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プロローグ

 戦いの音が鳴る。


 場所は大陸のほぼ中央、この世界で最も豊かと言われ、地の精霊を信仰するアクイア王国、その後ろに広がる大森林。


 この森林は邪霊イヴィル領域ゾーンと呼ばれる場所の一つである。邪霊領域は穢れに侵食された精霊、邪霊を身に宿す魔物を生むことがある。

 今戦っているのも、子供ほどの身長で鋭い爪と牙、赤茶けた毛皮と鱗を持つ獣面の化け物である獣人コボルトという魔物の一種である。

 そのコボルトが四匹と、アクイア王国の直属である屈強な騎士が十数人が戦っているのだ。


「そっち行ったぞ!」

「よっしゃ!くらえや!」


 初老の騎士が五人の騎士を従え、コボルトを追い詰め、誘導する。さらに、中年の騎士が他三人の騎士と共に、誘導されたコボルトを一体ずつ相手にし、確実に仕留めていく。


「グギャア! ギャア!!」


 いかに人を容易く引きちぎり、馬よりも速く走るほどの力を持つコボルトといえども、正規の訓練を受けた騎士十数人をたった四匹で相手にするのは、とてもではないが無理である。少しは粘ったが、結局はたった一人にも有効な傷を与えることができずに、四匹のうち三匹は騎士達の剣にかかって息絶えることとなった。

 

「さてと。あと一匹か。」


 中年の騎士が言った通り、残りは後一匹。すぐに終わるだろうと皆で囲い、その輪を縮めていく。

 しかし、残り一匹となったコボルトは恐怖に駆られたのか、騎士達の気のゆるみを察知した瞬間、途轍もない力で跳躍して囲いを越え、逃げ出した。


「グギュアア!!」

「しまった! 逃がした!」


 初老の騎士が叫ぶ。


「任せて下さい!」


 初老の騎士の言葉を遮るように叫んだ若い騎士がコボルトに追いつくと、教本のようなきれいな動きで剣を一閃。

 逃げ出したコボルトを上から下に一刀両断、真っ二つに切り裂いた。


「よしっ!よくやったぞアライム。初陣なのに凄いじゃないか。」


 リーダーなのだろうか。ほかの騎士よりも装飾の多い鎧を身に付けた騎士が、アライムと呼ばれた騎士をねぎらう。どうやらアライムは新人の騎士らしい。


「ありがとうございます。」


 初めてでの手柄に興奮しているのだろう。顔を赤くしながらも、アライムは笑顔でそのねぎらいに応えた。


「よし、撤収するぞ。」


 リーダーの掛け声で騎士達は撤収の準備を始めた。


「いやあ、アライム。お前すげぇな。初陣で活躍なんて中々できねぇぞ。」

「そんな、偶々ですよ。」


 アライムと中年の騎士が話している。アライムはこの第十二騎士団の中でも最年少で、先輩からはその真面目な人柄から好かれていた。


「おーい。早くしろよー。」

「は、はい。」


 リーダーからの注意を受けてアライムは慌てて動き出す。戦闘以外ではまだ未熟さがあるのも他の騎士から好かれる所以だった。


 

 森林から王国に帰る途中、アライムはこれからの生活に思いを馳せていた。


(よし。今日は上手く行った。これからの騎士生活、頑張るぞ。)


 こうしてこの物語の主人公、後にアクイア王国最高の騎士と呼ばれるアライム・ガシム、十六歳の初陣は終わった。

 

 そうして物語は七年後、アライム・ガシムが魔剣を継承したことから動き出す。

 

 

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