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誰のためにそれをするのか

お待たせしました。

一旦ここで連投は終わります。

見てくれた方、良かったら感想、評価とか貰えると嬉しいです。


「皆!聞いてほしい!

先ほど、団長殿より通信があった……エストリン側から停戦の申し出があったとのことだ」


格納庫に集められた騎士の乗り手や船員たちを前にして、騎士団員の六騎隊長がそれを言った時。

その時上がった声は、歓声とどよめき、喜びと不満が入り乱れたって感じだった。


まあ複雑と言えば複雑な感じかもしれない。こちらにも多数の犠牲者が出ている。

幸いにも俺の知った顔は無事だが、仲間を失った乗り手も少なくないはずだ。

ただ、さすがに追撃して全滅させるべきという話は出なかった。

皆が戦いの終わりを淡々と受け入れたって感じだ。


あいつらの飛行船は沈んではいないもののアランの砲撃を受けたのは殆ど飛行能力を喪失している。

この状況でフローレンス側が一斉攻撃を仕掛ければ、戦意を失った騎士と飛行能力や補給能力を失った飛行船はあっという間に沈んでしまうだろう。


快進撃を続けてきたが、正しく鼻っ柱を叩き潰されたようなもんだ。遠征軍の指揮官の一角と高性能な騎士を失った。

飛行船団への被害も甚大。再攻撃の準備を整えようにもかなり時間がかかるだろう。


もはやこの戦線での大勢は決した感がある。

こちらの戦果を受けて第一防衛線の方でも一旦戦闘は終わったらしい。

この先はどちらかと言うと政治的な戦後処理の話になる気がするな。


---


一時休戦の知らせがあって、ようやく飛行船内の空気が緩んだ。

なんだかんだで戦いが終わるってのは解放感があると思う。

その後はお決まりの宴会になった。広い食堂にありあわせの料理と酒が出されて振舞われた。


ごく一部の哨戒機が展開しているものの、後の乗り手たちは船内の祝勝の宴に出ている。

決死の戦いが一転、圧倒的な大逆転劇になったんだから浮かれるのも当然だろうな。


個人的には、あいつらが停戦を偽装しているだけで、また不意を打ってくる可能性も考えてしまうから、大丈夫なのかって気もするが。

だがそれはエストリンとしては全滅覚悟の玉砕戦を仕掛けるようなもんだ。

そこまで無茶はしないと思う。


拠点の飛行船を失い、遠征軍のリーダーを失いでは戦闘にならない。

歴史小説とかでよくある、大将を失った軍が総崩れになる、という描写はまさに真実だった。


レースでも歴史に残る大逆転劇はあったが、戦いでも同じなのかもしれない

ほんの一瞬の出来事、ほんの一つのミスが一瞬で戦況を反転させて圧倒的有利を崩壊させる。

今朝の時点でこの結果を予想できた奴はいないだろう。勿論俺もここまでになるとは思っていなかったが。


---


しばらく飲んでいるうちに、宴のなかにシスティーナがいないことに気づいた。一通り食堂や廊下まで見たが姿が見えない。

だが、なんとなく居場所は想像がついた。甲板に出るために格納庫に上がる。

格納庫には損傷を受けた騎士が駐機姿勢で並べられていた。ただ、修理には取り掛かっていないようで静かなもんだが。


震電やスカーレット、それにブルーウィルムもいる。

ブルーウィルムの前にはアランと何人かの技師や船員がいて話をしていた。


「アラン!システィーナは……?」


声をかけたら、アランが甲板の上を指さして、そのまま船員たちとの話に戻った。

アランは本人曰く酒は嗜まないらしく、宴会には不参加だったが、自慢気な顔を見る感じ、ブルーウィルムの話をしているんだろう。


まあ聞いた話では、あいつの苦労と工夫の結晶ともいえる愛機だ。

愛機の自慢話をしたくなる気持ちは俺もよく分かる。

あの騎士のコンセプトは相当に独特で、乗り手にもかなりの特殊な技術を要求する。

設計を理解されたとしても簡単にまねできる代物じゃないだろうな。


---


甲板に出ると風が昨日と同じように吹き抜けていった。

