もう一人のクラスメイト
文化祭が終わって数日。
教室の空気もようやく落ち着き、いつもの日常が戻りつつあった。
放課後、俺は図書室でレポートの資料を探していた。
人も少なく、静かな空間。こういう場所のほうが落ち着く。
本棚の影で資料を漁っていると、不意に声をかけられた。
「ねぇ、それ……社会科のレポート用?」
振り返ると、長い黒髪を後ろでまとめた女子が立っていた。
落ち着いた雰囲気で、知的な眼差しが印象的だ。
「……ああ」
「よかった。私も探してたんだ」
彼女は俺の隣にしゃがみこみ、一緒に本を探し始めた。
名前は 水瀬琴音。同じクラスだけど、あまり話したことはない。
物静かで、成績優秀。目立つタイプじゃないが、一部からは密かに人気がある。
「……悠人くんって、意外と本好きなんだね」
「別に。必要だから読んでるだけだ」
「ふふ。そういうところ、ちょっと面白いかも」
軽く笑う琴音に、少しだけ調子を崩される。
彩花の明るさとは違う、静かで落ち着いた雰囲気。
なのに、どこか目が離せなかった。
そのとき、図書室の入口から彩花の声が聞こえた。
「悠人、ここにいたんだ!」
手を振って駆け寄ってくる彩花。
俺と琴音を交互に見て、きょとんとした顔をした。
「……二人で何してたの?」
「レポートの資料を探してただけ」
「そうなんだ……」
ほんの一瞬だけ、彩花の表情が揺れた。
俺はその意味を深く考えないように、本を手に取った。
——こうして俺の周りに、新しい気配が加わっていった。




