文化祭、開幕
文化祭当日。
校舎全体が色とりどりの飾りで埋め尽くされ、廊下を歩くだけで非日常の空気を感じる。
「いらっしゃいませー!」
クラスメイトたちの元気な声が響く中、俺は装飾班として壁の飾りを直したり、看板を整えたりしていた。
人混みと騒がしい空気に少し圧倒されながらも、なんとか作業をこなしていく。
「悠人、お疲れさま」
振り返ると、彩花がトレーを持って立っていた。
「接客の合間に差し入れ。はい、ジュース」
「……ああ、ありがとう」
受け取ると、周りのクラスメイトがにやにやしながらこちらを見ていた。
「おーい、差し入れは悠人だけ特別か〜?」
「やっぱり仲いいな〜」
「ち、違うってば!」
彩花は慌てて否定したが、顔はほんのり赤い。
俺は「からかわれるのは慣れた」と自分に言い聞かせつつ、心臓の高鳴りをごまかした。
休憩のとき、二人で廊下の窓際に座る。
外では他のクラスの出し物やステージイベントで盛り上がっていた。
「ね、悠人」
「ん?」
「……こうやって一緒に文化祭過ごせるの、なんか嬉しいな」
彩花は窓の外を見ながら、ぽつりと言う。
俺は少し迷ってから答えた。
「……別に、悪くない」
彩花はふっと笑った。
それだけで胸が熱くなって、視線を逸らさざるを得なかった。
やがて午後。教室はさらに盛況になり、接客に回った彩花がエプロン姿で笑顔を振りまいていた。
その姿を遠くから見ているだけで、胸の奥がざわつく。
(……なんで、こんなに気になるんだろう)
文化祭のざわめきの中で、俺は自分の心が少しずつ変わっていくのを、確かに感じていた。




