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祭りのあと
賑やかだった文化祭も終わり、教室には片付けの音だけが響いていた。
机を元に戻したり、飾りを外したり。昼間の喧騒が嘘みたいに静かだ。
「ふぅ……やっと終わったね」
肩で息をつく彩花が隣に腰を下ろす。窓の外はすでに夕暮れで、赤い光が教室を染めていた。
「……結構大変だったな」
「でも、楽しかったよね」
彩花はそう言って笑った。その笑顔には、疲れよりも満足感がにじんでいる。
俺は窓の外を見ながら、心の奥で思う。
——確かに、悪くなかった。
むしろ、こんなに心が動いたのは初めてかもしれない。
しばしの沈黙。彩花が小さな声で口を開いた。
「ねぇ悠人……一緒にいてくれて、ありがと」
「ん?」
「買い出しとか、ステージとか……全部。悠人がいたから、私すごく楽しかった」
言葉が、まっすぐに胸に届く。
どう返せばいいのかわからず、俺は曖昧に「そうか」と答えた。
彩花は少しだけ頬を赤くして、机に肘をついたまま視線を落とす。
「……これからも、そうだったらいいな」
「え?」
「いや、その……一緒に、ってこと」
顔を隠すように笑う彩花。
俺は言葉に詰まりながらも、心臓がやけに速く打っているのを感じた。
廊下から「片付け終わったぞー!」という声が響き、俺たちは立ち上がる。
祭りのあと。
けれど胸の中では、まだ熱が冷める気配はなかった。




