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回想:静寂の学舎



前線から離れた山間部――

霧の深い朝、アドリアンを乗せた軍用車両が、森の奥深くにある旧全寮制学校の敷地へと入っていった。


建物は、廃校になった寄宿制の学校だった。そこは今は帝国軍の秘密部隊、**特別戦闘兵育成部隊(通称:第54SS部隊)**の教育・訓練施設および宿舎だった。


「ここか?……」


アドリアンは無意識に眉をしかめた。

一見すればただの古びた寄宿学校。だが、その空気はあまりに静かで、あまりに冷たい。

アドリアンには転属先は突撃攻撃軍としか知らされていなかった。

ほんとうにここがそうなのかと思った。人気もあまりない…

軍の部隊がいればそこそこ騒がしいのがお決まりだからだ。

遠くから微かに聞こえるのは訓練用の笛の音と教官らしい言葉使いの声だけ。


木々に囲まれた中庭を歩くと、廊下の奥から足音が聞こえてきた。

小柄な、軍服姿の少女が一人、廊下を横切った。

その少女は長い髪を後ろに束ねていた。

アドリアンと偶然目があった。

その目には、年齢に見合わぬ沈黙と緊張が張りついていた。


「……子ども?軍人?」


アドリアンが呟いたとき、後ろから声がかかる。


「“子ども”ではない。“兵士”だ…」


振り返ると、そこには彼の転属先の指揮官――部隊長、マティアス・ヴァイスナー中尉が立っていた。


背筋を伸ばし、眼鏡の奥で鋭い眼差しを向けながらも、どこか穏やかで理知的な空気をまとった男だった。


「君はファン・デ・レーフェン軍曹だな。ここでの任務は、“あの兵士たち”の護衛と後方支援だ」


「……本当に、あれが?兵士?」


そういえば聞いたことがあった…

子供の部隊を…

共和国軍の殺人機械…

そういわれる兵士は元々帝国軍の実験部隊にいたこと…

その実験部隊が実戦投入されていること…


ヴァイスナー中尉はじろりとアドリアンの方を見ていた。


「ええ。かれらは選ばれ、訓練され、戦果を挙げてきた。……君のような“自暴自棄な兵”よりも、よほど冷静に戦場を見ている」


言葉に棘があったが、それは苛立ちではなく、忠告だった。



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