天頂に輝く月は昨日と変わりないが、昨日の緊張感漂う空気とは違う。

上から押さえつけられるような重たい感じではなくて、星も綺麗に見える気がした。


夜空を見上げると、哨戒飛行している騎士だけじゃなく、飛行船の明かりが行き来しているのも見えた。

飛行船の駆動ローターの音とワイヤーが風に鳴る音も遠くから聞こえる。


今回の戦いではエストリン側の騎士に多数の投降者が出た。

おかげでフローレンス側の飛行船は積載能力を超過している船が多い。

何隻かが騎士を搭載したままでフローレンスに戻って行って、余力のある騎士は空中をかわりばんこに旋回している。

こんな風に大量の鹵獲があるなんてことは普通は無いだろうな。


甲板の隅の方にはこれまた昨日と同じように小さな明かりがついていて、システィーナがワインの瓶と一緒にベンチに腰掛けていた

予想通りか。


「逆転勝ちの立役者がこんなところに居ていいのか?」


「あなたねぇ、私がいたら皆、気まずいでしょうに。この私が気を使ってあげているのですよ」


やれやれって感じの顔でシスティーナが言う。

システィーナのことを直接は言ってはいないが……あの赤い機体と蛇遣いサーペンタリウスを知らない騎士の乗り手はいない。

戦いが終わって帰還した時にシスティーナを取り囲む乗り手たちの空気は何とも微妙なものだった。


「護衛騎士と海賊は永遠の敵同士ですよ。今は特殊なのです……まあいい、一杯付き合いなさい」


システィーナが言ってワインを注いでグラスを渡してくれる。一口飲むと、渋みのあるワインがのどを抜けていった。

システィーナも静かにグラスを傾ける。

軽く吹き抜ける音以外何も聞こえない。この沈黙を俺が破るべきじゃないことくらいはなんとなくわかった


「まったく……オロカモノは始末に負えませんね。我が姉を乗り手として鍛えていれば、今頃あの騎士がフローレンス本島に達していたでしょうに」


グラスのワインがなくなったころに、システィーナが何かを思い出すように口を開いた。

白剣(クォグネンツ)の乗り手であるネイサンも決して強い乗り手ではなかったと思う。


ネイサンにも少しだけ会った。40台くらいの騎士の乗り手というより、執事とか文官というかそういうのを思わせる、ちょっと細身の男だった。

側近だったのかもしれない。


思えば、あのシスティーナとの戦いの時と俺と戦った時も動きが違った気がする。

もしかしたら影武者と言うか代理の乗り手がいたのかもしれない。

……まあすべては推測だし、まあこれも今となってはどうでもいいことだな。


「しかし、復讐も終わってみればどうということもないですね……つまらない相手でした」


そう言ってシスティーナが月を見上げる


「これで少しはわが姉の魂も安らぐでしょうか。姉はこんなことを望まない気もしますが」


「……ケリをつけるってのは大事だと思うぜ。自分の心にとって」


死者に思いを聞くことはできない。だが自分の気持ちに整理は付けられる。

命がけの復讐に限らず、自分の気持ちに決着をつけなければ前に進めないってことはあると思う。


「なかなかいいことを言いますね」


「俺の国にそういうことを言った奴がいたのさ」


「なるほど、やはりあなたの国は興味深い」


そう言ってシスティーナが俺のグラスにワインを注いでくれる


「いずれは一度……」


そう言いかけてシスティーナが鬱陶しそうに甲板の向こうを見る。

そっちに目をやると、10人ほどの騎士の乗り手たちがこっちに歩いてきていた。


---


誰かと思ったが……サラや騎士団の団員、それにベルトラン達の主力の護衛騎士の面々だった。ローディとグレッグもいる。

騎士団員に主力の護衛騎士たちは海賊と戦う機会も多い……それぞれにシスティーナと因縁があっても不思議じゃない。


「なんですか?私はいまディートレアと飲んでいるのです。邪魔は野暮というものですよ」


システィーナがあからさまに邪魔だって感じの口調で言う。

