勉強会の誘い
小テストの結果が返ってきた日の昼休み。
クラスのあちこちで点数を見せ合ったり、落ち込んだりする声が飛び交っていた。
俺は自分の答案を見て、静かに机にしまった。
赤点ギリギリ。まあ、予想通りだ。
「悠人、どうだった?」
突然、隣の席から彩花の声。俺は曖昧に答える。
「……まあ、普通」
「ほんと? 見せて」
「いや、別に」
軽くかわそうとしたが、彩花はひょいっと俺の答案を覗き込んだ。
「えっ……ギリギリじゃん!」
「……放っとけ」
顔が少し熱くなる。クラスの誰にも見せたくなかったのに。
けれど彩花は深刻そうに眉を寄せると、すぐに笑顔を見せた。
「じゃあ、私が教えてあげよっか?」
「は?」
「どうせ次のテストでまた危ないでしょ? 勉強会しようよ。放課後とか図書室で」
予想外の提案に固まる。
誰かと一緒に勉強なんて、想像もしていなかった。
「……別にいいだろ。俺一人でやるから」
「悠人って、そう言うと思った!」
「……?」
「でもさ、このままじゃ赤点取ったら補習で夏休み潰れるんだよ? それはイヤでしょ」
真正面から言われ、言葉に詰まった。
確かにそれは避けたい。
「……わかったよ」
「やった! じゃあ決まりね」
嬉しそうに笑う彩花を見て、胸が小さくざわついた。
俺のためにこんなに真剣になってくれるなんて、彩花くらいだ。
その日の放課後。
図書室の隅で、二人並んで問題集を開く。
解けない箇所を教えてくれる彩花の声は、思った以上にやさしくてわかりやすかった。
「ね、やればできるじゃん!」
褒められて、心臓が不意に跳ねる。
(……なんなんだよ、この感じ)
嫌じゃない。むしろ、妙に心地いい。
そんな自分に気づき、俺はまた小さくため息をついた。




