図書室の隣り合わせ
放課後。
人の少ない図書室の片隅で、俺はいつものように静かにページをめくっていた。
クラスでも家でも、ここなら余計な会話をせずに済む。俺にとって唯一落ち着ける場所だ。
――はずだった。
「……あれ? 悠人?」
顔を上げると、入口に彩花が立っていた。
思わず本を閉じそうになったが、彼女は気づかずにこちらへ歩いてきた。
「悠人、ここで本読むんだね。なんか意外」
「……別に、普通だろ」
「ふふっ。そうかな。私もたまに来るんだよ。宿題で調べ物とか、あと静かだから」
そう言って、俺のすぐ隣に腰を下ろした。
図書室なんて、席は他にも空いてるのに。
「……なんでここ?」
「え? だって悠人の隣が落ち着くから」
軽い調子で答える彩花に、言葉を失った。
彩花は本棚から持ってきた小説を開き、俺の隣で静かに読み始める。
その横顔がやけに近くて、ページをめくる指先や、時々髪が揺れる仕草が目に入ってしまう。
(なんで、こんなに気になるんだ……)
しばらく無言の時間が流れた。
でも、さっきまでの静寂とは違う。隣に彩花がいるだけで、空気がやわらかく感じる。
やがて閉館のチャイムが鳴ると、彩花が小声でつぶやいた。
「ねえ、また一緒に来てもいい?」
俺は一瞬言葉に詰まった。けれど、不思議と拒む気持ちは湧かなかった。
「……好きにすれば」
「うん、じゃあ決まり!」
嬉しそうに笑う彩花を横目に、胸の奥がまた小さく跳ねる。
(俺……彩花といる時間、嫌じゃないのかもしれない)