張り詰めた空気が漂った。まさかここで喧嘩が始まったりはしないと思うが。

止めるべきか、何か言うべきか、と思って口を挟もうとしたが。

わずかな間があって全員が騎士の敬礼をした。


---


「なんのつもりですか?」


「お前を許すことはできない……だが、今日の戦いは素晴らしかった。一人の乗り手として敬意を払う。そしてフローレンスの騎士として感謝する」


中央にいた六騎隊長が言う。

システィーナが困惑したって感じで俺を見た……この表情は初めて見るな


「ふ、海賊に感謝とはね。騎士団の連中もヤキが回ったものです。この戦いが終わったら敵同士ですよ」


「ならばそれまでは味方だろう」


「その時は正々堂々と戦えばいいだけだ。その時は私がお前を倒す」


「その通りだ。戦場では容赦はせんぞ」


サラやベルトランが言う。


「なかなか面白い連中ですね。ですが気に入りましたよ。怯えて縮こまるよりはいい。いいでしょう、掛かってきなさい、命が要らないならね。」


相変わらず挑発的なことを言うシスティーナだが、周りを囲んでいた乗り手たちは表向きは気にした様子も無いようだった。

もしかしたら仲間や友人を奪ったかもしれない相手とどう接するのか……俺には経験が無いからわからないが。

この世界の騎士の乗り手には彼らなりの流儀があるんだろう


「姉御、こんなところで一人でいちゃだめですぜ、皆が待っています」


「そうだぜ、なに柄にもなくしんみりしてやがるんだ」


ローディとグレッグが声をかけてきた。

今日戦って思ったが、乱戦の戦場で生き残るのは実力じゃなくて運もかなり大事だ。

流れ弾に予期せぬ死角からの攻撃、死ぬ要素はいくらでもある

……こいつらも死なずに戻ってきてよかった。だからこそ今こんな風に話せる。


「運がよかったな、お互い。だがまた話せてうれしいよ」


「ありがとうございます、姉御」


「ああ?運?俺は実力だぜ」


グレッグが分かってますって感じで笑って、ローディがいつも通り分かってなさそうに生意気なことを言う。


「では行きますか、ディートレア。折角の機会です、メイロードラップの王者と話がしたい。紹介しなさい」


「ああ、アレッタか。多分食堂にいると思うぜ」


また前みたいにたくさん食べているのかどうなのか。

とりあえず、明日はまた違う状況になるかもしれないが……今は気を緩めてもいいだろう。










あと少しで本章は終わりで最終章に突入します。

なるべくお待たせせずこの章は締めてしまうつもりです。

今後も応援よろしくお願いします。


あと、改めて新キャラ募集告知。


今後のストーリーの展開上、敵味方に騎士の乗り手が登場します。その乗り手のキャラ設定を募集したいと思います。

……キャラ設定を考えるのが面倒、というわけではありません、ええ。

ただ、自分一人で考えたキャラはある程度幅が狭まってしまいますし、もともとTRPG畑出身なのでこういうのをしてみたかったというのもあったり。


ということで、参加してくれる方は、キャラの名前、性別、戦闘スタイル、容姿、性格、あと、ディートの味方側に立つのか(騎士団員、フローレンスの自由騎士)敵側に立つのか、騎士の武装や見た目その他の設定あたりを書いてメッセージをください。


ただし、展開に合わせてある程度のアレンジは掛けると思います。それはご了承ください。

ディートのような転移者はNGとします。あと、余りにもすっ飛んだ設定だと話に組み込めないのでほどほどに。

ディートと同じ転生者は無しとします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 和平成立 当面は新型の開発や戦後処理中心ですね。 [気になる点] トリッキーな騎士もいいですね。 ザクマインスレイヤーみたいに浮遊機雷ばら蒔くタイプや高機動偵察機とかですね。 [一言] …
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