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自由を守るためには

長くなったので分けました。明日中にもう一話行きます。

第二防衛線までもう少しと言うところで不意にコミュニケーターから金属音が聞こえた。

割り込み交信の音だ。


【我が名はアナトリー・アリスタリフ。偉大なるエストリン遠征軍の指揮官である】


勿体ぶった口調の名乗りが聞こえた。どうやら予想通りこっちにいるらしいな。


【諸君らの殆どは騎士ではないだろう?フローレンスの為に戦う理由はないはずだ。大勢は決したことは分かるだろう?直ちに降伏しなさい。金なら払ってあげよう】


舐め腐った言い草が聞こえてくる。


【……君達も愚かだね……なら叩き潰してあげよう。全員攻撃開始】


コミュニケーターがつながっていないのか聞こえなかったが、誰かが言い返したんだろうな。

いずれにせよもう戦闘は始まっているのか。


「急ぐぞ」


『名乗りを上げてくれるとは全くありがたいことですね。探す手間が省けるじゃないですか』


トリスタン公の言うのが本当なら自ら騎乗して最前線に出てくるようなタイプじゃないっぽいが。

にもかかわらず出てきているってことは、勝ちを確信して舐めているのか。


『アラン、手筈通りに飛びなさい』


[はい、船長]


横を飛んでいたブルーウィルムが軌道を変えた。重たげな機体が軽々と加速して太陽に向かって急上昇していく。

大した機動力だな


「こちらディートレアと震電、聞こえるか」


<聞こえるぞ、こちらはサラだ>


「戻ったぞ。援護に入る。俺ともう一機、赤いのが来るがそいつは味方だ。いいな」


<団長殿から連絡は頂いている。そいつがアリスタリフの騎士とやらを相手取る、とも……だが何者だ?>


「今は聞かない方が身のためだ、多分な」


命令は行っているようだが、システィーナの素性までは話していないらしい。

それぞれ因縁がある奴もいるだろうから、感情的な縺れを生む可能性もある。今は知らない方がいいだろう。

まああの武器でバレそうではあるが。


前方の空域ですでにカノンの光弾が飛び交っていた。


「行くぞ!」


『任せなさい』


スカーレットがまっすぐにその空域に向けて飛ぶ。震電がその少し後を追った。


---


戦闘空域が遠くに見える。

飛びかう騎士の機影が見えるが……明らかに敵の数が多い。総攻撃でこっちを完全に潰すつもりか。

アクセルを踏むと震電が加速する。撃ち合う騎士たちの姿が近づいてきた。


「気を付けろよ、弱い相手じゃないぞ」


白の亡霊ヴァイスガイストの後継機、たしか宝玉の騎士ドラゴツェン・シャーリークとか言ったか。

遠距離ではあの高性能なカノンで弾幕を浴びせてくるし、近距離に飛び込んでもブレードで格闘戦ができる。

それにその状態でもカノンは撃てるし、銃主ガンナーが射撃に専念する以上射撃精度も高くなるだろう。

システィーナの強さは認めるが、油断したり入れ込んで勝てる相手じゃない。


『ふ、ありがたい忠告ですが。あなたは万が一そいつと接敵した時に間違って落とさないことを心配しなさい。そんなことになればあなたでも容赦しませんよ』


「そんな無粋な真似はしない」


『では後で会いましょう』


スカーレットが急加速して乱戦のなかに飛び込んでいった。

追い抜きざまに一機に斬撃を浴びせてそのまま蛇遣いを突く。一瞬で伸びた切っ先が一機を刺し貫いた。

あっという間に二機撃墜か……


とにかく今は一機でも落とす。

後先どうこうより少しでも数を減らさないと。

敵味方乱れ飛んでいる状況だが、俺のブレードなら誤射は無い。


≪そこにいたか、ディートレア≫


不意にコミュニケーターから声が飛び込んできた。


---


白く塗られた騎士が視界に飛び込んできた。

射手ストリエロークを少し細くしたような感じだ。亡霊シリーズとかではない。


ただ、エストリン製かと思ったが、右手は指が無く、大きめの手甲から三本の爪の様なものが生えていた。

なにか特殊なギミックを持っているんだろうということは一目でわかった。

左手は大きめのエーテルシールドだが、ブレードか何かに変化してくるだろうか。


「誰だ?」


≪前は後れを取ったが、ディートレア、二度は無い。我が名はネルソン……いや、ネイサン・デミクレス≫


何処かで聞いたことがあるが……思い出した。メイロードラップの時だ。


「あの時の白の亡霊ヴァイスガイストの乗り手か」


≪その通り。わが主を害させるわけにはいかん。お前は私が相手する≫


成程な。

妙に他の海賊と言うか黒歯車結社の連中と違う感じだったが、そういうことか

アリスタリフ家の士官とかで、エストリンからの派遣仕官とかそんなのだったんだろう。


いい加減ぶっつけ本番で妙な武装に挑むのは慣れてきたが。

どんな武器を持っているにせよ、野放しにはできない。それに一応約束上システィーナの邪魔はさせられない。

こいつを抑えるのは俺の仕事か。


≪戦う前に一つ問おう、ディートレア≫


「落とす前に聞いてやるよ、なんだ?」


≪なぜ降伏しない?この戦況を転換させることが不可能であることくらいは分からぬはずはあるまい。

降伏し金を受け取ればいいだろう。流れ者のお前がなぜフローレンスのために命をかける?≫


「まず、俺は金のために戦っているわけじゃない」


当たり前のようにこの言葉が口から出たが

……テストドライバー時代はそんなこと言えなかった。いつだって選ぶ余地は殆どなかった。

今こう言えること、自分の意志で戦場を選べることを本当にうれしく思う。


「それに、俺は流れ者だが……一つ確かに言えることがある。

自由とかそういうのは黙っていたら得られない。自分で守るもんだ」


≪流れ者風情が……聞いたような口を……≫


「それに、フローレンスの騎士たちは金のためには戦ってないぜ。金貨の袋を積み上げえば皆が這いつくばると思うな」


金が欲しければ、命が惜しければ、こんな不利な戦いからはみな降りてるだろうと思う。

正直言って、俺は志願兵なんてほとんどいないんじゃないかと思っていたが。

自由騎士たちはおろかアレッタや、一流の商会の専属で金に不自由しないはずのメイロードラップの上位組までほとんどが参加した。


自由騎士の自由は伊達じゃなかった。

ああいうのを見せられるとこっちもやる気がわいてくるってもんだ。


「フローレンスはお前さん達から金を恵んで頂いて飼い犬にされる気は無いらしいぜ。

俺たちの自由を奪いたければ力づくで来い。こっちは最後まで抵抗してやる」


≪愚か者めが……まあいい、先日のような不覚は取らん。わが主の為、我が騎士、白剣クォデネンツが貴様を叩き潰す≫


「お前の主を害するのは俺の仕事じゃないんだがな……お前の邪魔をするのが俺の役目だ。こっちこそあの時に決着を付けてやる」


白剣クォデネンツなる騎士がすっと旋回して距離を置く。

あいつの右手がどんな武器かわからない以上、イチかバチかで突撃はできない。

右手の爪が白く光って光が集まってくる……来るな。



後二話の予定。長くなったら3話です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です 開幕前の緊迫感がいいですね。 相手の攻撃ヤバそうですね!
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