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鳥かごの中の戦い・中

次行きます。

「シャロンか!」


【あたしに任せておきなよ!】


援護が来た。これで少しは弾が分散する。


『もう一機お越しかい?だけど雑魚はおよびじゃないんだよ、消えな』


【あたしが雑魚だって?見せてあげるわ!】


二人のやり取りは置いておいて、一度震電を降下させて切り返して上空に向ける。

あちこちでまた光が走って赤い航跡を残して飛ぶ幻狼スコールに向けて光弾が飛んだ。


【なんなのよ!これ!】


「避けに徹しろ。少しでいいから持たせてくれ!」


こっちにも光弾が飛んでくるが、さっきより数は減った。

この間に少しでも状況を打開する糸口をつかまなくては。


あの反射衛星は殆どが雲に隠れている。

しかもどこにいくつあるか分からないこの衛星をいちいち壊して回ることはできない。

本体を探して叩かないと。


この世界に射撃を補助するコンピュータやオートのロックオンシステムなんてものはない。

カノンを打つのもブレードで切るのもすべては手動だ。


あの戦闘機もガラスのコクピットの有視界でカメラとかはなかった。

賢人の発想力をもってしても技術的に完全に飛躍した物は作れない。無理なもんは無理なのだ。


移動する目標を反射で狙い撃つだけで至難の業のはずだ。

自分の位置を変えながらそれをやるのは無理。恐らく本体はさほど動いていない。


【ちょっと!いつまであたしを囮にしておく気よ!】


「もう少し頼む!」


断続的のこっちにも攻撃は飛んでくるが、明らかに精度は下がってる。

思い切り大きな軌道を上空に飛んで、震電を振って戦場を見下ろした。

赤く航跡を描くシャロンの幻狼スコールと交錯する光弾が見える。


雲間で断続的に光るカノンの光に目を凝らした。

焦る心を静める。追い詰められたとき、きわどい時こそ心を静めて状況を把握すべし。

レーサー時代の教訓。


発射元があるなら光る順番を追えば起点が見つかるはず。

長く感じるが恐らく数秒の時が過ぎて、ようやく補足できた。

確信はないが……迷っている暇はない。自分の判断を信じる。


---


震電を急降下させた。

機影は見えないが断続的に空間に白くカノンの発射光らしい光が走る。恐らくステルスを使ってるな。

シャロンが粘ってくれているおかげで、こっちへの意識が薄れている。このチャンスは逃せない。


「ブレード!行け!」


新装備の射出ブレード。左右のアームを大きく振る。

何本もの白いブレードの刃が飛んだ。


全部空振り、なんてことになったら笑い話にもならなかったが、飛んだブレードの一つが何もない空間でフラッシュのように光った。

ステルスの一部が解けて、夜空に裂けめのようなものが浮かぶ。


機体の周りにはステルス発生のためっぽいシールド上の装甲が浮いている。それが砕けて散っていった。

銀色に塗られた細身の機体と、それに似合わない巨大なウイング。

ブルーウィルムのような長いカノンが見える。

こっちに視線が向くのが分かった。


『ちっ!なぜわかったんだい?』


その騎士が姿勢を変えて左手を上げた。銃身を複数束ねたカノン。ガトリングカノンか。

一瞬遅れて光弾の雨が震電に向かって飛んでくる。


ブレードの状態を示すコクピットのコアの光が暗い赤色に変わっている。

さっきブレードを飛ばし過ぎた。このまま使えばブレードはもう長くは持たない。


が、ここは仕切りなおすべきじゃない。

ここで下がったら負ける。身を隠されたら次のチャンスはない。

アクセルを踏み込む。震電がアンに向けて突進した。


「当たるな!」


『死になよ!ディートレア!』


片手に盾を張って、全力で上下左右に震電を切り替えす。

左右のカノンが光って光弾が飛んでくるが、姿勢の制御も逃げ方も照準も拙い。


距離を詰められての格闘戦は慣れてないと見た。

震電より大きなウイングを持つ、独特の騎士の姿がキャノピー越しに大きく迫る。

狙いはあのウイング。


『あっち行きなよ!クソ野郎!』


「貰った!」


左右に切り返して照準を振り回す、震電の一八番。

交錯の一瞬でブレードを薙ぎ払う。右の操縦桿に硬いものにぶつかったような重い手ごたえが伝わってきた。

押し負けないように腕を踏ん張る。


エーテル同士が反応する光がキャノピー越しの目を刺す。

シールドというかバリアでも貼ってやがるのか。


「くそったれ!切れろ!」


アクセルを床まで踏み込んだ。腕にかかる重さが強くなる。

僅かな拮抗の後、何かが砕けるような音がする。震電か切り抜けて、ブレードの状態を示すコアの光が赤く変わった。


---


あいつの騎士の体制が崩した。砕けた装甲板の破片が光りながら飛ぶ。


【ディートレア!どうなったのよ】


シャロンの大声がコミュニケーターから響く。

震電を切り返してそいつを視界に収める。ステルスのほとんどが解けて、バカでかい平たいウイングと普通の騎士より一回り細い騎士の姿が見えた。

これで終わったか……出来れば捕虜にしたいが。


『まだ死んだわけじゃないよ』


ウイングの一部が壊れているのが見えるが、そいつが姿勢を整えてこっちにガトリングカノンを向けた。

あの槍のように長いカノンが反射狙撃に使っている主砲だろう。そっちも無傷だ。


普通ならウイングを斬れば戦闘不能だが、こいつは普通の騎士と違って機動力を失っても戦闘力が完全に消えたわけじゃない。

長いカノンの方から光弾が一閃して雲間で反射する光が見えた。

まだやる気だ。


【危ないわね!】


「シャロン!気を付けろ!まだ動く」


ガトリングカノンの光弾を躱してアクセルを踏み込む。震電が急上昇した。

あのカノンを斬れば流石にこいつも戦えまい。


≪待ちやがれ!≫


その軌道を遮るように横からカノンの白い光が飛んできた。

とっさに震電の方向を変える。新手か


≪ディートレア!俺の女に手は出させねえぜ≫


弾が飛んできた方を見る。

こっちに向かって、あの戦闘機が猛スピードで迫ってきていた。


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