9話 対立と同盟
クリスティーアは美しく微笑む。
彼女には人を引き付ける何かがあった。
ルカはクリスティーアを様づけで呼んでいた。彼女の部下に敵対視されたくないからだ。
けれど、今は驚くほど自然に、クリスティーアを尊敬している。
まるで、神にでもあったような気分だ。人に従わせたいと思わせる人など、会ったことがなかった。
だから、彼女を神と現した。
ああ、この人は優しい人だ。
偽善でも、悪でも、正義でもなく、ただ目の前の人に優しくできる人だ。
……特別な人だ。
しばらく放心状態で動けなかった。
ボーっとして、酔っているようだった。
「主様。」
クリスティーアの背後から声が聞こえた。
当然だが、誰もいない。
ルカはハッとして、辺りを見渡す。
「主様。」
また声が聞こえた。
クリスティーアは優雅に紅茶を飲むと、口を開く。
「スミレ、姿を見せなさい。」
「仰せのままに。」
数秒後、視界が霞む。
何もないところで、ふらりと、影が現れた。
その影はルカやクリスティーアのものよりも薄く、希薄だった。
その影の上に人の形ができる。
所々透けているが、人間、と呼べる形になると、それは目を開く。
「紹介するわ。幽霊メイドのスミレよ。」
「初めまして、スミレと申します。」
スミレは白髪眼帯のメイドだった。
白い肌、白い髪、色素の薄い目。そこに黒いメイド服と眼帯。エプロン。
白黒写真にしても違和感がなさそうな容姿だった。
幽霊、姿を消してずっとそこにいた、ということだろう。
でも、なぜこのタイミングで声を出したかが気になる。
スミレはクリスティーアの護衛のようなものだろう。なのになぜ、自分から姿を現したのだろうか?
「主様、トーヤとトーマが争っております。いかがいたしますか?」
「一回、引き離しておいて頂戴。」
「承知いたしました。」
スミレはその一言を残して消える。
次に真後ろで空気が少し揺れた。スミレが通ったのだろうか?
クリスティーアは申し訳なさそうな顔で言う。
「ごめんなさいね、組織内で少し、ごたごたしているのよ。
「トーヤとトーマというのは何でしょうか?」
「正義科と反逆科の幹部よ。」
「幹部、ですか?」
ルカは首を傾ける。
「この組織は少し複雑でね。私がトップで、その下に四つの組織があるイメージよ。」
「それが正義科や反逆科ということですね。」
「ええ、そうよ。その四つの組織のリーダーを幹部、その補佐を準幹部と呼んでいるの。」
ルカは話を整理する。
「つまり、正義科と反逆科の幹部が争っている状態、ということですね?」
「ええ、そうよ。こんな状態で言うのもあれ何だけど……、ルカ、わたし達の組織に入ってみない?」
「わかりました、クリス様。これから、よろしくお願いいたします。」




