表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翳りゆく星の彼方のあなたへ(修正中)  作者: 柿の種と干し柿
第1話「傍観者だったもの」
2/7

①「目覚めと未知」

知らない感覚が駆け巡る。

駆け巡るとは、どこに、何に。

この体が覚えているその感覚を手繰り寄せると、何かが動いた。手が動くという感覚を、初めて体感した。

「…ぁ」

思わず何かが溢れた。内側からこそばゆい感覚が、体の表面を通して伝わってくる。

視界が開けた。

この動作を私は知らない。体が覚えているのだ。呼吸をすること、目を開くこと、私の知らない動作が自然に行われている。

光が視界を満たす。

「まぶしい……」

それが光の表現だった。空から降り注ぐ光はあまりにも眩しくて、直視できない。だから私は下に視線を向けた。

ざらっとした感覚が、体の外側に触れている。それは私が意志で動かしたものについている。腕と指というらしい。そしてこの手に触れたざらっとしたものが——

「砂……」

断片的に、個や物事を識別するための名というものが浮かんでくる。

意識は砂だけでなく、周りの存在へ。周りをぐるっと見渡す。

あれは……建物。これは……箱だろうか。中には色々と詰まっている。空を飛ぶもの、あれは鳥。空に浮かぶ白いもの、あれは雲。

そして光を放つもの——太陽。あれが眩しいもの。

視線を上げると、建物と建物の間に布が渡されている。

白い布、茶色い布。風に揺られて、ゆらゆらと揺れている。

服を飾っているのだろうか。なんのために。

知っていることと、知らないことが溢れている。

キラキラと輝くこの世界に私は——。

この気持ちが何なのか、この体は知っている。嬉しいのだと。

見るって、知るって楽しい。

これは石。あれは——?

キョロキョロと視線を巡らせていると、私は気づいた。

体がズキズキと痛みというものを発している。

痛い。

それは自分の意思で動かせる体が、外的要因によって怪我をすることで生まれるもの。

初めての体験。だが、先ほどと比べて気持ちの良いものではなかった。

よく体を見てみると、所々が青くなっていたり、赤い液体が出ていたりする。

嬉しくない。

何、これ。

体から、腕から、何かが出ている。赤い液体が、じわじわと腕を伝っている。

気づくと——手が動いていた。

傷口に、手を当てている。

なぜ?

分からない。

でも——

手が、傷口を押さえている。

ぐっと。

痛い。

でも——赤い液体が、少し止まった気がする。じわじわと、滲んでいる。でも、さっきより遅い。

これで、いいのか。手で、赤い液体が漏れているところを押さえる。

そうすれば、この不安な気分は少しは霞む。

「……」

周りの風景は、変わらない。

淡々と、そこにある。

私は、ただ座り込んでいる。

何もせずに。

なぜ?

分からない。

でも——

先ほどまではなかった違和感が、また私を襲う。

寒い。

何だろう、この感覚。

さっきまで、なかった。

でも、今——

寒い。

体が、震える。

止まらない。

「さむ……い」

声が、震える。

なぜ?

なぜ、寒いんだろう。

太陽が、照っている。

光が、降り注いでいる。

光の暖かさは、感じる。

なのに——

寒い。

内から冷えていく。

「……っ」

体が、勝手に震えている。

止められない。

力も——

入らない。

手が、震える。

傷口を押さえているのに、力が入らない。

よく見れば、赤い液体はまだ流れ続けていた。

手に触れる液体は、暖かい。

でも、体の内は——

寒い。

視界が、ぼやける。

何?

さっきまで、はっきり見えていたのに。

今は——

ぼんやりとしている。

建物が、揺れている。

空が、揺れている。

「……」

何かが、薄れている。

世界が。

感覚が。

「……」

暗く、なる。

さっきまで、眩しかった。

キラキラしていた世界が。

でも、今——

暗い。

光が、遠のいていく。

「……いや」

この感覚。

知っている。

いつか、感じた。

いや——

もっと前。

ずっと前。

「……」

何も、ない。

何も、見えない。

何も、感じない。

そんな——

世界。

あの、世界。

「……いや」

戻りたく、ない。

あそこには、戻りたくない。

何もない。

何もない。

ただ、ない。

「……っ」

怖い。

怖い。

戻りたくない。

せっかく——

せっかく、見えた。

世界が。

光が。

キラキラした、世界が。

「……いや」

消えたく、ない。

消えたく、ない。

意識が、遠のく。

感覚が、薄れる。

視界が、にじむ。

世界が、ぼやけていく。

建物の、輪郭が。

空の、色が。

全部、溶けて——

「……」

——その時。

「ミモリア様!?」

声が、した。

遠くから。

足音。

近づいてくる。

誰かの、影。

大きな、人の形。

でも——

輪郭が、はっきりしない。

その人が——

何かを。

腰の、あたり。

袋から、何かを。

小さな、瓶。

かすかに、光っている。

それだけが——

ぼんやりと、見えた。

暗く——

暗く——

世界が、消えていく。

「……」

見えない。

もう、何も。

音が、遠く。

世界が、遠く。

「……」

消える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