放課後の準備室
文化祭前日。
学校全体が慌ただしい空気に包まれていた。
俺のクラスは喫茶店をやることになっていて、彩花と俺は装飾班。
放課後、飾りつけのチェックをするために二人で準備室に残った。
「ねぇ悠人、こっち持ってくれる?」
彩花が机の上に置いたポスターを広げる。
色鮮やかな花やリボンが描かれていて、思わず感心した。
「……すごいな」
「え?」
「上手い。絵とか得意だったのか」
「ふふ、ありがと。小さい頃から落書きばっかしてたからね」
照れくさそうに笑う彩花を見て、胸の奥が少し熱くなる。
作業を続けていると、突然蛍光灯がちらつき、やがて消えてしまった。
「わっ、停電?」
窓から差し込む夕暮れの光だけが頼りで、準備室は薄暗くなる。
「大丈夫か?」
「う、うん……でもちょっと怖いかも」
彩花の声が少し震えていた。
俺は咄嗟にスマホのライトをつけ、彼女の手元を照らす。
「ほら、これで平気だ」
「……ありがと」
小さく微笑む彩花の顔がライトに照らされ、やけに近く感じる。
その距離に思わず息を呑んだ。
しばらくして電気は復旧したが、妙な沈黙が続いた。
作業を再開しようとするけど、心臓の鼓動が落ち着かない。
「悠人」
「ん?」
「……一緒にいてくれると安心する」
そう言った彩花の頬は、ほんのり赤くなっていた。
俺は言葉を返せなかった。
でもその一言が、不思議と胸に深く残った。
——文化祭は明日。
準備室で過ごしたこの時間が、俺たちの距離をまた少し近づけた気がする。




