掃除当番の二人
「……マジか」
教室の掃除当番表を見た俺は、小さくつぶやいた。
今日のペアは――彩花だった。
「悠人、一緒だね」
当たり前のように笑顔で声をかけてくる彩花。俺は視線を逸らしながら、ほうきを手に取った。
(よりによって、なんで俺と……)
放課後の教室。ふたりきりで掃除を始める。
床を掃く俺と、黒板を消す彩花。
ただそれだけのはずなのに、変に意識してしまって心臓が落ち着かない。
「ねえ悠人、意外と掃除うまいんだね」
「……普通だろ」
「そう? ほら、隅っことかすごく丁寧」
褒められても、どう返せばいいかわからない。
俺は黙って作業を続けた。けれど、彩花は楽しそうに口を開く。
「悠人ってさ、もっと喋ればいいのに」
「別に、話すことなんかないし」
「ふーん。じゃあ、私が勝手に話していい?」
「……好きにしろ」
そう言うと、彩花は子どものように笑って、休み時間の出来事や友達との話を次々と語り出した。
俺は相槌を打つだけだったが、不思議と嫌じゃなかった。
むしろ――教室に響く彼女の声が、心地よく感じる。
掃除を終えて教室を出るとき、彩花がふと立ち止まった。
「ねえ、悠人」
「……何だよ」
「今日、一緒で楽しかった。また同じ当番だといいな」
そう言って笑う彩花の横顔が、夕暮れの光に照らされる。
その瞬間、胸が小さく跳ねた。
(……俺、なんでこんなにドキドキしてんだ)




