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5月28日(その2) 老舗旅館連続殺人事件編

5月28日(その2)


 まさか私の日記が2ページをまたいでしまった。なんか穢されたような気がしてちょっとイライラする。


 アワビの酒蒸し。アワビづくしだ。私が頼んだとはいえ、ちょっとしつこすぎる。イライラする。


 私は未成年なんでオレンヂジュース。奴らは酒盛りを始めている(メガネはガキかと思ったら、なんか免許証を仲居に見せて成人証明していた)……イライラする。


 ワニンゴとヒゲは生ビール。ブータロウは日本酒。メガネはハイボール。カラテは白ワイン。カレキは血圧の薬に影響するからと言ってウーロン茶(この前、全快にしてやったことを忘れてるらしい)。イライラする。


 そんなイライラしながら全員を観察していると、カラテはやけにメガネの世話を焼きたがり、カレキはブータロウの世話を焼きたがっている。


 カレキが、ブータロウの取り皿にアワビを取ってレモン汁をぶっ掛けているところで事件が起きた。


 ブータロウがいきなり立ち上がり、「もう沢山です!」と叫んだ。ワニンゴが「アワビが?」とか聞いたけど、それはシカトしていた。


 「馬車に帰ります!」とか言い出したんで止めたんだけど、言う事を聞かないから数発ビンタしたら、「頃せぇ! 僕を頃せばいいでしょーがッ! 暴力で言う事を聞かせようなんて間違っているぅ!」と錯乱してどうしようもない。イライラする。


 カレキが突き飛ばされて「キャッ!」と畳の上をカーリングのストーンみたいに滑って、カラテに抱き止められていた。


 私が「いい加減にしろ。暴力を振るうな」と注意したら、「それをあなたが言うんですか!」とか叫ばれたんでまたイライラする。


 私だって好き好んで魔王退治なんてやりたくないのに、私だって色々我慢してるのに。


 とりあえず、全員をビンタして部屋を出た。


 トイレに行ったら、イライラの理由が分かった。真っ赤に染まったトイレを見て、そういや少し前からお腹が痛かったことを思い出した。


 “周期”にズレが出ているのは、魔王退治と仲間へのストレスからだろう。そうに違いない。


 酒飲んでゲラゲラ笑ってた男連中の顔を思い出して、腹の底からドス黒いものが湧き上がる。


 そうだ。コイツらはそういう嫌な思いをしなくていい。毎日、毎日お気楽に生きているんだ。


 トイレを出たら、ご機嫌なワニンゴが男子トイレに入ろうとしてたんで、呼び止めて胸ぐらを掴んでビンタした。「な、なんで?」と聞いてきたんで、「少しは女の痛みを思い知れ」と言った。


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