掃除当番ペア
噂の翌週。
俺は黒板に貼り出された新しい掃除当番の表を見て、思わず固まった。
「……嘘だろ」
俺の名前の横には、しっかりと「桜井彩花」の文字。
よりによって、噂になっている本人と同じペアだなんて。
「わぁ、悠人と一緒だ」
彩花は全然気にした様子もなく笑っている。
「……いや、これ絶対またからかわれるだろ」
「いいじゃん、気にしすぎ」
その日の放課後。
誰もいなくなった教室で、二人きりの掃除が始まった。
ほうきを持つ手が妙にぎこちない。
「悠人、そっちの窓お願い」
「お、おう」
窓を拭きながらも、背後から聞こえる彩花の鼻歌が気になって仕方がない。
いつも明るい声が、静かな教室に響くと……不思議と心地よく感じた。
「ふぅ……終わった!」
彩花が手を腰に当てて笑う。髪が少し乱れていて、汗が光っていた。
俺はその横顔を見て、思わずドキッとする。
——やばい。
「悠人?」
「っ、な、なんでもない」
慌てて視線をそらした瞬間、教室のドアが開いた。
同じクラスの男子が顔を出す。
「おー、やっぱ二人で仲良く掃除してるじゃん」
「お似合いお似合い〜」
俺は耳まで真っ赤になった。
彩花は「ちょっとやめてよ!」と抗議しながらも、どこか楽しそうに笑っていた。
——そして俺は気づく。
からかわれている状況なのに、なぜか嫌じゃない。
むしろ……少し、胸が温かい。
掃除を終えて帰り際、彩花がぽつりと言った。
「私ね、噂とか全然気にしてないよ。だって悠人と一緒にいるの、普通に楽しいもん」
その笑顔に、また心臓が大きく跳ねた。
俺は返事を飲み込んで、ただ「そうか」と呟いた。




