03
アライムとイーゼムの二人を呼んだ女性は、部屋に入るやいなや満面の笑みで自己紹介を始めた。
「えっとねぇ、私の名前はエクスクァルタ・ノーベラム。エクスって呼んでもいいよ。第一騎士団のリーダーやってるんだ。それでねぇ、魔剣保持者の一人で《虐殺輪舞轟天》を持ってて、えぇと、他にはねぇ、趣味は食べ歩き。後、特技は逆立ちだよ。六時間ずっとやれる位には得意だよ。私の自己紹介はこれで終わり!何か質問ある人いる?」
癖なのだろうか。所々語尾を伸ばながら一気に話し終え、キラキラとした目で質問を待っている女性-エクスクァルタ。彼女に質問するため、アライムが手を挙げる。
「何かな?アライム君。」
「結局僕達はなぜ、この場所に呼ばれたのでしょうか?」
「そうだ。まだそれを聞いてないぜ。」
アライムの言葉に、思い出したようにイーゼムが追従する。
「そうそう、それだよ。えっとねぇ、よく聞いてね。一回しか言わないから、聞こえなかったって言われたって知らないからね。いくよ。」
エクスクァルタの注意に、アライムとイーゼムは決して聞き漏らさないように耳を澄ませる。
「君達は!今日から!第一騎士団所属になったのだー!」
「へぇ。俺も騎士か。」
「イーゼム。騎士か、じゃないよ。エクスクァルタ団長、もう少し詳しい説明をお願いします。」
冷静なアライムの疑問にエクスクァルタは少し不機嫌になる。驚くと思っていたのだろう。
しかし、今のままでは情報が少なすぎて驚こうにも驚けない。エクスクァルタは気を取り直してその質問に答える。
「ふっ、知りたいのなら教えてあげよう。つまり、君達は実力を認められたのさ。アライム君は日々の戦いの評価から。イーゼム君は村々に出した試験で、騎士を五人も倒したからだねぇ。理解したかい。」
「「はい。」」
「分かったようだねぇ。もう登録は終わったから、任務が出るまでは休暇だよ。まぁ、ゆっくりしているといいよ。部屋も用意してあるからねぇ。宿舎の五階の三番と四番だから。どっちがどっちかは話し合うんだよ。」
そういってエクスクァルタは止める間もなく部屋を出て行った。
「えっ、ちょっと!行っちゃった。」
説明はされたが、それは何故選ばれたかだけである。何をするのかは未だにまるで分からない。
しかし、今から行っても追いつけるかどうか。
「よく分からないけど、とりあえず宿舎に行こうか?」
「ああ」
疑問はまだ残ったが、とりあえずこれから自分達が住むべき場所に歩を進める。
・・・・・・・・・・
城の外に出ると、もうすっかり夜になっていた。
「第一騎士団って何するんだ?アライムは騎士だろ。何か知ってるんじゃないか?」
「それが、知らないんだよ。何をやってるかも、誰が所属しているかも全く分からないんだ。噂では普通の騎士が対応できない魔物を討伐してるとか。」
「俺、魔物って見たことないんだよな。やっぱり強いのか?」
「ペガ村は邪霊領域から遠いから魔物も居ないか。強いよ。一番弱い種類の魔物でも、普通の人じゃ太刀打ちできない。」
「えっ!そんなに!大丈夫かなー、俺。」
辺りが暗い中でそんな物騒な話をしつつ、宿舎の五階まで来た二人。
「五階なんてあったんだね。初めて知ったよ。」
「アライムってここに住んでたんだろ?何で知らないんだ?」
「僕みたいな下っ端は一階しか使わないからね。上はそんなに行かないんだ。」
「そんなもんか。」
「うん。じゃあ僕は四番の部屋に行くから、イーゼムは三番でいいかな?」
「ああ。じゃあ今日はもう遅いしもう寝て、明日城下町に行こうぜ。騎士の事とか色々教えてくれよ。」
「分かった。また明日。」
・・・・・・・・・・
アライムは、部屋に入るとその広さに驚いた。何故なら、正規の騎士の宿舎でも基本的に狭い寝床しか無いのが当たり前で、見習いでは寝るところすら無いことも多いからだ。さらに、その部屋に三人も四人も一緒に過ごさなければならないのだ。
しかし、この部屋はアライムが前居た部屋の三倍の広さで一人用。設備も寝床どころか台所や本棚、極めつけには風呂までもがある。
「第一騎士団ってすごいな。こんな部屋に住めるのか。」
アライムは部屋の設備に感心しながらどこに何があるかを確認しようとしたが、突然眠気が襲いかかってきたので、今日はそれに従うことに決めた。
寝床に倒れ込むアライム。
(ベッドが柔らかいな。する事や聞くこと、色々あるけど今日は寝よう。色々な事があったからな。結局第一騎士団の仕事って何するのか聞けなかったけど、大丈夫だろう。イーゼムもエクスクァルタ団長もいい人そうだし……)
これから起こること、新しい友人や上司、色々な事をつらつらと考えながら、アライムはゆっくりと夢の世界へと旅立つのであった。