彼らは機体の修理のコストを考慮しなくてはならない。また失った騎士や乗り手を補充することも容易ではない。

つまり、優秀では有るが被弾のリスクが高いという機体は必ずしも普及するとは限らないのだ。この点は騎士団と異なるといえるな。


また、汎用型の騎士は、遠距離での射撃、近距離での斬撃などの距離に応じた武装の使用と選択。相手の動きに合わせた離脱、接近の判断など、乗り手に求められる要素が多い。

このため乗り手の育成にも多大な負担を要する。この点でも護衛騎士や海賊が汎用型の騎士を導入しにくい要因となるだろう。


今後空戦がどのように変容するか。この私を持っても不明瞭な部分は多い。

我々騎士団としてもそれに対応しなくてはならないため不断の研究を行っていく。



最後はこれだ。これは国境線におかれた詰所付きの砲台だ。浮き岩をくりぬいて作られている。


挿絵(By みてみん)


これらは国境線の各地に密集して複数箇所に設置されている。

わがフローレンスの国境はこれらの浮き砲台と国境線を巡回する飛行船及び騎士によって守られている。

幸いにも近年は他国が国境を脅かすことは無いが、警備を怠ることができないことは言うまでもない。


原則として一つの浮き砲台に3名が配備される。

戦闘となった場合は二名が砲手となり、残り一名がその補佐及び狼煙やコミュニケーター等による連絡員を務めることとなる。

騎士団員は最初はこの浮き砲台の砲手などを務めつつ訓練を行う。その中で優秀なものや、志願したものが騎士の乗り手の候補生となる。


搭載されている砲は騎士団の工房で制作された特殊砲だ。内部に施条ライフリングと呼ばれる溝を彫りこんであり、砲弾に螺旋回転を与える。通常の飛行船の大砲と比べ射程、命中精度ともに優れている傑作砲だ。

弾も特注の砲弾や一定距離を飛んだところで爆発する炸裂弾が使用される。


これの砲は、製造に多大な手間がかかり価格が高いことに加え、砲身を長く肉厚にしなくてはいけないため、通常の砲と比較して重量がかさむ。

このため、ダンテや我が旗艦ターラントのような大型艦は別としても、通常の飛行船に搭載することが困難だ。このため、一般的な砲ではないが、固定砲台としては非常に優秀な性能を持っているといえるだろう。



では、以上で私の講義を終わる。以後は各自研鑽に励むように。

イラストは筆者友人のU-G.Kintoki氏に頂きました。著作権も彼に帰属しますのでご配慮頂ければと思います。

もし転載等されたりしたいと思われた方がおられましたらご一報ください。

絵についての感想を頂けるととてもうれしいです。


ところで、ビームとかレーザーってどういう原理でダメージを与えているんですかね。

こういうのを書きながら言うのもなんですが、物理攻撃の方がダメージ出るような気もする。

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