少しだけ距離が近づく
放課後の教室。
彩花は友達と話しながらも、ちらちらと俺を見ている。
文化祭後の余韻が残る中、俺は資料整理をしている琴音の横に座った。
「悠人くん、これ、こう並べたほうがわかりやすいと思う」
琴音は静かに指示を出しながら、手元の資料を整理していく。
「……なるほど」
「ふふ、私、こういう整理好きなんです」
彩花とは違い、穏やかで落ち着いた空気。
その分、近くにいると不思議な安心感がある。
——けれど、心臓の奥のざわつきは、彩花といるときのそれとは違う。
そのとき、彩花が近づいてきた。
「悠人、もう帰るの?」
「いや、まだ片付けが……」
「ふーん、じゃあ私も手伝おうかな」
彩花はにこっと笑い、俺の隣に来た。
琴音は少し視線を逸らして、「じゃあ私はここで整理を……」と一歩下がる。
二人の間に微妙な距離感が生まれた。
——彩花は元気で積極的、琴音は落ち着いて穏やか。
どちらも、俺の心をじわじわ揺らす存在だった。
片付けを終える頃には、三人で少し雑談する時間もできた。
「悠人って、意外と本も得意なんだね」
「まあ、趣味じゃなくて必要だから読むだけ」
「ふふ、謙遜してるんだ」
彩花はちらっと俺の顔を見て、わずかに頬を赤くして笑った。
琴音は静かに笑うだけだが、その瞳には優しい光が宿っている。
——この二人の間で、自分の気持ちが少しずつ揺れ動いているのを、俺は自覚していた。




